浅利慶太事務所の2作目です!
はじめに
実は私の卒論のテーマに『ミュージカル李香蘭』が大きく関わってくるんです。
で、アルプも1990年のものから集めて李香蘭の記事を抜粋してほとんど目を通しまして。
そしてもちろん山口淑子さんと藤原作弥さんの原作本も読んで。
DVDやもっと前の映像なども色々見たりとこの作品に関しては結構知識だけはあるんです。
だからこのタイミングでの上演決定は凄く私的にも嬉しかったことですし。
それに去年の9月7日には山口淑子さんが亡くなられ、あと数日で1周忌。
今年は戦後70年…ということで、よりこのタイミングでの上演には意味があると思います。
個人的に濱田さんが演じられていたのもあって、川島芳子が好きだったんですね。
でも原作を読んでみたら持っていた印象とかなり違っていて。
舞台だと狂言回しですからあくまで物語を俯瞰的に見て、ひたすらかっこいいだけじゃないですか。
実際の川島芳子は結構嫉妬深いところもあったりして、恋愛沙汰に関しても色々と怖い噂があったようです。
史実でも李香蘭と川島芳子には接点があって、芳子は香蘭のことを「ヨコちゃん」と親しく呼んでいたそうです。
まぁ…そんなわけで、個人的な川島芳子堪能席だろうなーって思っていた上手寄りを取ってみました。
そしたら実際、結構な割合で上手来るし幸せでしたヾ(*´∀`*)ノ
劇場にはたくさんのお花が。
浅利さんの人脈の広さが伺えますね。
松岡修造さんからも来ていました。
この前、番組で浅利さんと対談したからかな?
ということで、色々と書くと長くなるのでキャストの感想を。
キャストの感想
気になったキャストの感想を書いています。
李香蘭:野村玲子
李香蘭といえば野村さん!
まさか野村さんの香蘭を観ることが出来ると思わなかったから嬉しかったです。
作中の香蘭は7歳~26歳までが描かれているので、まぁ…ね。
冒頭の裁判のシーンで「現在26歳で」って言うのは無理あるやろぉ、と思いますよそりゃ。
でもむしろそれから13歳、そして7歳へと遡っていくシーンでは不思議と若く見えるんですよ。
動きが少女らしさあってとても素敵でした。
ただ、歌がどうしてもキツイですね…声が全然出なくて。
所々不自然に音量が上がったりもして、もしや…とは思ったけども。
だけどこの役って野村さんにしか出せない味というか雰囲気ってあるじゃないですか。
野村さんが李香蘭を800回以上演じていらっしゃるのもあるし、そのまま憑依しているというか。
特に「何日君再来」からの「夜来香」の野村さんは本当に美しいです。
あの赤い衣装を纏い、扇子を仕舞った時に照明に照らされた時のあの美しさ。
山口淑子さんは亡くなられたけど、この舞台では今でも李香蘭は健在なんだと思わされました。
それから歌い始めてちょっとガクッとなった部分もあるけどね(小声)。
でも本当に野村さんはお芝居がとても上手で凄く魅力的ですね。
目をギュッと閉じる表情だったり、どれを取っても香蘭の心情が丁寧に伝わってくる。
山口淑子さん本人も「玲子ちゃんのが私より長く李香蘭になっているから、むしろ玲子ちゃんのが本物みたい」と言っていて。
ご本人も認めるくらい、本当に香蘭な野村さん…。
あと10歳若ければもっと良かったであろう…でも本当に素敵でした。
川島芳子:雅原慶
今回は川島芳子誰がやるんだろう…って私の中で話題になっていたんですけど。
まさかの雅原さんでびっくりしちゃいました。
そして、Wキャストでなんと坂本里咲さんもキャスティングされていてめちゃくちゃ気になる。
川島芳子役ということで髪をばっさり切った雅原さん。
はるちゃんのTwitterにもふたり仲良く登場していました。
共演する雅原慶ちゃんと移動中!
在団中は一度も共演したことは無いけど、なぜか昔から仲良しという不思議な関係。なんか服も似てる?笑初共演嬉しいな♡ pic.twitter.com/KENccPvXyr
— 笠松はる (@harukasamatsu) July 27, 2015
割と目が細くてキリッとされた顔立ちなのもあるし、きっと似合うだろうなぁって思っていました。
初日に出ると思いきや出なかったので、本日がデビュー日です。
(そうだよねぇ…初日は里咲さんだよねぇ、浅利さんだと)
まず歌に関しては申し分ないというか、久しぶりに雅原さん観たけど声量あるしブレないし素敵。
前々から思っていたけどやっぱり所々歌声が濱田めぐみさんそっくり。
歌聴いてても、多分目閉じていれば濱田さんが歌っているんじゃないかって思っちゃうくらい。
そしてずっしりとした印象がありますが、まぁ…でもその風格も男装しているとかっこいい部分もありますね。
スラーッとしてはいないけどこういう男装もありだと思います。
所作は所々女性らしさが出るけど、男装ということを考えるとそういうところも凛としたかっこよさと美しさがあります。
あと横顔がとても凛としてかっこよく美しかった。
この役って狂言回しだけど実在した人物だし何より昭和のモンタージュを語るという部分でかなり大変だと思うんです。
もちろん川島芳子のことも史実のこともしっかりと勉強しなくちゃいけないだろうし。
そういう部分で、なんだかどこかよそよそしさというか…少し軽さを感じてしまったのは否めないかな。
銃殺された時に倒れるのはバタッて感じではなく静かに崩れていったのが、なんか美しかったなぁ。
でもこの役を演じるにあたって、雅原さんという立場だとなんか特別な意味があるなぁと私は感じていて。
川島芳子って本当は中国人で、日本名を名乗って日本人として生きてきた人物。
雅原さんも生まれは日本ですけど在日韓国人で本名はパクキョンミさん、そして現在雅原慶という芸名で日本で活躍。
なんか…芳子と似てるっていうと失礼だし全然違うんだけど、2つの国籍を持っている…というか。
雅原さんにとっても日本と韓国という2つの祖国が存在するわけだと思うんですね。
そんな彼女が川島芳子を演じられたということに、私は勝手に特別な意味を感じました。
でも本当にかっこよくてキリッとされていて、私はとても好きでした、雅原さん。
愛蓮:秋夢乃
秋さん観るのかなーり久しぶりだわ(笑)
そっかぁ、もう夢子じゃなくて夢乃さんなんだね。
なんか秋さんって苦手だったんだけど、今回観てとても良かったなと思いました。
そして秋さんも中国人でいらっしゃるため、愛蓮という役を演じられたことがまた感慨深いなぁと。
歌声も綺麗だし本当に何一つ違和感がない。
今回観ていて思ったのは、表情が凄く素敵だなぁ…と。
内容が内容だから暗いし怖いし…っていう部分もあるんだけど、割と涙を浮かべていらっしゃる姿が印象的で。
香蘭に別れを告げるシーンなんかでも今にも泣きそうな悲痛な表情で香蘭を見つめていて。
最後の裁判のシーンでも涙を実際に流していらっしゃって。
そのまま愛蓮が憑依していたんじゃないか…と思ってしまうくらい、素敵でした。
カテコの時に両手を胸の前で小さく振っていたその姿がとても可愛くてキュンとなってしまったのは秘密です☆彡
杉本:上野聖太
この方ご存知なかったんだけど…とてもいい俳優さんだなぁと思いました。
かっこよかったです。
杉本っていったらもう芝さんのイメージしかないわけだけど、いい意味でそのイメージを払拭しました。
とにかく爽やかで好青年なお兄さんって感じが出ていました。
野村さんとの見た目の年齢差がちょっと違和感ありありですけど、とても良かった。
歌も上手ですし台詞も聞き取りやすいし長台詞も飽きさせずに最後までしっかり聞かせてくれる。
香蘭を見守る優しい眼差しとか雰囲気とかも漂っていて、本当に素敵でした。
王玉林:村田慶介
この方もご存知なかったけど…でも良かった。
かっこよかったです。
歌も上手でしたし、何より秋さんとの距離感がとても素敵だった。
カテコで秋さんとくっついて歩くところとか、なんだか可愛くてキュンとしちゃいました。
東宝芸能の方なんですってね、すごいなぁ、色んなところから。
という感じでサンボさんは省略します。
けど、でもサンボさんも本当に凄いんですよ…。
人数多いっちゃ多いけど、でも何役もこなしていて。
それぞれが味あって、なんか本当に表情とかお芝居とか凄く感動します。
やっぱり田代隆秀さんは台詞が聞き取りやすくて耳に入ってきやすいし。
女性だと勝又彩子さんが本当に素晴らしい表情をしていたんです。
彼女の泣きそうな表情とか、もう…目の前で観ていましたけど恐ろしく涙を誘います。
プリンシパルだけでなくこの作品はサンボにも注目してみてください。
本当にそれぞれが凄く細かい表情とかしているので、よりドラマが深まっています。
まとめ
今回は劇団四季があくまで協力という形での上演。
ということで四季版とは違って色々と演出に制限もあったみたいですね。
平梁山のゲリラのシーンでは車が登場しないですし。
「今のアイドル目じゃない~」って現代のアイドルの名前を羅列する歌詞がカットされていましたし。
月月火水木金金もセットがない状態でしたし。
ここでは女性も一緒になって踊っていたんですけど、今回は男性のみでした。
多分他にも色々あったと思う。
でも特に違和感も抱かず、とにかく歴史の真実をしっかりと描いている点での恐ろしさは満点。
冒頭で暗闇に日の丸が浮かぶシーンからすでに鳥肌がとまらず、泣きそうになりました。
やっぱり戦争がメインだから怖いんですよ…観ていて。
とにかく人が殺されるし人と人が憎しみあっている姿が描かれているし。
フィクションでありながらもノンフィクションに描いてきて、そして2幕最後の方での映像の使用。
実際の戦争の映像が映し出されて、「海ゆかば」と共に爆弾や死体の映像が次々と。
怖いのに、なんだか涙が出たんです…。
もう、「わだつみ」のところからすでにやばかったんだけどね。
召集令状が来て、行きたくもないに戦争に行き、死にたくないのに祖国のために死に行こうと笑う。
そんな若者たちの本音だけど本音じゃない語りをたくさん聞いて。
戦場で散っていく彼らの末路を思いながら、映像へと切り替わっていくあの演出はずるいです…。
でもこれがフィクションではなく、70年前の本当の出来事なんだって考えたら恐ろしくなっちゃって。
あぁ…日本って昔はこんなことしてたんだって思っちゃいました。
このことを私たちは日本人である以上、知っておくべきだし語り継いでいくべき。
確かに戦争の話ってだけで敬遠しがちだし、観たくないって思うかもしれないけどこれは観るべきです。
この作品が訴えているのは、「戦争は良くないことだ」ではないんです。
「昭和という歴史の中で、李香蘭という人物を通して一体どんなことが起きていたか」を描いているだけなんです。
浅利さんも政治的イデオロギーは捨てて、ただ真実だけを書きたかったと言っています。
本当にその通りだと思います。
この作品の意味は、そういうところにあると思います。
舞台で観るのは初めてでしたが本当に感動しました。
きっと数年前に観ていても絶対に理解出来なかったことたくさんあると思う。
だから、このタイミングで観れたことが凄く嬉しかったです。
次ははるちゃんと里咲さんで観れたらいいなぁ。
でも、野村さん×里咲さん、はるちゃん×雅原さんでも観てみたい。
色んなペアで観てみたいです!
そういえば今日、岡幸二郎さんみたいな人見かけたけど…。
さすが、浅利さん…。
香蘭の歌う歌詞の中に、「教えて、心にも国境があるのですか?」というフレーズがあります。
この言葉、とても深いと思います。
この作品のテーマの1つでもあるだろうし、今の日本にも必要な言葉なんじゃないかな?
コメント