2015年9月10日ソワレ 『ミュージカル李香蘭』




浅利慶太プロデュース
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ゆうき
ゆうき

はるちゃん香蘭!

日時:2015年9月10日ソワレ公演
場所:自由劇場
座席:1階S席1列15番




はじめに

全11公演中はるちゃんが出演したのがわずか2回。
そんな中、本日の公演ははるちゃんが香蘭で嬉しかったです。
劇場にも関係者がたくさんいました…。
俳優さんだらけで、なんかもう異様な雰囲気だった。

ということで、今回は念願のはるちゃん×キョンちゃんペア!
仲が良い2人なのできっとお芝居にもその関係性が活かされるだろうなぁって思っていたら見事に。
秋さんも仲が良く、仲良し3人組の公演はまた凄く絶妙な雰囲気を醸し出していました。


これははるちゃん初日の時のですが。
本当に素晴らしい公演でもあり、私にとっても色々と感慨深い公演となりました。

ちょうどこの日、つい先日豪雨に見舞われました。
私の故郷でもある栃木が甚大な被害を受けて。
その様子をテレビで見ていて、とても胸が痛みました。
幸い私の実家や親戚の家は無事だったのですが、友達の家が大きな被害を受けていたりもして。
他人事じゃない…と痛感してしまいました。
いつ何が起こるか分からない、明日が平和に訪れる保証はない。
そのことを実感した日でもあったため、この李香蘭という作品は余計に心に響いて。
2幕後半、ありえないくらい泣いてしまって涙をとめることが出来ませんでした。

キャストの感想

気になったキャストの感想を書いています。

李香蘭:笠松はる

はるちゃんにとっての千秋楽ということもあって、この公演には力を入れていたでしょうね。
凄く気合いが入っているのが随所で感じられて感動しました。
こんな素敵な香蘭だったのに、たった2回しか出演しないなんて…もったいない!
まぁ…李香蘭といえば野村さんのイメージもあるし、夫人ですからね。
でもそれだけ、野村香蘭のイメージを大きく払拭する新しい香蘭だったなという印象でした。
まずは若いから…「現在26歳で」の台詞も一切違和感がない。
歌声も綺麗だし声量もあるから、そういう面でも安心して観て聴いていられる。
裁判官が「その甘い顔と歌声で…」って責める台詞がありますが、それも凄く納得する。
あぁ、この人がこの甘い歌声で多くの人を魅了したんだなっていうのがしっかりと伝わってくるくらい素敵な歌声。
とにかく可愛くて、その美貌と美声に誰もが夢中になったんだっていうのがちゃんと理解出来ました。
7歳に若返る時も、全然可愛いし素敵です。
ただ、やはり李香蘭という人物そのものの雰囲気というか色気というか…そこはまだだ出ていないかな。
「夜来香」で扇子から顔を覗かせる時の表情というか雰囲気が、少し香蘭とは別人な感じがしました。
実際の本人をよく知っているわけではないから偉いことは言えないけど、ここはやっぱり野村さんが凄い。
今でこそ声は出ないけど、やっぱり野村さんの持つ独特の雰囲気は本人に認められるほど本人っぽいと再認識した。
もちろん回数の積み重ねとか本人から直接指導されたとか、そういう部分での差はありますが。
でもはるちゃんの香蘭は、とっても可愛らしいし素敵なんです。
最後の「以徳報怨」で頭を下げている時、ずっと鼻を啜っていたんですね、はるちゃん。
感極まっている姿とか、なんかそういう部分が本人そのものをしっかりと演じているというか。
しっかりと役と向かい合って、自分なりに咀嚼した香蘭を演じられていた。
その姿が本当に素晴らしかったです。
カテコで、スタオベ、そして鳴り止まない拍手に口元を震わせて泣きそうになっていたはるちゃん。
野村さんの香蘭とはまた違った魅力があって、とっても素敵でした。

川島芳子:雅原慶

2回とも雅原さん!
里咲さんの川島芳子も観たかったなぁ。
それはさておき、前回が雅原さんにとっての初日だったのもあって前回よりも随分と柔軟に演じられていました。
今回がはるちゃんだからっていうのもあるのかもしれないけど、よりオニイチャン感が出ていて良かったです。
歌も前回以上に安定していたし、伸び伸びとしていた印象がありました。
とにかくはるちゃん香蘭を見つめる時の表情っていうのが、凄く優しさに溢れていました。
実際、川島芳子が香蘭のことを可愛がって気にかけていたように、舞台上でもその関係性がしっかり表れていた。
狂言回しとして、物語を外から俯瞰しているだけでなく、ちゃんと物語に介入していました。
きっともっと公演期間も長くて回数も増えれば、もっと良くなっただろうに。
でも本当に今回の雅原さんは特に良かったと思います。
男装も凄く似合っていたし、キリッとされた目元とかが凄くかっこよく映っていました。


これ、雅原さんの書いた記事です。
この作品に取り組むにあたって、川島芳子を演じるにあたっての雅原さんの心構えがとっても素敵でした。
役を生きるという役者さんにとって、日々課題もあるだろうし大変なこともたくさんあるだろうと思います。
それでもしっかり役と向き合って演じられることの素晴らしさを、再認識させられました。

愛蓮:秋夢乃

秋さんも本当にこの役がぴったりでとても良かったです。
やっぱりはるちゃんとの普段の関係性がしっかりお芝居にも表れていて。
裁判のシーンで香蘭を見つめる時だったり、慈愛に満ちているというか…。
本当に妹のようにはるちゃん香蘭を見守っているかのようでした。
野村さんの時にやっていたのか忘れちゃったんだけど、裁判のシーンで見つめ合う時にアイコンタクトしていたり。
香蘭と愛蓮の絆の深さが随所で確認出来ました。
「さよなら香蘭」でも涙を流しながら歌っており、香蘭を突き放す時につらそうな表情をしたり。
秋さんの表情が本当に素敵だなぁと感じました。

杉本:上野聖太

今回は上野さんに泣かされたと言っても過言ではないです。
本当に素晴らしかったです、上野さん。
お芝居が上手いのもあるんですけど、どこか清々しいというか。
理想を抱いている純粋な青年っていう感じがしっかり表現出来ていて。
歌も上手なので、一切飽きさせない。
何より、戦争に対して理想を抱きつつも実際どうすることも出来ず。
運命に抗うことも出来ずに、ついに来た召集令状の件を香蘭に打ち明ける時の悔しそうな表情。
その表情を見た瞬間に、一気に私の涙腺が崩壊しました。
五族協和実現のために立ち向かっていた彼が、いざ戦場で散っていくとなった時。
強がって弱音も吐かず、ただ香蘭と今後会えなくなることだけを悔い寂しそうにする表情。
死ぬことへの恐怖と青臭い青年らしさがその瞬間に垣間見えました。
ここの表情が本当に上手だな…と思いました。
四季作品に上手く溶け込んでいるし、凄くいい味を出していると思いました。
素晴らしかったです。

王玉林:村田慶介

DVDの芹沢さんが大きいから余計にちっちゃく感じる村田さん。
凄く華奢な方なのかなぁという印象でした。
好青年で端正な顔立ちがまた美しく、中国の服装も似合っていました。
若いからどこかまだ未熟な部分があって、戦争には加担しているけど決して強くはない。
玉林も正義感が強くて、正当な意見をしっかりと持った若者なのである意味杉本とは似ている。
でもその正義感のベクトルがやや違う方向を向いている感じかな。
初々しさがあって、とっても良かったです。
やっぱり秋さんの愛蓮をエスコートする時のイケメンっぷりがちょっと反則です。

男性アンサンブル

数名だけ感想書いていこうかなー、と思います。
まず斎藤譲さん。
永井荷風とか憲兵とか斉藤隆夫とか、色んな役やってます。
前回観た時、斉藤隆夫のシーンでちょっと台詞が危うかったけど今回は完璧でした。
凄く特徴的な顔立ちをしているのでどこでも分かりやすい(笑)
畠山典之さん。
裁判のシーンでは日本の弁護側を務める軍人。
そこでの歌声がとっても綺麗で、凄く素敵だなぁと感じました。
山田大智さん。
裁判長や関東軍を演じていました。
とっても大きいガタイをされた方で、立つだけでも結構な迫力がありました(笑)
包み込むような歌声が特徴的でした。
刺々しくない、優しい感じ。
「以徳報怨」ではもっともっと香蘭を許そうという気持ちが表現出来ると良かったかな。
凄く歌が上手なんだけど、もっとその奥の許しという感情の部分が見えると良かったかなぁという印象でした。
吉武大地さん。
皇帝溥儀を演じられた方でしたが、まぁ…なんで溥儀を演じる方ってみんな雰囲気似てるんだろう(笑)
前回も思ったけど登場シーンで溥儀に雰囲気そっくりすぎてびっくりしました。
溥儀としては出番が少ないけどその分かなりインパクトがあるし、表情の細かさが素晴らしかったです。

女性アンサンブル

女性のサンボがあまり分からないのですが…。
やっぱり勝又彩子さんの表情が凄く素敵だなぁ…。
「以徳報怨」での泣きながら悔しそうに歌う姿が。
勝又さんが歌っているのを見て、驚いたような表情をする隣の女性のサンボの方はなんていう方だろう。
目が大きくてクリクリの可愛らしい方なんだけど。
その人もすっごく素敵な表情をされていて、ここのシーンのこの2人には泣かされます。
そういえば前回、「夜来香」で提灯を持っている女性たちがいるじゃないですか。
提灯を持って交互に左右に分かれていく際に、提灯が絡まっちゃったんですよね。
今回はそういうハプニングもなかったので一安心でした。
女性の皆さんも本当に素敵で、香蘭に負けず劣らずとっても綺麗でした。

まとめ

という感じでちょっと適当になってしまったのですが、とても素敵なカンパニーだったと思います。
扱っている作品が戦争ものなだけに、内容は重く悲しいですが。
その分、Twitterやブログの皆さんの楽しそうな写真を見るとほっこりしました。

そして今回私が思ったこと。
わだつみで若者たちが弱音を吐かず、戦争に向かい死んでいくことを誇りに思っているシーン。
きっと本当は杉本のように行きたくなくて死にたくないって思っている人がほとんどだと思う。
それでも、勇敢に戦って戦場で散っていこうとする彼等の遺言が凄く切なくて。
今の世の中、明日死に逝くなんて分かる人はほとんどいないわけじゃないですか。
今回の豪雨のように、突然家を失ってしまったり命の危険にさらされたり。
いつ死ぬのか分からない毎日の中、私たちは平和に生きているじゃないですか。
この時代はそうではなく、召集令状によって戦争への参加を義務付けられ。
祖国のために命を犠牲にしてでも戦おうとしていた。
国のために命を捨てることがかっこいいとされていた。
そのことにも一種の恐ろしさを抱きました。
そして、次の場面では実際の映像が流される。
ついさっきまで健気に語っていた彼等が、次の瞬間には散っていった。
命の儚さ、そして戦争の恐ろしさを痛感しました。
川島芳子がここで歌う曲の歌詞も、その恐ろしさを感じさせました。

ひとつの敗北が 次の敗北を呼んで
いつか日本は負け戦の渦に のみこまれる
たくさんの若者たちが 天国の門をくぐって行く
南の海で 青い空で 深い森の中で

1幕で散々傲慢な行動を起こしていた日本が、2幕では次々と敗北を重ねて行って。
そのことの恐ろしさも、日本が過去にしてきたことの卑劣さも、実感しました。

泥沼の戦争が終わり 最後を飾ったのは
深い傷あと残す花火 命うばう花火

やっぱり浅利さんって凄いなと改めて感じました。
この映像を用いることを、浅利さんはフィクションの中にリアルさを組み込むみたいに語っていました。
確かにこの舞台上では限られたことしか出来ないし、やっぱりどこかフィクション感がある。
でも、その次に実際の映像を用いることでこれまで舞台上で起きたことが本当だったんだ…と。
上手く言えないんだけど、何か気付かされるんです。
涙がとまらなくて、怖くて、恐ろしくて…でも目を背けちゃいけないくて。
本当に苦しかったです。
この作品を、これからも多くの若者たちが観るべきだと感じました。
これは日本人であるなら観て知っていかなければならない。
本当に、今の日本の平和がこうした過去の過ちの上に成り立っていることを知らなければならない。
そう実感させられました。

今日が早くも千秋楽。
もっと観たかったなぁ…。
また数年後、やってくれるといいな。

ということで、最後にカンパニーの素敵なお写真をいくつか紹介して締めたいと思います。


はるちゃんのブログ。


本日の大千秋楽が素敵な公演となりますように。
本当に素晴らしい公演をありがとうございました!

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