約5年ぶりの観劇です!
はじめに
『ライオンキング』を最後に観劇したのは2015年の夏でした。まだ春劇場で上演されていた頃だったので、かなり久しぶりの観劇となります。今回は家族4人での観劇。家族と『ライオンキング』を観劇するのはもう15年くらい前です。なんだか時が過ぎるのはあっという間ですし、コロナウイルスの影響で今各地で公演中止が発表されていることもあり、無事に観劇できたことが奇跡だなと感じました。
さて、夏劇場自体は『リトルマーメイド』が上演されていた頃に何度か行きましたが、『ライオンキング』になってからは来るのが初めてです。土曜日のマチネ公演ということもあってか、やはり家族連れがとても多い印象でした。
劇場周辺は『ライオンキング』仕様になっていて、ちょっとワクワクしました。
こういう遊び心がある仕掛けは子供たちも喜ぶでしょうね。ちなみにこの足跡は何種類かあって、劇場の中に答え合わせのボードがしっかり掲示されていましたよ。
そして劇場の中に入ると、まず目に入ってきたのが2020年9月10日開幕の『アナと雪の女王』の大きなパネル。つい先週ブロードウェイで『FROZEN』を観劇してきたばかりなので、なんだか日本語仕様のものがあることに違和感…というか不思議な感覚を覚えました。
ということで、まだまだ『FROZEN』の余韻が残ったままの観劇となりましたが、しっかりと楽しんできましたよ!
総評
『ライオンキング』に関してはこれまで毎回週間キャストを観て、興味を惹かれたら突発で観に行くというスタイルを取っていました。なので、5年前の前回は田中彰孝さんシンバと岡本瑞恵さんナラという貴重なペアで観劇していて、そう言えば観に行ったなーって記憶が少し蘇ってきました。
しかし今回は家族で観るということもあって元々チケットを押さえていたし、特にキャストに大きなこだわりがなかったのが正直なところ。先週まで青山弥生さんがラフィキを演じていたので久しぶりに観たかった気持ちはありましたけど、平田曜子さんも素晴らしかったです。個人的に一番のお目当てはシンバ役の山下啓太さん。他にも周りを固めるキャストの方々が実力ある方ばかりでしたし、キャスト全体の安定感は素晴らしかったです。ただ、若干全体的にテンポが悪いのかな。笑いを誘うシーンであまり笑いが起こらないといったことも多く、この辺はキャストの実力なのかそれとも観客の温度感の問題なのか…と疑問を抱く部分も少なからずありました。
そして座席は最前列センター。ドセンだと思っていたらやや下手寄り。ドセンは母が座っていました(笑)『ライオンキング』を最前列で観るのって多分初めてだと思うので、とても迫力があって楽しかったです。
公演全体の完成度は高いし、やはり劇団四季ってレベルが高いなと感じたのが今回の観劇のざっくりとした総評。ブロードウェイのように俳優主義だとどうしてもアンサンブルの実力にばらつきがあったりもしましたが、劇団四季は総合的にレベルが高いです、マジで。それをひしひしと感じました。しかし、私がBWで最後に観た公演があまりにも盛り上がりすぎて、日本の公演がとても大人しく感じたのも本音です。笑うべきシーンで笑いが起こらないというのも向こうじゃあり得ないだろうし、でもカーテンコールは長いし…っていうよく分からない文化だなと思いました。
ちょうど帰国直後の観劇だったのもあって色々と比較してしまった部分はありましたけど、観劇自体はとても楽しめました。『ライオンキング』って「生き方」を教えてくれる作品。改めて、作中に散りばめられている台詞が美しいと思いました。
キャストの感想
今回気になった俳優さんたちの感想を簡単に書いていきます。
ラフィキ:平田曜子
平田さんのラフィキを観るのは今回が初めてでした。平田曜子さんと言えば、『クレイジー・フォー・ユー』のボビーママが印象深くて、淡々としたお芝居が特徴的な女優さんだなと思っていたんです。だから、ラフィキをどう演じるのかなーっていうのがとても気になっていた点でした。
結論として、平田曜子さんのラフィキだなっていう印象。平田さんらしいやや落ち着いた佇まいが所々で感じられて、あの低めで厚みのある声を聞くたびに「あ、平田さんだな」ってなりました、当然ですけど。お芝居は全体的に落ち着いている部分もありましたし、一方で明るく取り繕う部分もありましたし、いい意味で予想通りのラフィキでした。青山弥生さんのラフィキはコミカルで可愛らしさ全開な印象を受けた気がしましたけど、平田さんは青山さんとは違うベクトルの演じ方をされていたように感じます。
しかし、個人的に平田曜子さんがここまで歌える方だっていうのにビックリしてしまったというか…。あまり歌っていらっしゃるところを観ていなかったので、「サークル・オブ・ライフ」とか歌えるのかなって正直不安もあったんです。でもその心配は不要で、あの低音ボイスからちゃんと力強い高音を伸び伸びと出し切っていて、衝撃を受けました。スコーンと突き抜けるような声質ではありませんが、とてもパワフルで歌声に関しては本当に素晴らしかったです。
ラフィキはシンバに生きる指針を与える、老婆ヒヒ。そういう部分での熟した感じというのは少し薄かったかもしれません。平田さんって凄く若々しさがある方だと思っていて、その点でまだ熟されていないなーという印象もありました。もっと貫禄がつくと説得力が増すのかな。そういう意味でも、今後も平田曜子さんのラフィキを楽しみにしていきたいと思いました。
スカー:髙橋基史
髙橋さんは『リトルマーメイド』のトリトン王、『エビータ』のマガルディなどで拝見してきた俳優さん。その美しくて色っぽい低音ボイスが大好きで、髙橋さん自体凄く大好きでした。それもあって、髙橋基史さんのスカーは楽しみでしかなかったですし、結論今回の観劇で髙橋さんのスカーを観れたことが一番の収穫となりました。
正直最初に髙橋さんスカーが登場したときは「あれ…ちょっとコレジャナイ感」があったんですよ。というのも、髙橋さんの低音ボイスが活かされないやや明るめの声色で若干陽気にスカーを演じられていたからでした。まあ確かにアニメ版は少し特徴的な声をしていますし、どちらかと言えばアニメ版に寄せている印象も強かったです。ただ低音ボイスを期待していた部分は否めなくてちょっと期待よりも右肩下がりかなと思ったのですが、スカーがどんどん邪悪な欲望を解放していくにつれて髙橋さんスカーの本領発揮。
「覚悟しろ」で髙橋さん特有の低音ボイスが響き、思わず身震いがするような迫力を感じました。地鳴りがしそうな邪悪な歌声の中に、どこかイキイキとした部分も垣間見えて、そのギャップにもやられそうになったのは言うまでもありません。とにかく悪役に徹してからの髙橋さんスカーは超絶かっこよくて、大人の色気もまとっていて、憎めないくらい素敵でした。
とにもかくにも髙橋さんの声が凄く好きだったので、スカーおじさんの捻くれた優しさを含んだ声色や地獄の底から湧き上がるような低音、そして色気のある歌声…とあらゆる髙橋さんの声を聴けて嬉しかったです。初めて悪役を拝見しましたけど、良きですね。ぜひいずれフロローやジャファーでも観てみたいと思いました。
シンバ:山下啓太
今回一番のお目当てだった山下さんのシンバ。私の記憶が正しければ昨年、福岡で『ライオンキング』が開幕したときにデビューされたのかなと思います。山下さんは『パリのアメリカ人』名古屋公演のアンリ役でたくさん拝見して凄く好きになった俳優さんなので、シンバをどう演じるのかなと楽しみでした。
1幕ラストの「ハクナ・マタタ」、ターザンロープで登場して歌う「心配ないさー!」を聴いた第一印象としては、声が高い!山下さんと言えば、やや中性的な高めの声が印象的でしたけど、それもあってシンバの高音パートは全然余裕に歌われていました。力強さよりも爽やかが先行するような、フレッシュなシンバの印象があって凄く新鮮でした。
声はひたすら高めなので、百獣の王の役としては少し迫力に欠けるかなというのが正直なところですが、フレッシュな分純粋で真っ直ぐなシンバの性格はより一層強調されていたように感じます。そして、とても可愛い(これは私の山下さん自身に抱いているイメージが強いです)。いかにも優しそうなクシャッとした笑顔も素敵でしたし、大人になったけどまだ声変わりの途中くらいのまさに「青年」なシンバみたいで、本当に可愛かったです。なのに筋肉はムキムキっていう声と見た目のギャップもたまりませんでした。
物語終盤の雄叫びも、あっきーシンバとかに比べるとやや迫力が足りないかなと思いましたけど、これはこれで山下さんシンバの個性が確立されていて個人的に凄く好きでした。観れば観るほど山下啓太さんを俳優として好きになっていくので、今後も応援していきたい方の1人です。
ちなみにカテコは山下さんシンバが目の前だったのですが、結構見られました(笑)もしかして覚えられてるのかな…。『パリのアメリカ人』のカテコでは岡村美南さんマイロの隣に山下さんアンリが立っていましたし、いつも岡村さんの目の前に座っていたので「またコイツいる」みたいに思われていたかもしれませんね…。今回のカテコではとても優しそうな笑顔で微笑まれて、なんか恥ずかしくて直視できませんでした(笑)
ナラ:木内志奈
初めましての木内さんナラ。低めの声が印象的で、落ち着いた佇まいと冷静沈着ゆえの頭の良さを感じさせるナラでした。今回ヤングナラを演じていた金子楓香ちゃんとも雰囲気や顔の造形が似ていた気がして、本当にそのまま大人に成長したみたいで違和感がほぼなかったのも印象的です。
ナラと言えば「シャドウランド」が最大の見せ場ですけど、低音はもちろん、盛り上がる箇所でもしっかり力強い歌声でハイトーンを出していました。周りに歌声が溶け込んでしまうこともほぼありませんでしたし、確立した歌声で存在感を発揮していたのが素晴らしかったです。
観劇の感想・考察
観劇時の所感などを書いていきます。
演出変更?
前に観たのがいかんせん5年前なので、細かい台詞や立ち位置の変更といった演出が変わったかどうかは分からないのですが、今回観ていて明らかに違うなと感じた箇所がありました。
それが2幕の「愛を感じて」。簡単に言うとかなり短縮されていて、間奏のセンターバレエとかがなくなっていました。このセンターバレエって凄くインパクトがあって、とても意味深だなぁと思いながら観ていた記憶があります。要するに、シンバとナラがお互いの想いに向き合うラブソングなわけです。シンバとナラの心の揺れ動きをセンターバレエなど諸々を通して描いていたのですが、見事にカットされていたのでかなり淡白な印象を受けました。
なんでなくなったんだろう…と不思議ではありますけど、こうやってアップデートを重ねていくんだよなぁと少し寂しくなった部分もあります。
美しい言葉の数々が魅力
『ライオンキング』と言えば、美しくて力強い言葉が魅力的な作品。過去に囚われて前を向けないシンバに放つ「過去とは痛いものだ。道は2つ。過去から逃げるか、学ぶか」というラフィキの言葉は、私がこの作品において一番好きな台詞です。
誰しも過去の過ちを引きずったまま今を生きてしまう瞬間ってあると思うのですが、そんなときこそこの言葉を思い出しています。過去から学ぶって誰でもできることではありませんが、過去は過去と割り切って今を全力で生きられたらいいなと、毎回『ライオンキング』を観劇するたびに感じさせられるのです。
他にも心動かされる言葉ってたくさんあるんですけど、凄く真っ当な生き方を教えてもらえるのでこの作品は時々観劇しては自分の生き方を見つめ直したいなと今回特に強く感じました。
久々にした日本らしい観劇
これは『ライオンキング』に関係した話とは違いますし冒頭でも触れた部分ですけど、やはり日本って日本人らしい観劇をするなぁと強く感じました。
拍手やスタンディングオベーションは受動的。笑いは控えめ。それなのにカーテンコールは長い。これらはまさに日本公演らしい要素です。「自分の感情を表に出すこと」これがやはり日本と海外とで大きく違うなと感じた点でした。カーテンコール長い問題は劇団四季だと特に顕著ですけど、なぜここだけこんなにも引き伸ばすのかなぁと不思議で仕方ありません。とはいえ、私も岡村美南さん出演の舞台はカテコで彼女が出てくるたびに嬉しさを感じてしまう気持ちがあるので、矛盾しているのは否めないんですけど…。
とても久々に日本人らしい観劇をした気がしたので、逆に新鮮でした。
まとめ
諸々思うところはあったものの、やはり劇団四季って凄いなと感じることができた観劇になりました。こんなご時世ですが、家族で無事に最前列センターで観劇できたこともそうですし、こうして『ライオンキング』という私の初四季観劇作品を家族と一緒に観られたこともそう。本当に奇跡的なタイミングではありましたけど、とても楽しい観劇ができました。
ちなみに「シークレットチャーム」(650円)を2個、幕間に購入。シンバ?とティモン&プンバァが出たので、個人的には大満足です。欲を言えばスカーが欲しかったですけど、これも観劇の記念ということで大切にしたいと思います。
また、2階ではムファサのマスクが展示されていました。実物サイズではないので、それの1/5くらいじゃないですかね。とてもコンパクトなマスクでした。
というわけで、久々の『ラインキング』観劇とても楽しかったです。やはり定期的に違う作品も観るべきですね。ご贔屓ばかり追いかけているとなかなか出会えない俳優さんもいますし、出会えない作品もあります。そんなときにふらっと立ち寄ってみるだけで、新鮮な気分を味わえる気がします。
とは言え、2020年が始まって2ヶ月…。未だに岡村美南さんを拝見できていないのでそろそろお会いしたいのが正直なところです。きっと岡村さんが舞台に出始めたらそこにばっかり集中してしまうので、こうして出ていない間に観ることができて良かったです。
また機会があれば、『ライオンキング』を観に行きたいと思います!
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