2022年7月27日マチネ 劇団四季『ノートルダムの鐘』@横浜




ノートルダムの鐘
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キャストの感想

キャストの感想です!

カジモド:金本泰潤

久々の泰潤さんカジは相変わらず凄い…!遠目から観ていてもフォルムそのままカジモドだし、お芝居すべてに抜かりがないのが凄すぎます。細部に至るまでちゃんとカジモドになっていて、だから観ている側もこんなに集中して観られるんだろうなーって思いました。ついつい泰潤さんってことを忘れてしまうくらい、そこに確かにカジモドが存在していました。これも全部お芝居なんだよな…って思うと、凄すぎます。

万寿夫さんフロローとの組み合わせは久しぶりに観ましたけど、村さんフロローを経てから観ると色々と見え方が違って面白かったです。たとえば1幕冒頭で今日の話をするときに、村さんフロローは口の動きで聖アフロディージアスの名前を教えてあげようとして、それを観ながら泰潤さんカジも唇を読むように「あーふーろー……」って言っていましたけど、万寿夫さんフロロー相手には自分の記憶の中から一生懸命捻り出そうとしていました。こうやって相手によってお芝居変えてくるの凄すぎます…。

同時に、常にビクビクしている感じもありました。万寿夫さんフロローは気性が荒いので常にご機嫌をうかがいながら接しているような印象を受けました。万寿夫さんフロロー相手だと「怒られている」っていう感覚があるんだろうなーって思います。村さんフロローは静かな人だから、怒っていたとしてもそれがカジにちゃんとすべて伝わっていなかったかもしれないなって。カジには「感情」というものがよく理解できないのであれば、分かりやすい万寿夫さんフロローのほうが多少なりとも感情を理解しやすいのかなと思いました。そういう意味でも抑圧された感じは凄く出ていたし、そんな中で伸び伸びと生きようとする泰潤さんカジの素直さや無邪気さに涙が出そうでした。

無邪気といえばTOTWでエスメが街を見渡しながら歌っているときに、泰潤さんカジがどこかをずーっと指さしていたのが可愛かったです。エスメにも「見て」ってちょっとアピールしていたんだけど、いざエスメが見たら恥ずかしくて目をそらしちゃって…。すっごく可愛かったです。

そして圧巻だったのがMOS。ラストのロングトーンはしっかりと音が出ていたし、「閉ざして」の部分はもはや絶唱に近い形で叫ぶようにして歌っていたのが凄すぎて鳥肌立ちました。そんな週頭から全部出し切っちゃっていいの!?ってくらいの声量で、喉が潰れるんじゃないかといらん心配してしまいましたわ…。泰潤さんカジのMOSは魂の叫びのように感じるんですよね。歌っているという感覚ではなく、本当に心が悲鳴をあげて叫んでいるかのような…。苦しくてもがいていて、心がとっても痛くて仕方ない。その想いを歌声に乗せて歌っていて、ダイレクトに心に響いてくる。思わず泣きそうになっちゃうMOSなんですよ…。上手く言葉で説明するのは難しいけど、とにかく本当に素晴らしいMOSでした。

フロローを投げ飛ばすときは狂気に満ちていて、殺すことにためらいもなく心に痛みも感じないどころかむしろ悦びを感じていて、まさに怪物そのものでした。あぁ、泰潤さんカジは本当に怪物になってしまった…と思いました。お芝居の緩急が凄すぎて訳が分からんのですよ…。2人の亡骸を見つめる泰潤さんカジは抜け殻のようになっているし、さっきまでと同じ人とは思えないくらいのギャップ。あまりにも役が憑依しすぎていて、怖さすら感じてしまいました。でもこれがリアルなんだよな…と思うと、説得力のあるお芝居に多大なる拍手を送りたいです。

久しぶりに観ましたけど、泰潤さんカジの「本物」っぷりは何度観ても素晴らしいですね。お芝居に熱が入りすぎて色んなことが今回起こりましたけど、それくらい本気度が伝わってきてただただ凄いなと感じました。泰潤さんカジにまた会うことができて嬉しかったです!

フロロー:野中万寿夫

1ヶ月半ぶりくらい?の万寿夫さんフロローは、村さんフロローを観たあとに観ると180度タイプが違ってとても面白かったです。前々から凄く荒々しい感情的なフロローだなという印象はありましたけど、あまりにも人間的で弱い心を必死に大声と罵声で隠しているような人だなーって思いました。

万寿夫さんはお芝居の緩急が凄くつく方なので、強さと弱さの共存っぷりが凄いんですよね。本当は常に何かに怯えていて怖くて仕方ないけど、それを上回る強気な態度で自分を大きく見せようとしている。実際そういう人っていますよね。態度はでかいけど本当は凄く小心者な人。万寿夫さんフロローってまさにそれだなと今回観て感じました。

でも同時にそういう人ほど他人を凄く見下しているので、ジプシーに対する嫌悪感も凄いのが伝わってきました。他人が怖いくせに他人を見下すっていう、人間あるあるを網羅しまくりなフロローでしたわ(笑)

そんな万寿夫さんフロローでしたが、カジに今日の話をするときにカジがちゃんと答えられたときは頭を撫でてあげて凄く嬉しそうに笑っていたのが印象的でした。これが本来の万寿夫さんフロローなんだろうなとも思います。万寿夫さんフロローのカジへの接し方はいわばDVに近い気がするんですよ。普通のときは優しいけど、ちょっとでも気に食わないことがあれば声を荒げて相手を抑えつけるっていう典型的なDV。だからカジも縮こまっちゃうんですわな…。そしてカジにはフロローしかいないから、それがカジにとっての世界そのものなんだなって思うと胸が苦しいです。

エスメに心を見透かされたときに狼狽えて声を荒げて、真実から逃げようとするのも凄く人間臭くて良いですね。鐘撞き堂でのエスメとの対峙シーンは、万寿夫さんフロローの緩急のついたお芝居と間合いがとても良かったです。

そして久しぶりに聞く万寿夫さんフロローのヘルファイヤーはとてもかっこよくて痺れました。ドスの効いた歌声と怒りに身を任せたような佇まいが、激しく炎を燃え揺らしているようでした。万寿夫さんフロローはもう自分の心が悪で満ちていることにも気付いているけど、そんな弱い自分から必死に目を背けようと逃げ回っていて、ただただ責任転嫁するだけの悪い人になっていました。とても心が弱い人間らしさを表していて良かったです。

で、一番個人的にグッと来たのはバスティーユのシーンでした。自分の想いを吐露する万寿夫さんフロローの哀れさといったらなかったです…。もう強がることをやめて弱い自分をひけらかして、ただただエスメに縋ろうとしていて、それが本当に醜くてたまりませんでした。ずっと弱い自分を隠し続けてきた万寿夫さんフロローなので、ここで自分の弱さを認めるっていうことにとても説得力があって非常に良かったです。

ラスト、カジに投げ落とされるときも逃げ回っていたし、万寿夫さんフロローはずっと逃げ回っていた人生だったなぁ…って思いました。本当の自分から目を背けてもうひとつ別の人格を作り上げてそっちの人間として生きようとしていました。人間はなんでこんなにも自分の弱さを認めようとしないんだろう…と万寿夫さんフロローを観て、なんか胸が苦しかったですね。でも絶対自分にもそういう部分はあるから、まるで鏡映しのように自分の心に響くんですよ。

村さんフロローを観たあとだから余計に両者の違いを感じて観られたし、万寿夫さんフロローってこんな感じの人なんだなぁ…とより深く観察しながら観られたのでとても楽しかったです。万寿夫さんフロローを再び観られて嬉しかったです!

エスメラルダ:岡村美南

おかえりなさい!まさかこんな形で戻ってくることになるなんて思いもしなかったので、喜んで良いものかどうかも悩ましいですが、ピンチを救ってくれた岡村さんには感謝しかありません…。7月3日以来なのでそんなに期間が空くこともなく、絶好調なコンディションでお芝居されていました。とっても良かった良かった…。

やっぱり圧倒的スター性というか、オーラみたいなものがあるなって思いました。タンバリンで登場したときのパァァァッとステージの空気が一気に変わる感じ、何度観てもときめいてしまいます。今回は本当に喉の調子も良くて、凄く伸びやかに歌っていました。ラスト、光田さんフィーバスから投げられたタンバリンが結構鋭いスピードで飛んできましたけどちゃんとキャッチしたので安心です(笑)

で、これは関係性の問題かなと思いますけどワイスさんクロパン相手だと圧倒的に岡村さんエスメのが優位な感じありますね。髙橋さんクロパンが凄く強いというか芯があって岡村さんエスメと対等に渡り合える感じのアニキだったから、余計に今回観ていてクロパンよりエスメのがつええ…ってなりました。別に岡村さんも意識してお芝居を変えているってわけではないんですけどね。そういうふうに見えるっていうのが面白いなって思った話です。

で、一番今回面白かったのは光田さんフィーバスとの絡みでした。私は今回初めて光田さんフィーバスを観たので、岡村さんエスメとの組み合わせももちろん初めてで…。思った以上に光田さんが大きかったので、普段大きいな―って思ってる岡村さんでさえちっちゃく見えてキュンキュンしまくりでした。身長差が凄いのよ…。光田さんって身長どれくらいあるんやろ…。佐久間さんとだとどっちのが大きいんですかね。

光田さんフィーバスはとっても精神的に大人びているので、なんだか岡村さんエスメが凄く子供っぽく見えました。子供っぽくっていうと語弊だけど、幼く見える瞬間は多々ありました。バスティーユのシーンが特にきゅんポイントで(?)、「自分が助かるためにできることはなんでもするんだ」みたいなことをフィーバスに言われて説得されるエスメですが、断固拒否するんですよね。その瞬間の岡村さんエスメが本当に駄々をこねる子供みたいで、きゅるきゅる潤んだ瞳で上目遣いでフィーバスを見上げるものだからたまったもんじゃない……。

しかもなんでそんなこと言うの?って感じでフィーバスの言葉にふてくされるような表情もするから余計に相まって可愛さしかありませんでした。本当に可愛すぎて無理…。どうしましょ…。前回までの神永さんフィーバスのときも身長差はあれどここまでガッツリ上目遣いするほどではなかったので、今回はその表情にやられてもう本当に作品に集中できなかった(最低)!可愛すぎかよ!

正直、相性というかお芝居の解釈的に岡村さんエスメと一番合うのはやっぱり神永さんフィーバスだなぁ…とは思いました。今回の光田さんでフィーバス全員観たはずだけど、やっぱり神永さんフィーバスのお芝居の解釈が一番岡村さんエスメが惚れるのに説得力があるなとは思ったんです。でも光田さんフィーバスの包み込んでくれるような精神性も凄く良くて、自由奔放な岡村さんエスメを決して束縛はせずに受け入れながらも守ってくれる感じが凄く良かったです。

なんだろうね、岡村さんエスメに色気を感じたというわけではないはずなんだけど、光田さんフィーバスに抱き締められている岡村さんエスメにはなんだか色気を感じてしまいました。光田さんマジックか…???なんそれ…???本当に何から何まで新鮮で良かったです、光田さんフィーバスとの絡み。

でね、今回なんか一番グッと来たのがバスティーユでフロローに迫られて押し倒されているときの叫び声でした。すっごく悲痛な叫びで、嗚咽を漏らしていたんですよ。ただ叫ぶだけじゃなくて、泣いているかのように泣いていて正直凄く心が痛みました。そして振り返った岡村さんエスメ、この時点で涙流していたのでなんだか精神的に色々と来るものがあってうぅ…ってなっちゃいましたよね。リアルさと緊迫感のあるお芝居にとても引き込まれた瞬間でしたわ。

今回は大きなお芝居の変更点があったとかそういうことではなかったですが、観れば観るほどどんどんお芝居の説得力が増していくので観るのが凄く楽しかったです。役者としてもどんどん経験値積んでいるんだなぁ…ってお前誰だよっていう目線の感想すら抱いてしまいましたわ。でも本当に今の岡村さんは2016年ノートルダムが幕を開けた頃とは比べものにならないくらい、役者として大きく成長しているし、すっごく素敵なお芝居しています。応援していて良かったな―と改めて感じた今回の観劇でした。

何よりこのご時世だからね。元気そうなお姿観られたのが幸せです。こんな状況でも舞台に立ってくださって本当にありがとうございました。ピンチヒッターとはいえ、本当に素晴らしいお芝居でした!

フィーバス:光田健一

初めましての光田さんフィーバスでした。光田さんは『オペラ座の怪人』以来だったので結構久しぶりだったんですけど、なんか記憶よりもはるかに背が高くてビックリでした。だってあの岡村美南さんが相当ちっちゃく見えるんだからね…2メートルくらいあるんじゃないか…???

前回まで観ていたのがとても感情豊かで熱い心を持った神永さんフィーバスだったので、光田さんフィーバスの落ち着いた雰囲気は凄く新鮮というかあまりにも対極的で脳がバグりましたよね。本当に凄く落ち着いていて大人なフィーバスでした。神永さんフィーバスのようにクセが強いわけでもなく、シンプルなお芝居の中でも凄くエスメを大切にしてくれている印象があって良かったです。

そして声がとても甘い…。佐久間さんフィーバスを初めて観たときのような衝撃がありました。佐久間さんフィーバスほど弱さが全面に出ているわけではないですけど、男性フェロモンが出まくっている感じとかはとても佐久間さんフィーバスを彷彿とさせる部分がありました。でもはるかに光田さんフィーバスのほうが大人な印象です。

息抜きでの戦場を思い出す瞬間は明らかに体が震えるなんてことはなかったですが、凄く怖い表情をしていたのが印象的でした。そんな暗い表情から一転して女の子に向ける表情が一気に優しく穏やかになったのは凄くギャップがあってすげえとなりました。光田さんフィーバスは距離感が近いのも特徴だなーと思います。凄く距離を詰めてくるので、あれはどんな女の子でもイチコロでしょうな…。距離感の詰め方にいやらしさもないので全然嫌悪感もなくて、さすが光田さんフィーバス~~~!ってなりました。

特に大聖堂でエスメと対峙するシーンで、エスメに前職の話を持ち出されたときの光田さんフィーバスのお芝居が凄く良くて…。笑顔が消えるけど「ところで君はどこから来た」と聞くときには息抜きのときに見せていたような甘いマスクになりエスメとの距離を縮めて目の前まで来たんですよ。だから自然と岡村さんエスメが上向きになって、その身長差にグッと来ました。いくと決めたら意外とグイグイいくのがギャップあって良かったです。

あとはラポンテでエスメにキスする瞬間もグイッて突然キスするというよりは、ぬるって感じに滑らかにためらいも間もなくキスしていきました。ひいいい…って感じです。女の扱いに慣れてるこの男…。光田さんフィーバスから漂う女の扱いに慣れている感じが本当に色気あるしドキッとするし、たまりませんでした。

そして何より、エスメに頬擦りするときの光田さんフィーバスがとにかく色気凄くてずっとドキドキしまくりでした。特にSomedayでの光田さんフィーバスがたまらなくて、エスメが泣き崩れたときに後ろから優しく抱き締める光田さんフィーバスがそっと寄り添うように顔を寄せていて、エスメに頬擦りをしていたのが凄くキュンとなりました。愛しさでいっぱいなような優しい表情と、相変わらずの距離の近さにドキドキしたし、こんなにも色気を感じたSomedayは初めてでした。とっても良かったです。

処刑前のエスメとの抱擁も凄くきつくエスメを抱き締めていて、こういう愛情表現がとにかく素敵でした。こんなにもエスメを包み込んでくれる大人なフィーバスって私としてはとても新鮮だったので、光田さんフィーバスをようやく観ることができて良かったです。久々の観劇だったこともあってガッツリと光田さんフィーバスに集中して観ることができなかったので、次回観るときにしっかりと注目していきたいと思います!

まとめ

私にとっては7月3日が今期ノートルダムの見納めのつもりだったのですが、こういうカタチとはいえまた観劇できたのは嬉しかったです。観たかったキャストにも巡り会えたし、何よりも無事に幕が開いて幕が閉じたことが奇跡だなぁ…と思いました。

日々感染者数が増え続けてきていてそれに伴い公演中止も相次いでいる状況なので今後も油断は一切できませんが、とにかく無事にこのまま千穐楽まで駆け抜けられることを祈っています…。本当に、心から…。

そして公演再開に向けて急なスケジュール変更にも関わらず完璧なエスメを演じられた岡村美南さん。こういうコロナによる影響で状況変わっての岡村さんを観るのは正直初めてですけど、本当に素晴らしかったです。

見届けられて私も幸せでした。戻ってきてくれて、ありがとう。

次は29日。無事に達郎さん回取れたので3年ぶりの達郎さんカジモド×岡村さんエスメを堪能してきます!最後までご覧くださった皆さん、ありがとうございました!

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