10回目のロボット観劇!
はじめに
開幕から1週間。やっぱり我慢できずに今回もチケットを取ってしまいました。前回うぶちゃん&渡邊さんペアのタングだったから本当は洋一郎さん&長野さんペアで観たかったのですが、ソワレのチケットが取れたので観劇を決めました。
この日は朝から渋谷で芸人さんの写真展示会に行ったりセーラームーンの映画を観たりしていてかなり動き回っていたので正直へとへとでしたが、やっぱり観劇はたくさんの元気をもらえますし、何よりの心の栄養剤になることを再認識。私が『ロボット・イン・ザ・ガーデン』を観劇している間に妹には『オペラ座の怪人』を観劇してもらっていたんですけど、妹も大満足の観劇になったみたいで本当に姉妹揃って充実したい1日になりました。
今回も開演前の舞台写真を記念に撮影。
ということで、ざっくりですが観劇して感じたことなど諸々レポしていきますのでぜひ最後までお付き合いくださいませ!
総評
全体の感想を書いてきます。
この作品においてキャストに不満も不安も一切なくて、実力派の俳優さんばかりが集まっているのでいつもハイクオリティのパフォーマンスを観られて幸せです。そんな中で今回はいつもと違って、良い意味でお芝居らしくないお芝居を観られた気がして凄く新鮮でした。このあとキャストの感想のところでもちょっとずつ触れていきますけど、田邊真也さんをはじめ全体的に凄く落ち着いたトーンでのお芝居が目立った気がします。それがお芝居らしく誇張されていたりわざとらしくなっていたり…みたいなことがなかったんです。だからこそ自然で、ありふれた日々の数日間を切り取ったような印象を受けました。
要するにお芝居のリアリティがかなり高まって、今観ているものが本当に起きているかのような錯覚すらあったんですよね。常にキャラクターが「今」を生きている感じが伝わってきて、改めてロボットカンパニーのレベルの高さを実感しました。本当に今回の公演はいつも以上にリアルさを感じられて、とても深みが増して良かったです。
そして今回は戻りで拾った5列センター。ちょっと疲れ目だったのでぼんやりしてしまった部分はありましたけど、表情も見やすくて最高でした。目の前の人が座高高かったり、後ろの席のほうで鼻をずっとすすっている人がいたりして気になる部分は少々ありましたけど、全体的に落ち着いて観られたのは良かったです。まあでもいつもよりはちょっと控えめな盛り上がり方だったかな。前回が開幕日だったのもあって余計に落差を感じたのかもしれませんけど、どこで拍手していいのか分からない…みたいな戸惑いも一部感じられました(笑)この作品は確かに拍手のポイントが難しいですね。
だからそういう意味も含め、今回は凄くしっとりした雰囲気の公演だった気がします。本当にそれが逆に新鮮で面白かったですし、だからこそ初めて感じられたことも多々あって色んな発見がありました。また、歌詞や台詞がグサグサと刺さることも多くて涙も色んなところで溢れました。やっぱりベンとカトウの掛け合いのシーンは凄く心に響きます。生きているものの宿命ですね、命に限りがあるということは。だからこそ悔いを残さずに生きなければ、ということをメッセージとして伝えられているみたいでグッと来ました。ここのシーンに携わるのが田邊さんと萩原さんっていうベテランの実力派たちっていうのも相まって、お芝居の説得力が凄かったです…。
そんなわけで、なんか大切なことを再認識させてくれる作品なだけに今回も観劇して良かったなって思いました。今のご時世だから胸に刻まないといけないこともたくさんあって、この作品はそれをベンとタングを通してメッセージとして伝えてくれていて、なんか決して他人事じゃないなって思わされます。凄く素敵な作品だと改めて実感できた観劇になりました。何だかんだで10回目の観劇となりましたけど、それでも今回もボロ泣きになっちゃうって凄いですね…。心の琴線に触れる作品だなって思いました。今回も無事に観ることができて本当に良かったです!
キャストの感想
気になったキャストの感想を書いていきます。
ベン:田邊真也
毎回お芝居に型がなくて自然なのが田邊さんの凄いところですが、今回はいつも以上にベンのお芝居が柔らかくて、ベンのイメージが大きく変わりました。冒頭のベンって無気力さが全面に出ていますけど、今回は無気力というよりも優しさゆえの弱々しさが強調されている印象がありました。なんか常に笑顔で、誰に対してもニコニコしていて、優しいからこそすべてを失ってしまった感じがした気がします。
ただ優しいだけの人間ってつまらないというのはよく言われることですけど、今回の田邊さんベンはまさにそんな感じでした。単に無気力なんじゃなくて、昔から人に気を遣ってばかりで優しくすることが生き甲斐でお人好しで、そういう生き方をしてきたから本当の自分を見失っていってしまったんじゃないかな…と思うくらい、ベンの一挙一動に優しさが感じられたんです。タングを捨てるかどうするかの口論をエイミーと繰り広げているときでさえ、「こんな状態で追い出せってよく言えるよねぇ」とタングに声をかける言葉もいつもみたいに尖っていたりせず、子供に話しかけるみたいな優しい口調でした。あとは台詞の合間合間の笑い声が凄く多くて、ヘラヘラしているようにも取れるし、自分が笑うことで調和を取ろうとしているようにも見えました。
こういうのが冒頭のシーンでいくつも見受けられて、なんかいつもと雰囲気が違うように思えたのかもしれません。だから、ベンが無気力であるのとはまた違ったダメ人間っぽさが出ていて凄く新鮮味を感じましたし、タングと旅を続けていきながら厳しさも時折見せるようになるのが成長したようにも感じられて良かったです。田邊さんが意識して今回こういうお芝居をしていたのかは分かりませんけど、新しいベンのお芝居のアプローチでとても面白かったです。やっぱり演じ方が変わるだけでもこんなに感じ方も変わるもんなんだなぁ…と再認識できました。
また、前述したように全体的に落ち着いたトーンでお芝居されていたのも印象的でした。単純にお疲れなだけなのかは分かりませんが、その落ち着いた感じが逆に自然でお芝居っぽさがなくて、本当にベンの日常をただ切り取っているだけみたいで良かったです。伝わる人少ないかもですけど、平田オリザのリアルな劇を観ている感覚でした。でも、実際ちょっとお疲れなのかな…と思う場面も少なくはなくて、この作品はほとんどシングルキャストで回していくだけに負担も大きいでしょうし、どうか体調にはくれぐれも気をつけていただきたいな…とも思います。このご時世なのでダブル体制できるといいんですけどね。
でも今回も凄く素敵なお芝居をされていて、田邊さんのお芝居に胸を打たれましたし、タングを想って泣く姿には私も思わずもらい泣きしてしまいました。本当に田邊さんのお芝居って温かくて大好きです。千秋楽までまだまだありますけど、次回も元気な田邊さんベンに会えることを楽しみにしたいと思います!
タング:生形理菜/渡邊寛仲
今回も凄く素敵で可愛らしいタングでした。やっぱり前回観たときに感じたことは今回も同じように感じられたので、意図的に言い方を変えた部分とかも結構あったみたいです。うぶちゃんの中でタングとの向き合い方が大きく変わったのかなぁ…とも思いました。
マッスルカーのシーンのあとの「ドライブするぅ?」の言い方がちょっとイケボになっていたり、直後にオーナーのことをしつこく聞いてくるベンに対して怒りを露わにしたタングがドンドンと足音を立てながら歩いていたり、2幕でベンのリュックからズボンを取り出そうとする際に「ズーボ…ズーボ…ズーボーンッ」とちょっと遊びを交えた言い方になっていたり…と、前回気になった変更点は今回もやっていました。
より好奇心が旺盛になって、より子供っぽくなって、よりいたずらっ子になった印象です。身近な人の真似をしているというよりも、タング自身が元々幼くて知能的にも子供なんだろうなって思います。でもだからこそ可能性が無限にあるし、ボリンジャーに対してあそこまで冷酷な声で仕返しをしようとできたんだとも思いました。うぶちゃんタングの声色の使い分けが本当に上手で、それこそタングが本物の人間みたいに感情をそのまま声に出して表現するのが凄く素敵です。この感情表現がさらに顕著になったので、タングってロボットなんだっけ…ということを忘れそうになることが多々ありました。
うぶちゃんタングのお芝居は前回公演でもそうでしたが、凄く感情的で人間らしい印象です。だから、うぶちゃんタングを観ていると人間とロボットの違いについて色々考えさせられます。17日と今回とで観てきて、人間側の役者さんの感情表現がかなり顕著になった印象があったんですけど、同時にうぶちゃんタングも感情表現がかなり表立って出るようになったので、人間とロボットってやっぱり根本的には同じなのかもしれない…ということを感じさせてくれました。人間の子供の成長を見守っているような感覚に陥って、タングがどんどん色んなことを覚えていって人間らしくなっていくからこそ、ベンと同じようにタングに対して愛しさを感じられるのかもしれません。
やっぱりうぶちゃんタングをさらに知るためにも洋一郎さん&長野さんペアのタングをどこかのタイミングで観ないとなぁ…とは思うので、次回こそ洋一郎さん&長野さんペアで観られたらいいなと思います。何はともあれ、今回もうぶちゃん&渡邊さんペアのタングが天使級に可愛かったので大満足です!
エイミー:鳥原ゆきみ
今回もゆきみさんエイミーは素敵でした。田邊さんベンが落ち着いたトーンだったのもあって、逆にゆきみさんエイミーのちょっと声を荒げる感じとかが際立って、チェンバーズ夫妻の亀裂とかエイミーの苦労が感じられて面白かったです。エイミーも決してベンのことが嫌いではないし、変わらず好きな気持ちはあるはずなんだろうけど、どうしても冷めてしまうしイライラしてしまうっていうフラストレーションの溜まり具合がちょっとした仕草からも感じられました。ゆきみさん、本当にお芝居が細かいです。
だからこそ、やっぱりベンじゃないとダメって帰ってくるのが本当に可愛いし、ボロボロに泣いちゃうのが愛しくてたまりません。今回も「君が好きなんだ」とベンに言われたあたりからすでにうるうるしてて、「他の人とは付き合えなかった。あなたが恋しくて」と言ったあとには両手で顔を覆いながら思いっきり泣いていて、相変わらず泣き虫なゆきみさんエイミーが可愛くて悶えました。感受性豊かでとても素敵ですね…。
もちろん泣くことが絶対に良いとは限らないですけど、こういう一面が垣間見えることでより1幕冒頭の冷たかったエイミーとの落差が生まれて、魅力がグンと上がると思いました。作中ではベンよりもエイミーのほうが人生成功していて上昇志向で逞しく描かれていますけど、ベンにだけはこんな弱い一面も見せてしまうっていうのがエイミーという女性の愛しい部分でもありますし、ベンが彼女を守って支えていこうと思える原動力にもなるのかなと思います。だから、舞台版のエイミーはゆきみさんそのものに近いんだろうし、自然に演じられるっていうのは自分に近しい部分もきっと持ち合わせているんでしょうね。ゆきみさんのお芝居がこんなに魅力的に感じるのは、エイミーに近い部分があるからっていうのも1つの要因だと感じています。
一方でリジーの研究所の見学ツアーに参加する人やパラオの女性、秋葉原のスタッフなどを演じているときは結構自由奔放で弾けている姿も見受けられるので、素はこっちに近いのかもしれません(笑)素のゆきみさんが結構面白い人なので、素の部分がちょこちょこ舞台に活かされているのが可愛いな―って思いました。本当に観れば観るほど好きになっていく不思議な魅力を持った女優さんです。今回も可愛くて素敵なゆきみさんエイミーをたっぷり堪能できて幸せでした!
リジー:相原萌
萌さんもリジーのお芝居がいつもより落ち着いたトーンでされていたような印象を受けました。同時に、萌さん凄くお芝居上手になったなぁ…とも思いました。というのも、結構語尾が上がる癖があってちょっと喋り方に特徴があって、それが少し演技っぽさを強調していたんですけど、それがかなり抑えられていてナチュラルな喋り方になっていた気がします。落ち着いたトーンで話すようになっていたのも相まって、自然にリジーが存在しているみたいでとても良いなと思いました。
もちろん元気で明るい印象はそのままなんだけど、時々思い詰めたみたいに言葉が詰まって静かになって…というような心の機微が感じられたり、茶化す感じではなくて真剣に話を聞いてあげたり、リジーの内面や人となりが表に滲み出てきた気がします。一方で、カトウのことを話すときはかなり嬉しそうでちょっと照れも混じっていて、凄く乙女になってるのが可愛かったです。カトウのことが大好きなのが伝わってきて、爆発しろ\(^o^)/って思いました(笑)
あとはカイルの本音を聞いているときに両手で口元を覆うようにして泣くのをこらえていた姿も印象的でした。でもそんな姿をカイルには一切見せずに、カイルを見るときは一生懸命微笑んでいたのも愛しかったです。どんどん萌さんの中でカイルに愛着が湧いてきてるのかなぁ…とも感じました。いくらロボットとは言っても大切な家族ですし、萌さんも演じていく中でどんどんリジーというキャラクターが染み込んでいるんだと思います。なんか本当に今回の萌さんリジーがいつも以上に魅力的だったのでついつい引き込まれてしまいました。凄く良かったです!
観劇の感想・考察
気になったポイントについて書いていきます。
タイトルナンバーから伝わる温かさ
劇中でタイトルナンバーの「ロボット・イン・ザ・ガーデン」は計3回歌われます。1回目は1幕中盤、ベンがタングに語り掛けるように1人で歌います。2回目は2幕終盤、ベンがタングと家族になりたいという想いを伝えながら歌い始め、それに応えるようにタングも一緒に歌います。そして3回目は2幕ラスト、タングがボニーを抱きながら歌い始め、そんなタングたちを見てベンとエイミーも一緒に歌います。そして最後には全員がベン一家の元にやってきて、全員で歌います。
同じ曲がこうして何度も使われることってミュージカルにおいては決して珍しいわけではないんですけど、そういや繰り返すごとにベンとタングを取り巻く環境に変化があって、関わっていく人が増えていって、一緒に歌ってくれる人が増えていくっていうことがリプライズを重ねていくことで綺麗に表現されていて、それを再認識した瞬間に凄く心が温かくなりました。同じ曲によっても歌う人が違ったり歌詞に変化があったり…ということも珍しいことではないし、同じ曲を違う場面で使うことで場面と場面の繋がりが生まれて意味合いを持たせることができるっていうのは色んな作品で観てきたつもりだったんですけど、なんか今回は凄く衝撃を受けました。
このナンバーってどういう場面で歌われるかというと、作品のタイトル名がそのまま曲名になっているだけあって、ベンが何かを決意するときや前に進もうとするときに歌われています。それこそ「人生を再起動」しようと決意する場面でこのナンバーが歌われている印象がありました。だから、このナンバーの歌詞はそのままこの作品で一番伝えたいことでもあって、それを歌っているのが誰なのかっていうことも凄く重要なんだと思います。
最初はエイミーとの夫婦仲も良くなくてどこか孤独だったベンが、タングと出会って旅を続けていく中でタングに特別な感情を抱くようになって、家族になりたいという気持ちを抱くようになって、最後にはタングやエイミーと本当の家族になっていく…。孤独だったベンやタングの周りに、たくさんの人たちがいて、優しく包んでくれる。殻に閉じこもっていたベンが人生を再起動しようと決意した結果、本当の自分を見出して大切な人たちと明るい未来を築いていこうと前を向けたっていう、このタイトルナンバーの変遷を観ているだけでも物語や伝えたいメッセージが凝縮されているような気がしました。
もちろん歌詞も美しくて温かいと思わせるものばかりで、この曲を聴くだけでもう条件反射のように涙が溢れてきてしまうんですけど、そこに加えてストーリー性も凝縮されているからこそ、このナンバーがこんなにも美しくて温かく感じるんだなと思いました。舞台演出なども含めて、この作品の温かさを改めて認識できた観劇となりました。演出がとても緻密ですし言葉も美しいですし、本当に観ていると「今を生きなきゃ」とか「前を向こう」って活力をもらえる作品だと思います。やっぱり『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は名作中の名作ですね。本当に1人でも多くの人に観てほしいなと思いました。
まとめ
今回も色んな発見ができて充実した観劇になりました。前回公演とはまた状況が変わって、コロナの勢いがどんどん強まっているので、以前より危機感を抱きながら毎日を過ごさなくてはならなくなっています。だからこそグサッと刺さる言葉がたくさんあって、色んなことを感じながら観られるようになりました。今このご時世にやるからこそ、四季ちゃんが伝えたいメッセージが作品の中にきっとたくさん詰まっているんだと思います。それを観劇しながら受け取れることも幸せだと感じましたし、受け取ったからにはその想いに応えていきたいなって思えました。
そして今回は再開後2回目の観劇だったので、出演者のサイン入りポストカードももらいました。バイプレイヤーの本城裕二さんのメッセージ付きサインです。嬉しい!
メッセージに書かれていますけど、逆にこんな大変な時期でも覚悟を持って舞台に立ち続けてくださり、素敵な作品をお届けくださっている俳優の皆さんには感謝の申し上げようもありません。演劇はお客さんがいてこそ成り立つと多くの俳優さんやスタッフさんが語られていたので、演劇業界にとってお客さんという存在は必要不可欠なんだなって実感しました。だから、四季ちゃんが苦しい状況の中でも公演を行ってくださっていることに感謝して、感染対策を万全にしながらこれからも劇場に足を運んでいきたいと思いました。
そして、今回観劇中にこの岡村美南さん仕様バッジを劇場のどこかに落としてしまったんですけど、終演後にスタッフさんに問い合わせてみたらクロークに届いていました。親切などなたかが拾ってクロークに預けてくださったんでしょうか…。このブログを見ているか分かりませんが、バッジを届けてくださった方、本当にありがとうございました!
こういう人の温かさを劇中でも終演後にも感じられた観劇となって、本当に心がほっこりとなりました。やっぱり人と触れ合うことって大事だなということも再認識できた気がします。人は孤独でも生きていけるけど、多くの人と関わりながら生きていくほうが温かい人生を送れるんでしょうね。私も今のこの時期だからこそ、人との関わりの中で生まれる温かさや絆などを大切にしていきたいなと思いました。
いよいよ1月27日から京都で『マンマ・ミーア!』が開幕するのでしばらくはそっちに集中することになりそうですが、また次回近いうちに『ロボット・イン・ザ・ガーデン』も観劇しに行きたいです。
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