キャストの感想
キャストの感想です!
ベン:山下啓太
今回も素敵なお芝居でした。先述したように今回はベンに注目しながら観るようにしてみて、山下さんの表情をしっかりと観られたのがとても大きかったです。どうしてもね、岡村さんに注目してしまうことが多かったので…。
まあ、先述したこととほぼ被るので割愛かな。本当に山下さんベンはなんかほっとけない可愛さがある。だらしなくてダメダメでどうしようもないんですよ、確かに。だけどそれでもほっとけなくて、それは子供みたいな無邪気さを持ち合わせていたり、弱さを知っているからこそ感じる愛しさだと思います。
でも弱さを知りすぎているからこそ、人との距離を上手く図れない。これ以上何かを失うのが怖くて極端に怯えている子犬みたい。だから2幕のRIGで「誰かを助け、育みたいと感じたときに強くなれる」という歌詞がすっごくピッタリなんです。ずっと人と、エイミーとすら深く関わることを恐れてしまった山下さんベンが、自分よりさらに弱い立場にあるタングを助けたい、守りたいと思ったから前に一歩踏み出せたんだなっていうのがめっちゃくちゃ説得力ありました。
エイミーには酷だけど、タングと出会っていなければベンはもう踏み出すことすらできなかったかもしれませんね。
そういうのを考えると、やっぱり1幕RIGなーんで変えたんだよっていうのが許せないんですけど(笑)1幕のベンがタングを守る一方的な関係性から、2幕のタングもベンを守る相互的な関係性へと変化していくことの表れがRIGで凄く感じられたのに…と、1幕RIG聴くたびに残念で仕方ないです。2幕ラストではエイミーも一緒に歌うからね。3回同じナンバーが登場して歌う人たちが増えて行くって、凄く素敵な演出ですよね。
1幕RIGがベンからタングへのラブソングだとすれば、2幕RIGはタングからベンへのアンサーソングと私は捉えているので、毎度うっ…となっています。いや、もうこの話は今後も永遠にしていくかもしれない…。それくらい根に持っています(笑)
話を戻します。
山下さんベンってちょっと過剰な笑い方をするじゃないですか(?)。あれも自己防衛な部分があるように見えるんですよ。空気を読んでちょっとふざけるように笑ってみて、その場を気まずくしないようにするっていう。無意識のうちに自己防衛本能が働いているっていうことは、相当なトラウマを抱えている証拠だと思います。人を傷つけてしまうことが本当に怖いんだろうなぁって。
タングに対しても人を傷つけてはいけない!って怒りますけど、単なる倫理観だけでなくベン自身がそのことでずっと悩んできたからこそその言葉に重みがあるのかもしれませんね。山下さんベン、ずーっと置いて行かれた子犬のような表情をしていたから、誰かが誰かを失う気持ちはもう二度と味わいたくないと思っているだろうし、そのことにずっと怯え続けているのも伝わってきました。
エイミーとの電話で「さよなら!エイミー!幸せに―!」と一方的に切ってしまったのも、エイミーから改めて別れを告げられてしまうことが怖かったんだと思います。それも自己防衛。エイミーという自分にとって大切な存在が、自分の元からいなくなってしまうことに、恐ろしいほど怖くなってしまったんだろうなって。だから咄嗟にそんなことを言っちゃって、電話を切った直後にあんな大号泣したんだなぁ…って。すべての行動原理に納得がいくんですよね。
とことん弱さが露呈したベンで、凄く愛しさが芽生えました。だからミナミーもベンのことが大好きなんだと思います。弱さを知っている人は強くなれる。それをエイミーは知っているから。そして弱さを知っている人は、人に優しくできる。弱いからこそ無限の可能性を持っている。ベンとタングは一緒なんです。そういうベンの無限の可能性を感じさせてくれるお芝居をする山下さんが、本当に素敵でした。
タングを叱るお芝居もどんどん板についてきていますし、すべてにおいて説得力のあるお芝居をされるようになったので毎度感動しています。でね、こんなにどうしようもなく弱っちいベンを演じていたのにラストのラスト、みんなに囲まれている中でボニーを抱く山下さんベンの元にミナミーがやってきて肩に頭を乗せてきたときに、山下さんベンがそっと目を閉じるんですよ。そのときの山下さんベンの表情がほんっっっとに良いので皆さん観てください!!!!!!めっちゃくちゃ穏やかな表情しているんです。一気にね、大人の、男らしい、パパらしい、愛に溢れた表情をするからね、困惑するの!!!え、こんな表情できるの!?!?!って。
もう山下さんベンは沼ですよ。改めて素敵だなと思いました。そしてミナミーとマジでお似合いカップルです。最高に好き…。今回も山下さんベンのお芝居には魅了されました。下手側からたっぷりと山下さんベンの表情を堪能できて嬉しかったです!
タング:生形理菜/渡邊寛仲
京都公演4回目のうぶかんタング~!5回中4回がうぶかんタングなので結構な確率で観ています。そしてうぶかんタングは本当に可愛いので毎度癒されています。とにかくやんちゃ。すっごくやんちゃで育ちざかりの子供みたいで可愛かったです。
ベンと初めて会ったときに「あああああ!」って驚いて腰を抜かすのですが、これ初日に倒れたときにフラップがしまっちゃって。それを受けてなのか次回以降からは体を左側に寄せるようにして倒れるようになりました。そうすることで衝撃でフラップがしまっちゃうハプニングはなくなるので、あえてそうするようにしたっぽいですね。ちなみに土ソワの長野さん&安田さんタングはそのまま倒れたので見事にフラップはしまっちゃっていました(笑)
うぶかんペアはタングの感情をかなりダイレクトに演じていて、たとえばホテルカリフォルニアでアンドロイドが壊れて捨てられていたことにショックを受けたタングが、次のシーンで上手側から歩いてくるときにかなり足音を立てて歩いていて、凄く細かいなと思いました。普段そこまでタングの足音って気にならないのですが、ここのシーンはかなりずっしりとした足取りで気が重いのが伝わってきたんです。本当に人間みたいで凄くキュンとなりました。
他にも色々と可愛らしいなと思う瞬間はあったのですが、その中でも2幕ラストのRIGにはグッとくるものがありました。うぶちゃんが泣くのを一生懸命こらえていて、その涙が歌声に滲み出る感じがたまらなかったです。タングってどんどんベンに似てくるんですけど、泣き虫なところもちょっと似ちゃうのが可愛いんですよね~。「泣き虫のベンには絶対」っていう歌詞のところ、凄く泣きそうな歌声だったので、泣き虫なのはタングもじゃん!ってなっちゃいました。可愛い。
今回は下手寄りだったのでタングを目の前で観られる瞬間が多々あって、本当にレンズの瞳がまんまるでキラキラしていて可愛らしいなぁ…と思いました。こりゃ岡村美南さんもメロメロになるの分かるわって感じです(笑)安定のうぶかんタング、今回も最高でした!
エイミー:岡村美南
今回も良かったなぁ…。観るたびに毎回お芝居の印象が変わるから、本当に「型」をあえて作らないようにしているんだなぁって思いました。ベースとなる部分はありつつも、それ以外のところはそのときそのときの感情や山下さんベンとの掛け合いの中で生まれるものを大切にしている印象があってそれがリアルで良かったです。
1幕冒頭のお芝居、とても切なかったです。ベースとなる部分に脚色を加えず、ありのままの岡村さんの向き合い方でエイミーを演じられていた印象がありました。ミナミーは人の気持ちが理解できるし、相手の良いところを素直に褒められる人。簡単に人を傷つけることはできないし、するつもりもない心優しい人です。凄く繊細だろうから、ベンの気持ちもちゃんと理解したうえで向き合っている印象がありました。
「ねえ、あなたが自分で作ってもいいのよ」の言い方は結構疲れている感じが出ていて、正直かなり疲弊するところまで来ているんだろうなぁ…って思いました。でも怒っているのとは違う。仕事に出かけるときの「ベーンー、ゴミも出しといてね」の声かけはまるで子供に言い聞かせるような言い方だったし、ベンに怒っているわけではないんだろうなっていうのは伝わってきます。フラストレーションは相当溜まっているんだけど、ベンに対して「怒り」の感情があるわけではない。この時点では。
でも仕事から帰ってきたらベンは何もやることをしておらず、なんならロボットを家に上げている始末。そりゃ仏の顔も三度までってやつですよね。あれだけへらへらしていた夫がロボット相手にウキウキしていて、サンフランシスコまで行って修理するなんて言うもんですから、そりゃ限界迎えますわな。自分とは向き合ってくれないくせに、突然現れたゴミみたいなロボットに熱を上げているんですもん。いやーーーミナミーに同情するわ。それまで抑えていたフラストレーションは「怒り」となって沸点に達しますよね。
だから、なんていうのかなぁ…。ミナミーとしてはベンと家族になりたいっていう想いでずっとベンと歩んできたつもりだったのに、ベンはまったく違う方向を向いていて。そのことに気付いてもくれない。そりゃ「もういい…」という言葉に寂しさや悲しさや悔しさが込められて当然ですよね。凄く切なくなりました。
そして「もしも子供がいれば変われたかしら」と「ふたりのことば」の中で歌いますが、ゆきみさんに比べるとミナミーは子供がどうしても欲しいっていうタイプにはやっぱり感じられなくて。もちろん子供も欲しいことは欲しいと思うけど、それ以上にベンと同じ方向を向きたいっていう想いが相当強いと感じました。ベンのことを心から愛しているから、ベンを救ってあげたいしベンを笑顔にしてあげたい。その想いはずっと持っていたんだと思います。
でもロボットなんかにベンの笑顔を取られた…とか、ちょっと嫉妬みたいなものも混じってたんじゃないですかね。分からんけど。ベンを愛しているからこそ、自分にできないことを他の存在が簡単に成し遂げてしまったことにも悔しさはあるだろうし、それがあんなロボットであればより一層その想いは強いでしょうね。しかも傷つくと分かっていながら強い一言を言えば、「大声出すなよ!タングが怖がってる…」なんてロボットを引き合いに出されて言われちゃうし。いやーーー寂しいよなぁ…。
なんか、改めて1幕序盤のミナミーって不憫すぎて心が痛みました。結婚生活何年目かは分からんけど、長年連れ添った妻よりも、突然現れたロボットに夫を取られちゃうんだもんなー。ベンにはそんなものにうつつを抜かさないで前を向いてほしいのに。ベンをたくさん責めたい気持ちはあるだろうけど、それを「自分が嫌いになりそう」の一言で表現するのも本当に切ないですね。岡村さん、どういう気持ちでエイミーの感情を演じているのか詳しくは分からないですけど、表面上のものだけでなく奥深い部分もしっかり汲み取ってお芝居に反映させているんじゃないかなって思いました。ミナミーから感じられる寂しさって、多分そういうバックボーンがしっかりあるからこそなんだと思います。
それにしたって本当に不憫。でもそこまでされてでもベンを嫌いになれないって、相当ベンにべた惚れなんですよね。可愛い。家を出て行ってからもベンのことが気になって仕方ないのがちゃーんと伝わってくるミナミーは本当に可愛いです。
それで今回ハッとなったのが「地上の星雲」のシーン。エイミーは下手奥にいるのですがそのときに身に着けているのが渡り鳥のブローチ。照明の関係で渡り鳥のブローチがちょっと光ったように見えて、なんかそれがまるでエイミーの決心を表しているように思えました。
渡り鳥ってベンがエイミーと初めて会ったシーンの会話の中で出したワードです。「キョクアジサシって知ってる?渡り鳥」と。渡り鳥を例に出しながら、エイミーにも「君にも見えるよ。どんな逆境からも君を救い出して望む場所に行ける、誰にも穢されない翼!」って言うんですよ。それを受けてエイミーはベンに惹かれていきます。だから、渡り鳥ってエイミーにとってはとても重要なアイテムで、ベンと出会ったあの日のことを思い出させてくれる存在なのかなと思っています。ベンとの大切な思い出。
そんなアイテムをかたどったブローチをつけているエイミーは、今もベンのことがきっと好きなんだろうなっていうのが伝わってきます。そして「地上の星雲」という決意のナンバーでそれを観に着けていて、照明にあたってキラキラとブローチが光っているのを観て、エイミーも何かを決意したんだなっていうのが凄く感じられました。
まるで渡り鳥が、ベンとのこれからやロジャーとの関係に悩んでいるエイミーを望む場所へ導いてくれているみたいでした。エイミーの望む場所こそ、「ベンとの未来」だと思います。だからこのとき、エイミーはロジャーと別れる決心をしてベンの元へ戻ろうと心に誓ったのかなぁ…って思いました。だからちゃんとあのとき放ったベンのあの言葉は生きていたし、ちゃんと渡り鳥がエイミーを救ってくれたんでしょうね。
歌い終えた岡村さんも、なんか真っ直ぐな瞳をしていたんですよ。あぁ、決めたんだなぁ…っていうのが伝わってきました。もしここまで考えられてエイミーにあの渡り鳥のブローチを身に着けさせたなら天才すぎるし、「地上の星雲」でエイミーを登場させたのはマジで神だと思います。凄いこだわりですよね、マジで凄いです。
そしてそういうディテールのこだわりを踏まえてもちゃんとエイミーとして説得力のあるお芝居をする岡村美南さんはやっぱりさすがです。ベンを嫌いになりたくないからこそ離れてしまって、ベンが忘れられないからこそ他の人と付き合おうとして、ベンが好きだからこそ彼に想いを告げようと戻ってくる。どれも一貫しているので、ブレが一切なくて本当にエイミーの可愛らしさが感じられました。あれだけ強かだったのに最後には泣き虫になっちゃうのも可愛いし、あーもう全部可愛いね…。
ちなみに今回は離婚届はちゃんと破っていました(笑)
そんな感じですかねー。新発見があったとかいつもと違うお芝居をしていたとか、そういう瞬間はあまりありませんでしたが、改めてエイミーってどういう女性なのかなっていうのをベンを通して再認識できた観劇になりました。あんなに仕事もできるし美人だし自立しているのに、あんなダメダメなベンが大好きっていうギャップがな…可愛いんだよ、マジで。
今でこそ、エイミーという役は岡村美南さんにドンピシャにハマったなと思います。ここまで岡村さんにエイミーがしっくり来ると思っていなかったので、マジで観るたびにビックリしていますし、今回も本当にすっごく良かったです。めっちゃ良かったです。もうそれしか言えない。
なんだかんだね、悲しい結末で終わる役もいくつか観てきたからあんな幸せそうなラストを迎えられるのを観ると「今日も贔屓が幸せになれた…」って嬉しくなっちゃいます。岡村さんもこの作品にかける思いは相当強かったみたいなので、毎日演じられて幸せなんだろうなぁ…っていうのが伝わってきて私も幸せでした。すっごく幸せをおすそ分けしてもらえました。観られて良かったです。今回も舞台に立ってくださり、本当にありがとうございました!
ブライオニー:町真理子
まちまりさんブライ、観れば観るほど好きになってしまうんですがどうしましょ…。初演キャストの加藤あゆ美さん並みに好きになってきているし、まちまりさんブライがマジでかっこよすぎて頼りがいがあって面白くて…好きにならないわけがないです。ベンの姉としてもエイミーの親友としてもデイブの妻としても最高すぎるくらいの性格と人柄なんですよねー。たまらんです…。
特に好きなのがエイミーに「新しい恋しなさいよ!」って言うときのあのシーンのやりとりなのですが、日によっておちゃらけるように言ったり真剣な顔つきでアドバイスするみたいに言ったり、と色んなパターンで言ってくれるんです。ちなみに今回は後者のパターンで、真剣に親身になってアドバイスしてくれていました。
まちまりさんブライはベンのこともエイミーのことも、まるで自分のことのように真剣に考えてくれる優しいお姉さんです。他人事ではなく、エイミーのことも家族のように接してくれて心配してくれます。人の気持ちが分かる人なんだなぁ…って思いました。
考えてみればブライオニーもベンと同じく両親を亡くしているわけですから、誰かを失う気持ちは痛いほど理解できるんですよね。泣くだけ泣いて前を向いている、そうベンは言いましたけど、ちゃんと前を向いて自分の人生を歩めているブライオニーはきっとエイミーにとっても憧れの存在なんだと思います。
(確か原作ではブライオニーとデイブって色々あって離婚しちゃうんですけどね…)
でも舞台版のブライオニーとデイブ夫妻は本当に仲睦まじくて、まちまりさんブライと長手さんデイブの掛け合いもマジで面白いんですよね。最初はちょっと年齢差あるかなぁ…って思っていましたが、今やそんなことはまったく感じさせません。というかデイブといるときのまちまりさんブライは一気に貫禄がつくので凄く釣り合いの取れた夫婦にしか見えないから不思議。
フォロワーさんに教えてもらって初めて気づいたのですが、ガーデンパーティーでベンとエイミーが色々喋っている間、後ろのほうでシャンパンやトレーを持っていて両手が塞がっているデイブにブライオニーがあーんをしてあげるみたいなやりとりをしていたんですよ。今回は自分が飲んでいたシャンパングラスをデイブの元へ持っていって飲ませてあげていましたし、そのあとにクラッカーみたいなもの?をあーんして口に入れてあげていました。可愛い。ただひたすらに可愛い。
そりゃガーデンパーティーのシーンは今までずっとベンとエイミーしか観ていませんでしたから、後ろのほうでそんなことやっていたのかーと発見ばかりでした。でもここのまちまりさんブライも凄く素敵で、ベンとエイミーが仲良さそうにしているのを遠目から眺めては、ベンがしくじるとあちゃーみたいな顔してデイブにフォロー入れさせようとしたりするんですよね。
そうやって弟と親友が何かしらの運命を感じて繋がっていくのを、遠目から見守るときに凄く優しい眼差しを向けていて。そういやここのシーン、あゆ美さんもママみたいな表情していたなぁ…というのを思い出しました。まちまりさんはママというにはちょっと若いですけど、お姉さんとして2人の幸せを心から願っているようで、凄く素敵でした。
そんな2人をずっと見てきているからこそ、エイミーに対しても親身になってくれる部分があるだろうし、直接は描かれていないですがベンがブライオニーに電話したときにもきっとエイミーのことを何かしら話していたんじゃないかなぁ…って思います。エイミー曰く「お節介」ですから(笑)
そういったところも含めて、本当に素敵なブライオニーだなぁ…と改めて感じました。観ているこちらが色々と想像を掻き立てられるような、そんな奥の深いお芝居でたくさん魅了されました。ブライオニーも基本的には下手寄りにいることが多いので、たっぷり堪能できて嬉しかったです!
NEXT>>展示会のレポです!
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