2021年3月14日マチネ 劇団四季『マンマ・ミーア!』@京都




マンマ・ミーア!
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キャストの感想

キャストの感想を書いていきます。

ドナ・シェリダン:岡村美南

最後ってこともあってなのか、すっごく元気いっぱいで気合いが入っているのが伝わってきました(笑)むしろ力みすぎだよってくらい気合い入っていて、とても可愛かったです。コンディションも抜群でしたし、これぞ岡村美南さんのドナとしての集大成だなって感じでした。デビューのときからは考えられないくらい、しっかりと骨の髄までドナ・シェリダンでした。

マネマネ。冒頭、特に「いつか金持ちの男を捕まえて」の「男」の部分の歌い方がすっごく気合い入ってて、声の響き方と歌い方が全然違いました。ビブラートというか声の震わせ方?が凄く細かくなって、かっこよさに磨きがかかっていたんです。そのイキイキした歌い方から、ドナがいかに金持ちの暮らしに憧れを抱いていて、このナンバーの中で金持ちになる自分の姿を想像してワクワクしているのかが伝わってきました。ただかっこよく歌っているだけじゃなくて、金持ちの暮らしへの憧れをしっかり歌声と歌い方で表現しているのがとても良かったです。そして顔がイイ。正面から観るマネマネはマジで顔が良すぎて死にそうでした。顔がイイ贔屓を持つと大変です(笑)

また、マネマネのラストで「はぁ…」とため息をつく瞬間であったり、マネマネ前の「宝船が入ったら寝て暮らすわよ」の台詞の言い方であったり、今の暮らしに疲れている感じが出ているのも凄く良かったです。ドナの苦労が1幕で感じられれば感じられるほど、2幕のドナのお芝居に活きてくるので、ちゃんと全編を通してストーリー性が感じられるお芝居をされるようになったなぁ…と思いました。デビューから今まで公演を重ねながら細かくお芝居を詰めていったんだなということが感じられて、とても感慨深かったです。

そして今回のママミアでの「あなたー!」はめっちゃ気合い入った言い方で笑いました(笑)サムへの怨念と怒りと驚きが感じられましたし、芝さんサム相手だからなのか凄く言い方も強いし声も張り上げるしで、マジで毎回面白かったですけど今回は今までの中でもベストでした(笑)お芝居もどんどんコミカルになっていって、本当に色んな魅力が詰まっていて良かったです。

あと、芝さんサムと組むことになってDQ前の「大人になったのよ」という岡村さんドナの台詞も凄く意識するようになりました。ドナって昔は大人になりたくなかったと思うんです。一生楽しく遊んで生きていたいと思っていた人間な気がするんですけど、多分芝さんサムと付き合っていたときは少しでも彼に近づきたくて大人になりたいと感じていた瞬間もあったはずなんです。だけどいざ自分が大人になってみたら憧れていた大人の世界はやっぱり程遠くて、結局自分はまだまだ子供で、大人になりたくないまま未熟な大人になってしまった…と落胆しているかのような言い方に聞こえて凄く好きでした。なりたくてなったわけじゃないのに…みたいな、ちょっと拗ねてる感じも可愛くて、そういうところが子供っぽさ全開で大好きです。

DQも子犬みたいに「うううう」って泣き声あげるし、ターニャをチラ見してぷいってしたあとにダンッてベッドに体を叩きつけるしで行動がどれも子供みたいで本当に可愛すぎました。今回の「その気にさせた男の子」は客席を指差すパターンでしたが、以前は下手サイド最前あたりをターゲットにしてたのに京都に来てからは下手サイド中段あたりを見るようになったのも変化の1つです。以前のパターンは確実に誰か1人に対してって感じだったのでガチ恋不可避爆レスでしたけど、今回とかは不特定多数に向けてって感じになったのである意味健全な客席いじりになったんじゃないかな(笑)私的にもこのほうが嫉妬しないで済むので安心です(笑)

ちなみに今回のスパトゥルは、見納めかもしれないという気持ちとあまりにも岡村さんドナがキラキラ輝いてて楽しそうに歌っている姿が眩しすぎて、気づいたら泣いてました。まさか本当に見納めになるとは…って感じですけど、「凄くかっこいいママ」の姿をソフィと同じような気持ちで見届けられて本当に幸せでした。

2幕。One Of UsからS・O・Sの流れは、芝さんサムと組んだことで凄くドナの寂しさが色濃く出るようになって良かったです。これまでずっと観てきてどうしてドナはサムと一緒にいて寂しさや孤独を感じていたんだろうっていうのがどうしても上手く理解できなかったんです。でも芝さんサムが相手になったら一気に岡村さんドナの若さが露呈して、埋められない年齢差や大人と子供の住む世界は違うことを思い知らされてきっと寂しさを抱いていたんだろうなぁ…というのが見えてくるようになりました。

One Of Usの歌詞にも出てくるように芝さんサムって「気楽な人」なんだと思います。だから岡村さんドナが何に悩んでいたのかも気付いていなかっただろうし、良かれと思ってやっていたことが岡村さんドナを傷つけていたのかもしれません。そういう2人のすれ違いが、この2曲から感じられるようになりました。岡村さん自身が歌い方を変えてきたというわけではありませんが、組み合わせの違いでここまでナンバーの解釈が変わったのは我ながら大きな発見でしたし、岡村さんドナの寂しそうな表情が本当にグッと来るシーンで、さらに大好きになりました。

Slipping。岡村さんドナの集大成でした。今回観ていて改めてソフィに「ママが着せてくれる?」と言われたときの岡村さんドナの表情が大好きだと実感しました。あそこ、本当に岡村さんの表情のお芝居が凄く細かくて、ドナの感情の変化がしっかりと伝わってくるんですよね。母の無償の愛を体現しているみたいで、ドナの温かさや優しさが感じられました。不器用で素直じゃないけどソフィへの愛情が伝わってきましたし、それが若ママのドナならではの愛情表現だと思いましたし、岡村美南さんドナらしいなって思いました。

Slippingも芝さんサムが入ったことでまた印象が大きく変わって、岡村さんドナの苦労が色濃く出るようになったからこそ、ドナが母親として未熟だったことに対して後悔を抱いていることや、こんな些細な空間で過ごす娘との時間に幸せを見出していることへの説得力が増したんです。ドナが未熟で質素であればあるほど、Slippingはより深みを増すと思っています。だから、今回のSlippingは本当に岡村さんドナの母親としての側面が物凄く光っていました。ソフィの言葉に笑みを浮かべて、こんなどうしようもない自分を母親として慕ってくれることの嬉しさを実感しているようで、こんな自分を「誇りに思ってる」なんて言ってくれて。嬉しかったに違いないと思います。

芝さんサム相手に自分の未熟さをずっと感じ続けていて、埋められない寂しさをどうにかして紛らわせていて、そんな当時のドナがお腹の中に授かったのがソフィです。まだまだ子供な自分が、たった1人の娘のために大人にならなきゃいけなくて母親という役目を全うしなくてはいけなくて、とても苦しかったと思います。頼れる人もいない中で必死に子育てをして20歳まで育て上げて、ようやくこの日娘の旅立ちを見送ることになって…。この20年間、苦しいこともたくさんあったと思うんですけど、ドナにとってソフィは生きる意味だったと思うし、自分の命よりも大切な存在だったと思うんです。そんな可愛い可愛い娘に「誇りに思ってるわ、ママを」と言われることがどれだけ嬉しいことか、正直子供を産んだことがない私には計り知れないですが、ドナがようやく報われた瞬間なんだろうなーっていうのを岡村美南さんの表情から感じられました。

多分育児って正解が見えない気がするんですよね。そしてゴールも見えない。これが果たして正しかったのかなんてきっと分からないでしょうし、ドナも自分なりに子育てしてはきたものの、ソフィとの約束を守ってあげられなかったり満足に母親の役目を全うできなかったりで後悔をたくさんしていました。だけど、ソフィからのたった一言でドナのすべてが報われるっていうのが本当に美しくて、今回「誇りに思ってるわ、ママを」と言われたあとの岡村さんドナが、部屋を出ていくソフィを見つめながら口元を震わせていて笑うことすらできていなかったんです。嬉しさと同時に一気に寂しさも込み上げてきたからこそのあの表情だったんだろうなって思いました。とてもリアルな表情で、それが演技ではなく岡村さん自身の中から自然と出てきたものなんだろうなと思うと、凄く感慨深かったです。ちゃんと、ちゃんとお母さんになったね…って嬉しくなりました。

もう今回はSlippingでも泣きましたね…。本当に良かったです。正直8月5日のデビューのときはSlipping聴いても何も感じなかったし、伝わってこなかったんですよ…。だけど、今回のSlippingは歌声も表情も佇まいもすべてが本当にソフィへの愛情で溢れていて、ちゃんとお母さんしていました。岡村さんなりに母親・ドナとして向き合って、無理なく自分らしく演じられていたのが本当に素敵でした。こうして最後のSlippingを見届けられて嬉しかったです。

そしてThe Winner。最後の最後で、岡村美南さんドナが歌い方を変えてきたところがあってもう私やられました。The WinnerもSlippingと同じくデビュー時には何も伝わってこなかったし感じられなかったんです。とりあえずドナになりきって歌っている感じが否めませんでした。それが、こうして回数重ねていって最後の最後でドナの想いが溢れすぎて歌に滲み出るようになったっていうその進化が嬉しくてたまらなかったです。ドナが憑依しすぎて、岡村さんのサムへの想いがビシバシ伝わってきて胸が苦しくなりそうでした。

岡村美南さんドナのThe Winnerの感情の変化としては、基本的に怒り⇒嘲り⇒悲しみ⇒悔しさ⇒怒りです。その変化の中で一貫してずっと感じられる感情があって、それが「寂しさ」でした。岡村さんドナの芝さんサムに向ける感情には必ず寂しさが含まれていて、そこにプラスして怒りや悔しさといった感情が増大していくんです。岡村さんドナってキッと睨む表情するんですけど、なんかどこか寂しそうなんですよね。嘲り笑う顔をするときもなんか寂しそうで、その寂しさを別の感情で必死に隠している印象がありました。だからすっごく観ていて切なくなりました。どれだけ、サムと付き合っていたときに寂しさを感じていたんだろう…って。

前回のレポでも書きましたが、「バカだった愛を信じ夢を見たこの私」の直前にちょっと視線を下に向けて泣きそうな顔をしてからすぐに笑みを浮かべて自分を嘲り出すんです。そうやって自嘲して自分自身を傷つけていく姿がまた切なくて、そうすることでしか正当化できなくて、怒りをぶつけることができないんだなって思いました。要は甘えるのが下手なんだと思うし、中途半端に子供ではないし大人にもなりきれていないんだと思います。それがまた岡村さんドナらしいんですよねぇ…。

で、歌い方を変えてきたっていうのが「他の人を愛したとき私のこと思い出した?」の部分です。「思い出した?」のところはいつも語尾は上がらずにメロディに乗せる感じで歌っていたんですけど、今回は最後の「た?」が上がって、メロディからも外れて、本当に語り掛けているかのようでした。それが私が57回観てきた中で初めて聞いた歌い方で、凄くビックリしました。なんていうか、意図的にそう歌おうとして歌ったっていうより、サムへの想いが溢れすぎて思わずそういう歌い方になってしまったような印象です。だからこそ凄く良かったんです…。一生懸命自分の気持ちを抑えて強がりながらサムと向き合っていたドナが、ここでポロっと自分の想いを溢れさせてしまったみたいで、とてもグッと来ました。岡村さんドナの歌い方もすっごく弱々しくて、寂しさがとにかく伝わってくる声色でした。いやもう、ここ聞いたときに思わず鳥肌が立っちゃいましたね(笑)

ここからはもう自分の本心を隠すことはしないで感情をすべて歌に乗せるようになって、サムにすべてをぶつけるんです。個人的に、今回の「分かっているの」の「の」の伸びの(のが多い)最後で声が上擦った感じがめちゃくちゃ好きでした。ちょうどここってサムが振り向いてドナに迫ろうとして、ドナが両手を突き出して「来ないで!」ってしながら歌い切る場面です。声が上擦る感じがドナの怯えだったり力尽きる感じだったりを感じさせて、サムとちゃんと向き合って話すには感情の整理がし切れいていない感じも伝わってきてとても良かったです。

また、ここで俯いて音楽が一瞬止んでから顔を上げて「話すこと何もないわ」と再び歌うまでの間がとても好きです。岡村美南さんって間合いが本当に絶妙な方で、初めて舞台で観たときから間の取り方が上手な人だなって思っていました。あれから7年経った今でもそれは変わらなくて、本当にピンポイントでドンピシャのタイミングで歌い出してくれるんですよねぇ。それがたまらなく好きでした。ここの間ってとても大事で、ドナがどんな想いで顔を上げたのかとか、サムと向き合おうと決めたのかとか、そういうのがここの間に全部詰まっていると思っています。早すぎてもダメだし遅すぎてもダメなんです。岡村さんドナはその間が絶妙で、3呼吸置いたくらいから歌い始めるんですけど、疲れ切った顔をしているけど同時にさっぱりした顔をしているんです。その中に、さっきまでずっとあった「寂しさ」は消えているんです。それが凄いなって思いました。

前を向くためにもサムへの想いを断ち切ろうとしたのかもしれません。だからもう寂しさを見せることはなくて、ラストスパートはサムに今後どうしてほしいのか、そしてそんなサムに対して自分はどう感じていたのかをしっかりと伝えて、サムへの想いを昇華したんだと思います。前にも最後のロングトーンを歌い終えたあとの腕を振り下ろすポーズはサムへの想いをここですべて昇華させたということを意味していると書きましたが、今回もまさにそれを感じました。綺麗さっぱりとまではいかないでしょうけど、21年間サムに抱いていた想い、そして彼と別れたあとに授かった大切な我が子への想いをしっかり彼に伝えたことで、ドナはようやく前を向けたんだろうなって思えました。

だからとても清々しかったです。本当にあらゆることが岡村美南さんドナのThe Winnerから伝わってくるようになって、ドナがどういう気持ちでサムと向き合っているのかとか、色んなものが見えてくるようになりました。最後の最後までロングトーンは力強くて、ひたすらにドナの21年間の想いが伝わってくるようで、聞いていてとても感動しました。ただただ、素晴らしかったです。こんなにも素晴らしいThe Winnerを最後に聴くことができて幸せでした。岡村美南さんドナの集大成です、マジで。本当に素晴らしかった…!

もう結婚式のシーンとかはひたすら可愛かったですし、芝さんサムにお姫様抱っこされている岡村美南さんドナがあまりにも可愛すぎて終始ニヤニヤしていました。サムにプロポーズされてからのドナ、急に乙女になっちゃうの本当にずるいですよねぇ…。それこそ岡村さんドナって1幕からずっとズボラでかっこいい女性像を演じていただけに、ここでの乙女らしいギャップがマジでたまらないです。こんなふにゃっとしちゃうのがサムの前では子供っぽくなっちゃう感じがして、それもキュンとなりました。こうして無事に贔屓の結婚式を最後まで見届けることができて本当に幸せでした…。やっぱりハッピーエンドって最高ですね。

ライブのDQではラスト大サビの「踊って歌えば」の部分でステージを360度見渡して、増山さんや恒川さん、後ろにいるサンボの皆さん、そしてまりえちゃんを1人1人指差すみたいにしていたのが本当にかっこよかったです。「みんな最高だよ!」っていうのが岡村さんのその姿から凄く伝わってきて、本当にドナとして過ごした時間が楽しかったんだろうなぁ…って思いました。最高にキラキラ輝いていてかっこよかったです。凄く良い笑顔で踊っていました。最後の瞬間まで、世界一最高のダンシングクイーンでした。

すいません、いつもながら岡村美南さんの感想だけでかなり長くなってしまいました。最後ということもあって書きたいことはほぼ詰め込んだ形になります。もちろんまだまだ書き足りないし、書こうと思えばここからさらに10,000文字くらい書ける気はします(笑)それくらいたくさん観てきましたし、脳裏にしっかり焼き付いているんです。毎回新たな一面が見えてきて、ドナとしての色んな生き方を見せてもらいました。そのたびに岡村さんの魅力を実感できて、すっごく楽しかったです。岡村美南さんがドナ・シェリダンを演じてくださって、本当に良かったなーって思っています。

デビューから最後の瞬間までしっかり見届けられたこと、ファンとしても幸せでした。そしてカテコで本当に幸せそうな顔でお辞儀している岡村美南さんを観られて嬉しかったです。多分誰よりもご本人が一番舞台に立てたことへの幸せを噛み締めているだろうし、観に来てくれたお客さんに対して感謝の気持ちを伝えているんだろうなって思います。本当に舞台が大好きなんだなーっていうのが伝わってきました。こんなコロナ禍ではありましたけど、このご時世で観られたのがドナ・シェリダンという役で本当に良かったです。カンパニーの中心として0番に立って歌って踊っている姿は最高でした。本当にかっこよかったです。素敵でした。

ということで、京都開幕から今まで連投本当にお疲れ様でした。最後の最後で最高のドナのお芝居が観られて嬉しかったです。やっぱり岡村美南さんは世界一自慢の贔屓です!最高に幸せな時間を、ありがとうございました!

ソフィ・シェリダン:若奈まりえ

まりえちゃんソフィ今回も凄く良かったですけど、1幕の最初のほうはちょっと音程的に上がりきらないところがあってやや心配でした。ハニハニのラストとかThank Youのラストとかは若干音程がずれちゃっている感じがあって大丈夫かなぁ…と心配になりましたが、でもレイオール以降はいつもの調子に戻ったので良かったです。

そして、まりえちゃんソフィのお芝居を観ていると素直ではあるけど同時に気難しい子でもあるなと思いました。思春期真っ盛りで好奇心に溢れていて元気いっぱいな一面もあるけど、自分の生き方についても真剣に考えていて、ちょうど大人と子供の狭間のような女の子らしさを感じられるソフィ像を演じていた印象です。だから誰が本当の父親なのかを知りたくて仕方ないし、嘘や誤魔化しで自分を子供扱いしないでほしいっていう強い意志が伝わってきました。私をバカにしないでって訴えているみたいで、それが芝さんサムと付き合っていたときの当時の岡村さんドナを彷彿とさせるわけです。自分を子供扱いしないでっていうのが。だからそれもあって、岡村さんドナ×まりえちゃんソフィ×芝さんサムの組み合わせってめちゃくちゃ説得力あるしバランス良いんですよね…。最高でした。

特にThank Youやギミギミ、Name of the Gameなどダディーズと絡むときのまりえちゃんソフィのお芝居は素晴らしかったです。答えにたどり着けなくてもどかしさを抱きつつも、真っ直ぐな表情でダディーズを見て核心に迫ろうとする姿があまりにも健気でした。中でもギミギミでサムに言う「ママとはそれだけじゃない…でしょ?」の言い方が凄く好きで、「でしょ?」が語尾上げて尋ねる感じではなくて、絶対そうなんだよねって確信しているかのような念押しのニュアンスで良かったです。ここから一気にまりえちゃんソフィのお芝居が真剣モードに入ってシリアスで切ない雰囲気になっていくので、限られた時間の中で焦りと不安とわずかな期待を抱きながらも絶対にパパを見つけ出す!っていう強い意志を感じました。

だからこそ、ビルに年を聞かれて「20歳!」と答えたときの声が嬉しさと驚きと不安でいっぱいなのがより心にグッと来ました。ギミギミとName of the Gameでのビルとの掛け合いは緊迫感溢れていて、真実から目を逸らさないでということをビルに一生懸命訴えかけていた姿が印象深かったです。ラストのほうでビルが「わかってくれる?」と歌ってソフィを説得しようとするのですが、まりえちゃんソフィが首を横に振りながら真っ直ぐな目で「できることならば知りたい」と続けるのが、まりえちゃんソフィの本気度を感じられて好きなポイントでした。

それからビルが自分が父親だと思うと頷いてくれたときに、ちょっとぽかんとした表情のまりえちゃんソフィも好きでした。ここまで核心に迫っておきながら、いざ答えが提示されたらまだ実感が湧かなくて頭で理解しきれてなくて素直に喜べていない感じが凄く伝わってきたんです。「これからどうなるかしら…」も、パパを見つけることがゴールになっていたせいで頭真っ白になっていたからこそどうしたらいいんだろう…っていうのが伝わってくる言い方で、ここのまりえちゃんソフィのお芝居1つ1つが凄く細かくて、感情表現がとても緻密で丁寧で見応え抜群でした。

もちろん2幕のお芝居も良くて、まりえちゃんソフィはシリアスなお芝居が本当に上手だなと再認識しました。以前からお伝えしているように、まりえちゃんソフィはドナのことを尊敬はしているけどママのようにはなりたくないと反面教師にもしているので、その尖った部分が特に強調されます。2幕冒頭で「そりゃそうよ!ママは男なんかいなくたって平気だったものね!」と噛み付くお芝居も一気にまくし立てて積もり積もった不満が爆発した感じが出て凄く良かったです。ソフィからも噛み付かれて元カレたちにも悩まされて、ドナがどんどん八方塞がりで苦悩していく姿がより顕著になるので、まりえちゃんソフィの本気の噛み付く演技はとてもグサグサと心に刺さりました。

なのでSlippingでの岡村さんドナとの掛け合いは2人の溝の大きさを埋めるくらい切なくて温かいものを感じます。まりえちゃんソフィがドナと過ごす時間の中で色んなことを感じて涙を流して、ようやく大切なことに気付けるのが本当にグッと来ます。特に今回は岡村さんドナと組むのが最後ということもあってか、より一層「誇りに思ってるわ、ママを」も噛み締めるような言い方に聞こえました。岡村さんもきっと嬉しかっただろうなって思います。

まりえちゃんソフィは本当に凄く思春期で悩んでいる等身大の女の子で、それが凄くお芝居にも物語にも良い味を出していて非常に良かったです。深みのあるお芝居をするからこそ、ソフィの苦悩もドナの苦悩も濃く描かれるようになって2幕の重厚感が増して、個人的に大好きでした。こうして岡村さんドナにとって最後となる娘がまりえちゃんソフィで本当に良かったです。たっぷりとママを愛してくれてありがとうございました!

そしてこの5公演、全部ライブでソッコー立った私を見つけて指差してくれてありがとうございました(笑)とても嬉しかったです!

ターニャ:恒川愛

やっぱり恒川さんターニャは最高でした…。今回も本当にひたすら面白くて、なんかもう恒川さんターニャって存在感はあるんですけど意外とドナ&ザ・ダイナモスでいるときって役立たずなのが可愛くて面白くて大好きなんです(笑)高倉恵美さんターニャのようにドナの恋愛話を聞いて楽しんでいる感じではなくて、一生懸命話を聞いてあげようとはしているのに全然理解できていなくて何もできていない感じが本当にポンコツすぎて、それがとても愛しかったです。

だから観ていけば観ていくほど「岡村美南さんドナ&増山美保さんロージー~恒川愛さんターニャを添えて~」っていう構図が凄くしっくり来てしまって我ながらじわじわと来てしまいました(笑)なんかもう本当に恒川さんターニャは添えるだけみたいな感じで、全然ドナの役に立っていないのがあまりにも愛しすぎました。「父親のことよ」とドナが言ったのに対して「…誰の?」と本気で分かっていない感じで言っていたり、ドナが「あいつらには台無しにされたくない!」って怒鳴り始めたのを「そうよね!そうそう!」って感じでいかにも分かった風に相槌打ったり、そういうところが凄くポンコツっぷり全開で最高でした。

そして今回の「原野を駆け回る野生児ってとこね」はきゃっきゃしながら増山さんロージーに抱き着いていて、増山さんロージーが凄く困っていて面白かったです。割と恒川さんターニャって乙女で可愛らしい一面が多くて、そういうところがとても年下感満載で可愛いんですよね。岡村さんドナに「私たちのドナはどうしちゃったの?」と声をかけながら隣に座るときに、脚をぶらぶらさせていたりもして、そういう仕草も本当に可愛いな―って思っていました。だからなんかやっぱり憎めないんです。それが増山さんロージーや岡村さんドナからも可愛がられてきた理由でもあるんだろうなとも感じました。凄くバランスの良いドナ&ザ・ダイナモスでした。

その一方でダズユアはマジでかっこよくて、男の子相手だと恒川さんターニャが本領を発揮するのがたまらなかったです。本当にドスの効かせ方が死ぬほどかっこよくて、個人的にめっちゃ痺れたのがラストの大サビの「遊んでやってもそりゃいいけど」の「あそ」の部分です。ちょうどここってエディがターニャに迫ってきて、ターニャがそれを振り払うんですね。そのときに恒川さんターニャが頭をグインッと回してガンつける感じで成田さんエディを見て歌い出すんですけど、その勢いもあってか「あそ」の部分で一気にドスを効かせて挑発する感じで歌うんです…。もうそれがめちゃくちゃかっこよすぎて痺れました。

坊やちゃん早くおいで!遊んでやるから!って強気に攻めてきて、それでいて男の子たちの誘いを交わしながらも自分も結局楽しくなって笑顔になっているのがマジでかっこいいしずるいし、恒川さんターニャに一気に惚れてしまいます。ダズユアはどこを切り取っても最高にかっこいいし色っぽいしで大好きだったんですけど、これまでの歴代ターニャにはない新たな魅力を生み出した歌い方が本当に素敵でした。ポンコツで可愛らしくて面白い一面がありつつも、色っぽさとかっこよさと力強さで打ち負かしてくる恒川さんターニャが本当に大好きでした。こうしてたっぷり恒川さんターニャのお芝居や歌を堪能できて嬉しかったです!

ロージー:増山美保

岡村美南さんドナとほとんどずっと一緒に出演されていた増山さんロージー。初めて横浜で観たときに元気が有り余りまくりの小学生男子みたいなロージーだなぁ…と衝撃を受けたのもすでに懐かしいくらい、私の中でのロージーの印象は完全に増山さんのイメージで塗り替えられました(笑)

笑いに貪欲でどうしたら面白くなるかをずっと追求し続けてお芝居を変えてきた方だったので、今の増山さんロージーは本当にお芝居も細かいし面白いしチャーミングさもあるし、魅力たっぷりになっています。恒川さんターニャとのバランスも凄く良くて、恒川さんターニャがポンコツなので増山さんロージーのしっかりした部分が強調されて意外と頼りになる一面もあって、上手にチグハグさを出しながらドナを支えていた印象がありました。

恒川さんターニャと組むようになってから、ドナ部屋のシーンでのベッド争奪戦でターニャに服を掴まれたときにかなりガンをつけるようになってました。恒川さんターニャがとても身長高いので、一生懸命見上げながらガンつけるちっちゃい増山さんロージーが可愛かったです(笑)

そして改めて増山さんロージーの魅力が大爆発するのがTake A Chance~だと思いました。その前のビルとのやりとりでも増山さんロージーの姉御っぷり?がしっかり垣間見えて、落ち着きがない坂本さんビルを一生懸命窘めているのがとても面白かったです。「僕はここにいていいかな…」と坂本さんビルが続けるのを聞いて「今度は何なの!?」と増山さんロージーが言うんですけど、もういい加減にしてよ~とでも言うような感じで駄々をこねる子供に呆れているみたいな言い方をするのが面白くて、京都に来てからはこの台詞で笑いも起きるようになりました。

そうやって姉御肌な一面を見せつつ、スイッチが入ったら一気に肉食の目つきに変わってしまうのも凄く良かったです。ひたすらビルから目を逸らすことなく、獣のように大胆に、でも小動物みたいにちょこまかと追いかけ回るのがとにかく面白くて何度観ても笑えました。本当に増山さんロージーの小動物感とファンキーっぷりは観れば観るほどクセになりましたし、凄く素敵なキャスティングだったなーと思います。開幕からずっと連投でしたが相変わらずとてもパワフルでたくさんの元気をもらえましたし、増山さんがいると凄く安心感もありました。岡村さんドナのラストも増山さんロージーがいてくれて本当に良かったです!

サム・カーマイケル:芝清道

お芝居が細かすぎてマジで目が足りなかったです。今回は特にファンキーっぷりが強調されていて、ママミアの最後に「フォー!ウワォ!」って大きな声で叫んでいたりもして、凄くパワフルなお芝居されていたのが印象的でした。私がこれまで阿久津陽一郎さんでサムを85回近く観てきたのもあって阿久津さんが自分の中のサムのイメージそのものだったんですけど、芝さんは阿久津さんサムのような落ち着きのある大人の男性っていうのとは凄くかけ離れた存在で、ひたすら元気でファンキーなおじさんって感じで本当に新鮮でした(笑)

でもだからこそドナと恋に落ちた理由が明確だし、昔からラブマシーンとして名を馳せるほどの男性だったんだろうなっていうのも凄く納得です。あの岡村さんドナが芝さんサムを忘れられないっていうのも凄く分かる気がします。それくらい芝さんサムはとても魅力的でインパクトがありました。21年経ってもその魅力が失われていないのが本当に凄いと思いました。そりゃドナも動揺しちゃうわって感じです(笑)

今回のThank You~はソフィからキーを受け取ったら慌てて上手側に向かって逃げようとして坂本さんビルに止められ、坂本さんビルの胸ポケットにキーを入れようとしてました(笑)でも阻止されて回れ右して飯村さんハリーに止められまた回れ右して坂本さんビルに止められ…という感じでした。この動揺っぷりが本当に可愛くて、いかにドナに会うのが怖くてたまらないかが伝わってきて良かったです。

そして個人的に凄く良いなと感じたのが、S・O・Sで床に叩きつけた設計図?を拾い上げるときの仕草でした。ちょうど拾い上げるときに歌うのが「もう一度だけチャンスが欲しい」という歌詞です。その想いが伝わってくるかのように、芝さんサムが拾い上げた設計図をグッと強く胸に引き寄せていました。それがこの5公演観劇の中で初めて観た仕草だったのでとても印象に深く残っていて、ドナへの強い想いが凄く感じられて良かったです。本当にこういうところ芝さんサムはお芝居細かくて好きでした。

あと、芝さんと言えば木曜日に観たときにマイクの音量が気になったんですけど、割と改善されたのかS・O・Sはしっかり聞こえるようになりました。もしかしたら声質的なものでBGMにかき消されやすくなってしまっただけなのかなぁ…とも思ったり。今回の芝さんの力強い声量で歌われるS・O・SやKnowingは本当に訴えかけてくるものがありましたし、岡村さんドナとの声の重なりも凄く良かったです。阿久津さんサムと岡村さんドナの声の重なりが本当に綺麗だったので芝さんの声質と岡村さんの声質的に相性どうかなぁ…という懸念はあったのですが、岡村さんの声質が多分誰にも合わせられるんだろうなと思いました。ちゃんとそれぞれの声が聞こえつつ、しっかりと声の一体感が感じられて凄く聴き応えのあるS・O・Sで感動しました。

マジで意外と岡村美南さんと芝清道さんって相性悪くないんですよね(笑)これは本当に贔屓目抜きで、岡村美南さんが物凄く万能というか、誰とでも合わせられる方なんだと思っています。だから芝さんサムとも良い化学反応を起こしたんだろうなって感じています。

少し飛んで結婚式。ドナにプロポーズするときの「21年間ずっと君を愛してきた」の言い方が凄く好きです。阿久津さんサムのように声を大にして言う感じではなくて、じっくりと静かに言い始めて実感を込めるように真剣な想いを伝えるのが芝さんサムのドナへの気持ちの強さを感じてキュンと来ました。そして今回のお姫様抱っこは変なことしたりせずにノーマルパターンでした(笑)心の中で岡村さんドナをお姫様抱っこして舞台上を駆け回ってくんねぇかなって密かに期待していたので残念(笑)でも相変わらずさっと軽々と抱き上げてしまうのがかっこよかったですし、下ろされたときに岡村さんドナが凄く恥ずかしそうな顔で芝さんサムを責めてるのが可愛かったので、本当に年の差サムドナは癒やしでした。

結局岡村さんと芝さんの組み合わせはたったの1週間しか実現しませんでしたが、マジで観られて良かったです。芝さんサムって本当にカンパニーのムードメーカーでしたし、周りの俳優さんにも良い影響を与えてくれる存在でした。何より芝さんサムは面白くて観ているだけで元気をもらえました。ドナにとっても、芝さんサムって一緒にいて楽しくて元気をもらえて、自分の知らない世界を見せてくれるような刺激的な男性だったんだろうなって思います。それくらい、凄く魅力的なキャスティングでした。

なので私もこの5公演でしっかり芝さんサムを堪能できて嬉しかったです。観れて良かったですし、芝さんサムを観たことで新たなマンマの楽しみ方ができて幸せでした。短い期間ではありましたが、岡村美南さんドナのことをたくさん笑わせてくださってお姫様抱っこしてくださってありがとうございました!

ハリー・ブライト:飯村和也

横浜のときは岡村さんドナと組んだのたったの1週間だけで、福岡には飯村さんが来なかったので、京都で約1ヶ月半岡村さんドナとの組み合わせで観ることができて嬉しかったです。飯村さんハリーはとても落ち着いていて誠実な印象があって、私の想像するハリーにピッタリのキャスティングでした。

でも芝さんサムが入ったことでなのか飯村さんハリーがちょっとだけファンキーになっていて、「あ、これ絶対芝さんの影響受けてる」と思いました(笑)基本的なお芝居の雰囲気はそこまで大きく変わっていないですが、部分的に芝さんに感化されてるー!と思う瞬間があったんです。

たとえば連れ合いのことについて話す「大きな家と高級車のある安定した生活だけじゃ満足しない意欲的な人間っているだろ?」という台詞で、今までは普通に振り向いて言うだけだったのに今週に入ってちょっと肩を前後に動かして体をフリフリする仕草が追加されていました。こういう一面が見えてくると、確かにかつてドナとハリーは波長があって恋に落ちたんだろうなぁ…っていうのが伝わってきて良かったです。

あとは「そうすれば従業員くらい雇えるだろ?」の台詞の言い方もちょっと攻めたノリノリな感じになっていて、飯村さんハリーも物静かそうに見えて結構ノリで生きてきた部分があったであろうことが感じられました。それが凄くこの作品にマッチしていて良いなと思ったポイントでした。

なので、今週に入ってからの飯村さんハリーの雰囲気がとても好きで、どうしてかつてドナと恋に落ちたのかの説得力が感じられるようになったのが個人的に凄く良かったです。ちゃんと2幕ではドナを想う優しい一面も垣間見えて、昔はドナにとっての王子様だったことの説得力もありました。Our Last Summerでの岡村さんドナとの甘ったるい雰囲気も本当に最高でした。甘ったるい雰囲気はちゃんとあるんだけど、でも今はドナへの未練はなくて別にいる家族を大切にしているのもしっかり伝わってくるんです。それが凄いなって思っていました。

ドナとの思い出は今でも大切な思い出、ドナは大切な人。でも今をしっかり生きているのが飯村さんハリーの魅力です。改めて、京都で飯村さんハリーをたっぷり観ることができて幸せでした。岡村さんドナとの相性も凄く良かったですし、いつか飯村さんハリーと岡村さんドナが結ばれるルートも観てみたいなと思いました!

ビル・オースティン:坂本剛

何だかんだで岡村さんが出演されている期間は坂本さんビルで観ることが多かったので、凄く馴染みのある俳優さんになりました。京都劇場は音響が本当に小さくて迫力に欠けるんですけど、坂本さんは地声の声量が凄いのもあってマイク通さなくても相当声届くんだろうなーって思うくらい声大きかったです(笑)それが逆にビルらしさもあって良かったし、豪快っぷりを感じさせました。

最初のほうこそ気になってしまっていた感情があまり感じられなかった台詞の言い方も、回数を重ねれば慣れてくるもんなんですよね(笑)坂本さんの普段の喋り方がわりとビルのお芝居にそのまま反映されている感じだったので、こういうものなんだろうなーっていうので自然に観られるようになりました。

で、京都に来てからというか今週になってからちょっとお芝居を変えてきたところがあって、それがTake A Chance~前のロージーとのやりとりです。ソフィからメモを受け取ったビルが言う「僕にはさっぱり分からない!僕は何なんだ!僕は結婚式に来てるんだ…」という台詞。以前は「僕は何なんだ!」は1つ前の「僕にはさっぱり分からない!」に続く感じで叫ぶように言っていたのですが、今週からは「僕は何なんだ…僕は結婚式に来てるんだ…」と後ろの台詞に続く感じのテンションで言っていました。このほうが確かにビルが混乱している感じが出て良いなと思います。もしかしたら芝さんあたりがアドバイスしてくれたのかもしれませんね。

とにかくビルはドナとの接点がほぼ作中で描かれていないのであまり岡村さんドナとの掛け合いを観れなくて寂しかったんですけど、増山さんロージーとの凸凹な絡みは本当に面白くて最高でした。背も高いしかっこいいし一見ワイルドそうだけど実は凄く優しそうだし、私がこれまで観てきたどのビルとも違うタイプで毎回楽しく拝見していました。何だかんだで今はもう坂本さんビルだと安心しますし、大好きなキャスティングです。開幕から今まで本当にお疲れ様でした!

>>次のページからは岡村美南さんのラストを締めくくったカテコレポです!

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