2022年6月5日マチネ 劇団四季『ノートルダムの鐘』@横浜




ノートルダムの鐘
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キャストの感想

キャストの感想です!

カジモド:寺元健一郎

火曜日ぶりの寺元さんカジモドは、週末ラスト公演ということもあってか全身全霊のお芝居をしていました。歌声はどれも力強く、歌うというよりもはや叫ぶような迫力がありました。カジモドの本気度が伝わってくる歌い方で、特にMOSは鳥肌が止まらなかったです。

何より今回は喉の調子も絶好調でブレもなくハイトーンもしっかり音を出していて圧巻の歌声でした。子犬のように可愛い見た目をしていながら、内に秘めたる強さとエネルギーを感じさせるギャップもあって良かったです。今回は「僕は強いから」という言葉に凄く説得力を感じられました。

あと、火曜日に観たときと変わった点としては自分の頭をバシバシ叩くようになったことかな。寺元さんってそういう仕草をやる印象がなかったんだけど、今回はたとえばTOTWの直前に言う「そんなのバカみたいだ」では両手で頭を抱えながらバシバシ叩いていました。そういった自傷行為を働くようになったことで、寺元さんカジモドもフロローの悪いしつけが体に染み込んでしまっているのが顕著になって、観ているのが苦しかったです。

だからといって岡村さんエスメのカジに対する態度が火曜日と大きく変わったということはなく、やはりこの前観た泰潤さんカジモドのときよりは多少大人向けな接し方に見えました。ただただその日の喋り方やトーンがそんな風なだけだったということかもしれません。

で、今回特筆したいのは2幕終盤のお芝居。何度も書いているようにMOSは本当に圧巻でした。ラストのロングトーンはしっかりと高音が上がり切りつつ、最後のほうは絶唱に近い形で叫んでいました。歌声から絶唱に変わる瞬間の凄まじさがえげつなかったです。感情が爆発しているのが伝わってきて、鳥肌が止まりませんでした。

それからエスメを救い出したときの「サンクチュアリー!!!聖域だー!!!」もひたすら喉をいじめまくるように叫んでいたのが印象的でした。とにかく今回の寺元さんカジモドは喉が死ぬんじゃないかと思うほどに叫んでいて、激アツでした。

で、一番ゾッとしたのがフロローを投げ飛ばすときの身体表現。火曜日に観たときも関節の曲がり方がヤバいっていうレポを記したのですが、今回はそれよりもさらにリアルな骨の折れ方が伝わってきました。「悪人は、罰を、受けるんだ!」と言いながら曲がった体を起こしてフロローに迫るじゃないですか。そのセリフを言いながら体を起こすとき、ギギギ…という音とボキッボキッ…という音が至るところから聞こえてきそうで、まさに全身の骨を折っているかのように見えました。正直ね、鳥肌立った…。

全身の骨を砕きまくって体を大きく見せたあと、フロローが逃げ出すと同時にカジの体はよろめくんです。骨が折れて自立するのも難しいような感じになっちゃって、そのへろっとした感じも凄く上手でした。それでもめげずにフロローを追いかけて、彼を投げ飛ばします。体中痛いだろうに、それ以上にフロローに対する憎しみの感情でいっぱいになっている寺元さんカジモドの表情を観て胸が締め付けられそうでした。

そして、エスメの亡骸にフィーバスが泣きついている様子を見て、カジモドは立ち上がって彼の元へ向かいます。そのときの寺元さんカジモドも、やはり関節が変な方向に曲がって体がよろよろしていて、もう骨と骨がかろうじてくっついているような動き方をしていました。文字通りボロボロになった寺元さんカジモドの身体表現が凄すぎて、涙なしには観られなかったです。

これだけの熱演で、最後振り返ったときに左の頬にちょっとだけ黒インク残っちゃってたのが可愛かったですが、終始素晴らしいお芝居をされていました。なんか一皮むけた感じがあります。凄く寺元さんカジモドが好きになれた観劇でした!

フロロー:野中万寿夫

今回がラスト出演となった万寿夫さんフロロー。やはり『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の栃木公演に向けての抜けかなと思いますが、多分抜けるだろうなーと思っていたのでしっかりと堪能できて良かったです。

相変わらず人間臭さのあるお芝居をされていて、同時に観ている側の闇を暴かれそうになりました。善と悪が地続きのような、要は表情を観てもどっちの顔を見せているのかが分からないような、そういう危うさが終始感じられて本当に怖かったです。パッと見何を考えているのか分からない人って怖くて近寄りがたいですよね。

でも今回もOut Thereの前はカジモドに対してすっごく優しい笑顔を見せていて、本当はこういう人なんだろうなぁ…って思いました。なんならもっとさかのぼってカジモドが生まれる前のフロローを思い返すと、ローブを脱いで歌う「フロローは優しい兄さん」の第一声は凄く柔らかい歌声だったなぁと。そうなんですよね、フロローは優しい兄さんなんですよ。

だからカジモドを引き取ってしまったときのビクビクと怯えるように街を歩く様子は凄く小心者に見えたし、ずっと道を踏み外さずに生きてきた彼は誰かに指を差されることが怖かったんだと思います。カジモドを投げ捨てようとしたときに、万寿夫さんフロローは石像の視線を感じてハッと驚き怯えるような表情をします。他人が怖いんだろうなぁ、この人は…と思いました。

本当はすっごく弱くて、意思も弱い。人間臭さを感じる瞬間は、フロローが感情に振り回されているときです。自分の感情すらも自分で制御できない、要は自制心が働かないっていうのは聖職者としては非常にまずいことです。万寿夫さんフロローは感情に凄く振り回されやすいので、エスメのことになった瞬間に彼の中の弱い部分が露呈しそうになって必死に自分を守ろうと強気に出てしまう。でも、その弱さすらも隠そうとしなくなるのがバスティーユのシーンです。

今回のバスティーユのシーンはいつも以上に悲痛そうな表情を浮かべてエスメに迫っていたのが印象的でした。フロローの弱さが一気に露呈して、ただの老いぼれじいさんになってるのが観ていてしんどかったです。あ、フロローもしょせんただの人なんだな…と思うくらい、どうしようもなく欲に溺れてしまって情けない姿をさらしていました。万寿夫さんフロローの目を泳がせて声を震わせながらエスメに迫る姿は、凄く人間味があって醜くて良かったです。

あと、万寿夫さんフロローは最後投げ落とされたときに必死に両手で何かを掴もうとするようにもがくんですよね。最後まで必死に生きようとする姿がまた人間味あって、凄く居たたまれなかったです。どこまでも人間臭さの溢れるフロローだなと改めて感じました。熱量の高い素晴らしいお芝居を最後に見納めできて嬉しかったです!

エスメラルダ:岡村美南

いつ観ても絶好調ですね。今回も凄く声が伸びやかだったしお芝居も伸び伸びとしていて素敵でした。あと、久々に間近で観る贔屓は顔が良すぎて私の全細胞が溶けて無くなってしまいそうでした。マジで顔がイイ。圧倒的美しさと存在感とオーラ。最高にかっこよかったです。

ちょうど前日に、2018年度の横浜公演のときに出演したラジオ音源を聴いていて、岡村さんのエスメに対する解釈や演じるうえでの役作りを再確認していたんですよね。「エスメラルダは正義のヒーローではない」ということを繰り返し話されていて、正義を振りかざすわけではなく自分の正義をただ全うするだけ、要は自分の生きたいように生きるだけという前提があったうえでのお芝居なんだよなーと思いながら今回観劇していました。

本当にその通りで、岡村さんエスメの内から滲み出る優しさや包容力は、押しつけがましいものではなくて凄く自然にそうなっているかのようでした。カジモドに優しくしなきゃ、ではなくてカジモドに対等に接したいと彼女がそうしたいからしているし、フロローにも「こうしなきゃダメでしょ」と言うのではなくただ自分の意見を伝える。そういうさりげないセリフや佇まいすらも、岡村さんエスメは凄く自然に演じていました。

わざとらしくないところが凄く好きです。自然体さが物凄く伝わってくるんですよね。こういうお芝居、岡村さんの得意とするところだと思っています。

トプシー終わってすぐ、クロパンのあとをついていく前に、王冠被って嬉しそうにしているカジモドに「ちょっと待ってて」と優しい笑顔でオフマイクで声をかけていたのが凄く素敵でした。気を遣えるのが岡村さんエスメらしさあるし、あんな笑顔を向けられたら誰だって恋せずにはいられないです。

でもちょっと目を離した隙にカジモドが民衆から暴行を受けてしまうので、エスメとしてはたまったもんじゃないでしょう。罪悪感でいっぱいになっていそうだなぁ…っていうのは岡村さんの表情を観ていると凄く伝わってきて、だからといって腫れ物に触るような感じの接し方ではなくて、あくまで対等に、同じ人間として誠心誠意向き合おうとしているのが伝わってきました。

TOTWでは無邪気な少女らしさも垣間見えて、八の字眉毛で困ったようにカジモドの危なっかしさを見守る表情も凄く可愛かったです。でも全部ありのままの岡村さんエスメ。取り繕ったりせずに、すべて彼女自身の中から生まれた感情を素直に表に出しているだけ。岡村さんがラジオで話されていたことがちゃんと至るところで伝わってきました。

そして順番は前後しますが、God Help終わりのフィーバスとのやりとりの話。フィーバスに言う「私の目を見てもいいのよ」の言い方はやっぱり意図的に変えていました。以前のような「私の目を見てもいいのよ~?」といった挑発的な言い方でなく、何も取り繕わずに警戒心を解いた真っ直ぐな言い方でした。フィーバスが他の人とは違うということを感じ取って、心の壁を少し取り払ったんだなぁ…っていうのが伝わってくる言い方でした。

逃げも隠れもしないっていう正々堂々とした佇まいが凄く頼もしくて、岡村さんエスメらしい~って思いました。以前のような挑発的な言い方も好きでしたけどちょっと上からな印象を与える感じがあったので、今回の対等に向き合おうとするような言い方のほうが岡村さんエスメらしくて好きです。

あと、改めて感じたのが岡村さんエスメの目のお芝居が好きだなという点。岡村さんエスメって凄く勇敢なんですよね、本当に。相手の心を見透かすかのように真っ直ぐと相手の目を見るんです。だからフロローもフィーバスも彼女に見つめられると狼狽えてしまう。多分、淀みないほどに真っ直ぐな視線を向けるんだと思います。

でもそれは同時に弱くて脆い自分を必死に隠そうとしているんだろうなっていうのも伝わってきました。たとえば火炙りのシーンで、松明を持ってきた兵隊?を一切見ずに強気な姿勢で前を見据えているんです。凄く真っ直ぐな瞳で。でも兵隊?からフロローが松明を奪うと、岡村さんエスメは驚いたようにそっちを見ます。すると途端にキッとした表情が崩れて泣きわめくように叫び出します。弱い自分を必死に隠すために、常に強くあり続けようとする彼女が凄く健気で愛しくなりました。

Somedayでも、前を見据えて歌うときは凄く真っ直ぐな目をして気丈に歌っているのに、ひとたびフィーバスを見つめてしまったら涙が溢れてしまうじゃないですか。人の温もりや感情が彼女の瞳や心に伝わった瞬間に、硬い殻で覆われた心が簡単に裸になってしまうんだろうなぁ…って思いました。だから本当はすっごく脆い人。勇敢に振る舞っているだけ、っていう。器用そうで実は不器用なところが、やっぱり岡村美南さんのお芝居だなって。でもだからこそ自然体だし魅力的なんだと思います。

改めて、岡村さんがどんな風にエスメを解釈していてどのように演じているのかを感じ取れた観劇でした。やっぱりね、初演キャストなだけあって積み重ねてきたものの深みは凄いし説得力があるわけです。その中で、岡村さんエスメの在り方は年々進化し続けていて、今の岡村さんだからこそ演じられるものになっているなと再認識できました。

とにかくお芝居も歌もダンスもすべてが素敵でした。最後、天に旅立つときに振り返って微笑む姿もまさに女神のようでした。こんなにたっぷり岡村さんエスメのお芝居を堪能できて、幸せこの上ないです!

フィーバス:神永東吾

デビュー週ラストですが、マジでなんだろうなこの安定感と安心感!デビューしたばかりとは思えないくらいしっくり来ていて本当に素敵でした。まあね、フィーバスに関しては冒頭で色々語ったくらい自分なりのフィーバス像がようやく見えてきたわけなんですが…。神永さんフィーバスの純な陽気さとエスメに見惚れてからの一途さは本当に観ていて楽しいです。

今回も特筆するのはSomedayなんですが、やはり神永さんフィーバスのSomedayの解釈は凄く好きでした。岡村さんエスメが「争いの炎が消えることを~」と歌いながら天を仰ぐような仕草をするのを見て、神永さんフィーバスも同じように天を見つめるんです。それまでエスメのことを泣きそうな悲痛な顔で見ていたのですが、共に天を見つめたときにスッと光が差し込んで、それから再びエスメに視線を戻したときに神永さんフィーバスがゆっくりと頷きました。

そして穏やかな表情になって、微笑むようにエスメを見つめたんですね。この一連のお芝居を観て、神永さんフィーバスはエスメが向いている方向を見て「きっと未来は明るい」と確信が持てたのかなと思いました。だから優しく微笑んでエスメを受け入れ、エスメの想いを引き継いで歌ってくれる。これまでの観劇で見えた神永さんフィーバスの一面は「点」であり、今回の観劇でようやく点と点が繋がって「線」になったように感じました。

もう今期ノートルダムは岡村さんエスメと神永さんフィーバスのSomedayを観に行っているようなもんです。本当に素晴らしい…。神永さんフィーバスの優しさと前向きさが本当に泣けます。ラスト、エスメの亡骸の前で泣き崩れて嗚咽を漏らすのも凄く胸が痛みました。凄く人間的で感情豊かなフィーバス隊長、めっちゃ好きでした。今回も素晴らしかったです!

まとめ

この作品は毎度感情が溢れて胸がいっぱいになってしまうのですが、2019年の頃とは比べものにならないくらい情報量が多く感じます。この3年という歳月の中で世界が変わったこと、日常が変わったこと、そして自分自身が変わったことが大きく影響しているんだなと思いました。もちろん俳優さんのお芝居も日々変化し続けているので、2つとして同じ公演はありません。

そんな中で今回の公演を観られたのは本当に幸せなことだったと思っています。毎回観劇後は胸がいっぱいになりますが、今回は特に素晴らしい公演を観たなぁ…と思いました。週末ラストの公演ってこともあって、出し切っちゃうんですかね。本当に激アツだったんですよ。言葉じゃ伝えられないくらい、熱い公演でした。

でさ、次の観劇予定立てたいからチケット取ろうとするやん。もう全然取れないですね!?このチケ難はなんなん!?せっかく贔屓出てるのに全然チケット取れないから会えないじゃん!?神よ祝福を~~~~!

とにかく神頼みせず自分で頑張ってチケット探します。岡村さんに会いたいから頑張るお~!

今回も素敵でした。素晴らしい時間をありがとうございました!

次は9日かな!今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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