2022年6月24日マチネ 劇団四季『ノートルダムの鐘』@横浜




ノートルダムの鐘
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キャストの感想

キャストの感想です!

カジモド:寺元健一郎

今期は寺元さんによく当たるなぁ…と思いつつ、寺元さんカジモドは観るたびにどんどん好きになるのでまた観られて良かったです。というか今回のMOSは圧巻でした。ロングトーンがカチッとハマって伸びに伸びる歌声に力が漲っていって、最後はやはり絶唱。一切歌声がブレることもなくて、めちゃくちゃ気持ちの良いMOSでした。この華奢で細い体のどこからあんなパワフルな歌声が出るのか、いつも不思議でなりません。そういう意味で、「僕は強いから」に説得力を感じられるカジモドなのでとても大好きです。

で、今回寺元さんカジで印象に残ったのがTOTW終わりの鐘を鳴らす仕草。いつにないはしゃぎっぷりでした(笑)あんなにぴょんぴょん跳ねてたっけ(笑)いつも、金本泰潤さんカジみたいに声がキーンとなるくらいはしゃぐってわけじゃなかったから結構落ち着いている印象があったんですけど、今回はテンションMAXなのがすっごく伝わってきました。鐘もゴンゴン鳴りまくってて、ぴょんぴょん跳ねてニッコニコな寺元さんカジがあまりにも可愛すぎてキュン死しそうでしたわ。

あとはエスメが息を引き取るシーンで、エスメが「なんて美しい朝なの」と微笑んだときに寺元さんカジもほんのり微笑んだのが凄く良かったです。からのフロローに対する怒りの表現も素晴らしかったし、相変わらず粉骨の身体表現はリアルすぎてグロさすら感じました。もうさ、骨を折ったあとのヨタヨタした歩き方を観るだけで自然と涙が溢れちゃいます。なのに、満身創痍でありながらエスメを持ち上げられるんだもの。あんなに華奢でボロボロで体中痛いだろうに…。見た目とはかけ離れた力持ち具合は、観るたびにハッとされられます。

今期は寺元さんカジ観るたびにおんおん泣いているので、もうダメですね。涙腺に来てしまうカジだわ。今回も本当に素晴らしいお芝居でした。観られて良かったです!

フロロー:村俊英

村さんフロローに対する好きという感情が溢れすぎてたまらんな!?と思った観劇でした。いやねー、村さんフロローがあまりにも良いです。まさに私の追い求めていたフロロー像そのものなんですよ。貫禄のある佇まいといい、厳格で慎重な性格といい、エスメに対する童貞拗らせっぷりと征服欲といい、どんどん狂っていく様子といい…。好き…。

今回は1幕冒頭のカジモドとのシーンは比較的穏やかに感じられたんだけど、気のせいかな。先週や先々週に観たときより雰囲気が柔らかいように感じました。カジモドに対する愛情とは違うのかもしれないけど、ジェアンから引き受けたこの命をしっかり育てなければという責任感のようなものはあったと思います。カジモドと過ごす日々に、決して嫌気はさしていなかったんだろうな~というような佇まいでした。

だけど自分を裏切ってカジモドは外の世界に飛び出し、醜態を晒すどころか自分までもを恥に晒させた。同時にエスメラルダというジプシーの女性に心を惑わされていることにも気付き、だんだんと心に余裕がなくなっていった。この辺からカジモドに対する冷たさのようなものが顕著になり、少しずつおかしくなっていった感じがしました。今回の村さんフロローはちょっとずつ道を踏み外し出している感じがして、凄く良かったです。

でさ、村さんフロローのエスメラルダに対する態度が本当に小学生かっ!と突っ込みたくなるくらい拗らせていて大好きなんですよね(笑)まともに人の目すら見られないのかいっ!そして好きな女の前ではかっこつけたくて仕方ないんかいっ!といちいち突っ込みたくなるくらいに、分かりやすくて可愛い(笑)

それが顕著なのがTOTW終わりにエスメと対峙するシーン。「カジモドだめじゃないか!」と彼女の前でわざわざカジを叱るのも単純にかっこつけたいんだろうな~っていうのが丸見えで可愛いし、すかさず「私のせいです、閣下」とエスメに言われれば「ほう…」と満足気な表情をするのが征服欲を満たされているみたいで気持ち悪いし、もう分かりやすすぎやねん!いやー、この歳で初恋はしんどいねぇ…。恋愛の仕方分かってなさすぎな童貞感丸出しの村さんフロロー、本当に愛しさの極みです。

そんな村さんフロローのヘルファイヤーは今回もめちゃくちゃかっこよすぎて震えました。何度聴いてもかっこよすぎる…。座っていたところから立ち上がる瞬間にちょっとだけ体が揺らめいたんだけど、それが単純に動揺しているようにも見えて逆に良かったです。正義と邪悪な心とがせめぎ合って、自分自身を脅かしている感じが凄く伝わるヘルファイヤーでした。本当に好きの極み…。

あとはバスティーユでエスメに迫るところはスカーフを取り出したあたりからすでにニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていて、気持ち悪さ全開でした。本当に気持ち悪い…。悪魔に取り憑かれているような村さんフロローの佇まいは、1幕冒頭とはまるで似ても似つかない。別人のように豹変してしまう様が、すっごく哀れで好きです。

そして何より好きなのが、カジモドに投げ飛ばされる直前の逃げ惑うお芝居。もうここのさ、必死に逃げ回る村さんフロローがあまりにも哀れで好きなのよ…。散々「悪人は罰を受ける」って言っておきながら、いざ自分が罰を受けようものなら逃げようとするの、すげえ卑怯じゃん?村さんフロローは卑怯なの、すっごく。それが死ぬほど好きというか、一気に人間臭さが表れて醜態を晒しているのが最高にたまらないです。人のこと殺しておいて、自分は死ぬの怖いんか???ん???

さすがに寺元さんカジは泰潤さんカジのように村さんフロローを持ち上げようとしても足が宙に浮くまで持ち上げるのはできないんだけど、「必死に逃げようとする村さんフロローVSしっかりホールドして投げ落とす決意が固いカジモド」の構図は何度観ても鳥肌が立ちます。もう村さんフロローのお芝居、解釈がどれも大好きでした。あと100回は村さんフロロー観たいし、何度観ても飽きない…沼だね…。

今回も本当に素晴らしいお芝居を観られて嬉しかったです。そしてさらに村さんフロローのことが大好きになれた観劇でした!

エスメラルダ:岡村美南

冒頭にたくさん感想書いたからこれ以上書くことないんじゃないかって思いますが、書き足りないので書きますね。何度も書いているけど、今回の岡村さんエスメは本当に情緒が決壊していました。まるでいつもとは違うお芝居を観ているかのようで、凄く新鮮だったし、胸が痛くなりました。

まあいったんその話は置いといて、1幕から順を追って書いていきます。

まずは大聖堂でフロローと対峙するシーン。フロローに対して言う「あなたがしてほしいと思うことを、あなたも人にしてあげたらどうかしら」というセリフの言い方が先週あたりから変わりました。久々に登板した頃はさら~っと流れるように言っていたんですよね。エスメにとってはそれがさも当たり前であるかのように。でも今回は「あなたがしてほしいと思うことを……あなたも人にしてあげたらどうかしら」と溜めるように言っていました。それによって、エスメがそのことをフロローに気付かせたいというような意味合いが込められた気がします。言葉の重みも変わって、フロローに響くようになるのが凄く伝わりやすくなりました。個人的には今回の言い方、凄く好きです。

TOTW。ちょうど上にあがってきてカジモドに呼びかけるも全然反応がなく、ちょっと不審そうに不安そうに眉を下げるような感じの表情のまま後ろを振り向くんですが、鐘たちを見てパッと表情を変えたのが印象的でした。ここっていつもこんなパッと表情変わったっけ~って思って。いつもはグラデーションのようにパァァァ…と表情が変わっていたような気がしたんだけど、今回はパッと変化していたので、美しい鐘たちに感動していたのがとても分かりやすかったです。

あと、歌の途中でカジが柵の上でふざけてエスメをからかうところ、中盤あたりでエスメが下手から上手に移動して「分かったから分かったから…」みたいに両手をカジのほうにやって落ち着かせようとしながらも自分は目をギュッとして顔を逸らしちゃう瞬間があるんです(分かる人にはきっと伝わるやつ…)。ここ、今回はあまりにも怯えすぎて下を向いた瞬間に「せか…ぃのちょう~じょうで~」みたいに歌声が一瞬途絶えたんですよね(笑)それがあまりにも可愛すぎてキュンとなりました。あとさ、からかってくるカジを「もう!」って感じで腰に手を当ててたしなめるの死ぬほど可愛すぎていつも悶えてます。私もそんなふうに可愛く怒られたい(願望)。

そのあとのフロローとの対峙のシーン。フロローに言う「分かってるの?私を見るその目つきで」というセリフの「分かってるの?」のトーンが、いつも以上に落ち着いていました。もう完全にフロローの心を見透かしたかのような言い方で、あーこれは言われた側のプライドずたずたにされるわって思いました。そりゃフロローも怒り狂いますよ。ちょっとしたセリフの言い方のニュアンスがね、好きだなって再認識した観劇でした。

で、他にも色々書きたいことはあるんだけどすっ飛ばしてSomedayの感想です。

今回は出だしの歌詞のところで、いつもと声の抜き方が違う…と思いました。なんかね、すぅ…と消えていくような感じの声の抜き方で、その瞬間に「あ、今回のエスメは生きることを諦めたのかもしれない…」って感じたんです。もう完全に全身からすぅ…と力が抜けていくような感覚とでも言うのかな。それを聴いて、全身に電流が走ったような衝撃を受けました。

でさ、イントロが終わって「い~つか~人がみ~んな」って歌い出すところはもうすでに涙が流れていました。「賢くなるときが来る」でちょっとだけフィーバスに視線をやるようにして微笑むんです。その微笑み方がいつも以上に優しくて穏やかで、彼女にとって生きることに対する希望はもうないんだなっていうのが伝わりました。「祈るわ争いの炎が消えることを」は、もう涙でちょっとずつ声が震え始めていて、死ぬことに対する怖さを必死に隠すようにして祈りを捧げている姿に、胸をギュッと掴まれる感覚でした。

そしてフィーバスが共に歌い始めてくれたとき、彼に微笑みながらもどんどん声が震えて上手く歌えなくなっていて。正直観ながら「大丈夫かな…?」と心配になるくらい、岡村さんエスメの声が涙で震えていました。生きることへの諦めと絶望、そして死への恐怖。様々な想いが今彼女を襲って、こんなにも弱くて脆い一面をさらけ出してしまうほどに彼女が追い込まれているんだということがより一層伝わってきました。

でも、生きることを諦めたからこそ、逆に祈れたんだとも思います。未練がないといえば嘘になるかもしれないけど、死ぬ覚悟ができたから…。でも、祈り始めたときはこのまま1人で死ぬつもりだったからその覚悟ができていたはずなのに、こんな状況でもフィーバスが自分についてきてくれて1人にしてくれなかったから、死ぬことが急に怖くなったのかもしれない…って思いました。最初にフィーバスを一瞥して微笑むのは、もしかしたら彼へ別れを告げる意味での微笑みで、彼を置いて自分だけが死ぬんだと。そう思ったから1人で祈り始めたんだと思います。

だけどそんな自分の決意とは裏腹に、フィーバスは自分についてきてくれて一緒に歌い始めてくれた…。そんな彼に対する愛情と感謝、そして死への覚悟に対する揺らぎ。フィーバスの顔を見た瞬間に、きっと「死にたくない」という気持ちが相当強くなったんだと思います。この葛藤が今回はすっごく強かったです。涙となって溢れた感情が岡村さんエスメの全身を震わせるほどに、生と死に対する感情が生々しくリアルに伝わってきました。

もう情緒がぐちゃぐちゃなのよ。死ぬことに対する覚悟と、死にたくないという願望とが混在しちゃって、正直自分でもよく分からなくなっているんじゃないかなって思いました。あんなにも弱々しい岡村さんエスメは初めて観たし、あそこまで感極まっている岡村さんエスメも初めて観たし、私もちょっと衝撃を受けすぎて頭が真っ白になりました。

そして泣き崩れてフィーバスに抱き締められるとき、すっごく穏やかに微笑んだのが印象的でした。彼の想いを背中で、耳で、触れているところすべてで感じ取ったんだろうなって。同時に、このときようやく死への覚悟が決まったんだと思います。彼なら信じられる、私のすべてを委ねられるとでもいう表情なのかな~って。諦めとか絶望とか、そんなネガティブな感情ではなく、彼になら未来を託せる、彼には生きてほしいというような。未来にではなく、フィーバスに対して希望を抱いたような表情に見えました。

文章で書くと正直あまり伝わらないし、「いつもと書いてること一緒やーん!」って思うかもしれないんだけど、なんかいつもと違ったんですよ。エスメの生と死に対する向き合い方とか、何に対して希望を抱いたのかとか、全部がいつもと違って見えました。

いつも以上に泣いたのが凄いとか歌えなくなったのが凄いとか、そういうことじゃないです。岡村さんエスメのSomedayに対する向き合い方というか居方というかお芝居のアプローチが本当に凄かったの。それに付随して涙が込み上げて感情が爆発してしまったことが、より一層切なさを増して観ているこっちまで涙が込み上げてしまったわけです。こんなにも人って絶望できるんだ…というのを、悲痛さではなく虚無感で表現したのがまた凄く良かったな。まるで「空っぽ」な印象でした。もうこの世に自分は存在していないかのような佇まい。

空っぽだったのに、フィーバスがいたから彼女は空っぽではなくなったんだと思います。いやもうさ…今回はちょい上手寄りのセンターだったからフィーバスと向き合うときの表情も観れたんですけど、感極まって泣きそうになりながら彼に手を伸ばす瞬間が本当に観ていて苦しくてさ…。死ぬ覚悟ができたのに、彼がそうさせてくれないわけよ…。生きたいと強く思うようになってしまったのは、人を愛することを知ってしまったからなんだろうなと。空っぽだった自分に、フィーバスが愛や希望を与えてくれたから。

ただ愛しているとかそういう安っぽいものでは表現できないほどに、岡村さんエスメのフィーバスに対する愛情と希望が感じられた今回のSomedayでした。うん、どの瞬間も本当に良かったです。今回のSomedayはきっと一生忘れません。

そのあとの処刑のシーンも息を引き取るシーンも、正直涙なしには観られませんでした。生きたかったんだよね、本当は…。そう思ったら観るのがつらかったです。生きることを諦めなきゃいけないってどんなに残酷だろうって思いました。生きたかった彼女が息を引き取った瞬間の儚さは凄まじかったです。お芝居とは思えないほど、すぅ…っと命が消えていくんだよね。凄くリアル。2幕のお芝居はどのシーンも本当に神がかっていました。今回はちょっとあまりにも凄すぎたわ。贔屓目抜きにしても、マジで凄いものを観たと思います。

言葉にすると急に安っぽくなっちゃうから、私が今回観て感じたことを100%伝えるのは絶対に無理なんだけど、本当に今回の岡村さんエスメは凄かったんです。それだけは伝わってほしい(笑)役が憑依しすぎていて、岡村美南さんという俳優さんの存在は完全に消えていました。凄く良かった、マジで。

200回目という節目の公演を観られたことも、こんな素晴らしいお芝居を観られたことも、とても幸せでした。やっぱり岡村さんのお芝居が好きなんよ…。だからこの人のファンはやめられないの。改めて岡村美南さんのことが大好きだと感じられた観劇になりました。本当に素晴らしいお芝居をありがとうございました!

まとめ

自分としてはめっちゃ伝えたい~~~~!と思っても、上手く伝えるのが難しいですな!?「凄かった」なんていくらでも言えるけど、何がどう凄いのかを伝えるのは本当に難しい。その場にいないと絶対に分からない空気感やニュアンスってあるし、こんなにも文章で人に伝えることの難しさを感じたことはないかもしれません。

それくらい今回の岡村美南さんのお芝居は最高でした。もしや自分だけか…!?と思っていたのですが、今回の公演を観ていた方のレポなどを拝見しているとやはり同じようにSomedayに言及されていた方が多かったので、自分だけじゃなかった良かった…!と安心しています(笑)(贔屓オタクは贔屓に幻想を見がちなので…)

日々同じ物語を上演しているはずなのにこんなにも変わるんだから、やっぱり生のお芝居っていいなと思ったし、観劇はやめられないなと思いました。観劇することの楽しさを教えてくれる岡村美南さん、マジ最高っす!ありがとうございました。

そして改めて、200回目のエスメラルダ出演おめでとうございました。これからも楽しみにしています!

次は25日ソワレです。また会えるのが嬉しい!

長くなりましたが、最後までご覧いただき本当にありがとうございました!

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