8年ぶりのオペラ座!そして新秋劇場!
はじめに
2020年10月24日に開幕した『オペラ座の怪人』。そしてついにオープンした新生・四季劇場[秋]!しかも生オケ!と色々と楽しみが重なりすぎたうえでの今回の観劇です。マチネに『ロボット・イン・ザ・ガーデン』を観劇するのでどうせなら…と思い前予してみたらとても観やすそうな席が取れました。
私にとっては2012年以来なのでなんと8年ぶりです!正直前回は四季離れしていた時期だったこともあって本当に印象にも残ってなくて、キャスト表ももらっていたはずなのにどこかへ消え…誰で観たかもほぼ覚えてませんという悲惨な有様です。多分、高井治さんファントム、苫田亜沙子さんクリスティーヌ、鈴木涼太さんラウルだったと思うんですけどね…。
ということでほぼ初見!ドキドキしながら新生・秋劇場へとやってきました。
以前の秋劇場よりもかなり便利です。というのも、アトレが入ったことでレストラン・カフェが併設されているので観劇前の食事にも困らないし、設備が本当に綺麗。もう快適すぎてずっといたいなと思いました。
一応せっかくなので、四季劇場[春]も外観だけ観てきました。本当だったらもうオープンしていたはずなんだけど…こればかりは仕方ないですが、来年のオープンがより楽しみです!
ということでやってきました秋劇場!キャスボもついにデジタルになって、なんだか新しい世代がやってきたなぁ…というワクワク感と若干の寂しさと…。色んな感情が込み上げましたが、何はともあれ今回はついに『オペラ座の怪人』を観られるということでとても嬉しかったので、そちらについて初心者なりにではありますがレポしていきたいと思います!
総評
全体の感想を書いています。
マチネの『ロボット・イン・ザ・ガーデン』で泣きすぎて涙腺ゆるゆるおじさんになってしまっていたのもあってか、冒頭でテーマ曲と共にシャンデリアが上がっていく様子を見つめるだけでなぜか涙が込み上げました。やっぱりあのシャンデリアは近くで観ると迫力が凄いですね…。
ベテランの佐野正幸さんファントムはもう圧巻でしたし、紗衣さんクリスティーヌもデビューしたての迪さんラウルも素晴らしくて、本当にキャストの声の厚みだったりお芝居の雰囲気だったりも素晴らしくてただただ感動です。プリンシパルはもちろんなんですけど、今回特に話題になっているアンサンブル1枠の高井治さんもめちゃ可愛くてビックリしました。あとは『パリのアメリカ人』で散々観てきた石橋杏実さん。こうやってプリンシパル以外の部分でも楽しみなキャストがいて、本当に初見としても目が足りなかったです。とりあえず、キャスト全体の完成度が凄すぎて本当に鳥肌が立ちそうでした。
座席的にも全体が観やすいし表情も見えるし凄く良かったです。プロセニアムアーチの上部を使ってお芝居が繰り広げられることもあるので、そういうときは首が痛かったですけど…。なので総合的に一番観やすいのってきっと2階席最前列センターなんだろうなと思いました。次回はその辺を狙って観たいなと思います。
そして全体の感想としては、まさかこんなに切ないお話だと思っていなかったので凄く衝撃が大きくて胸が苦しかったです。常に怪人に脅かされながら生きるオペラ座の人たちも大変でしょうけど、ファントムにはファントムの人生があって、なんかどうすれば全員報われたんだろう…と答えのないことを考えてしまいました。それくらい、ファントムにもクリスティーヌにも幸せになってほしいと思いました。
ずっしりと心に来るこの余韻が半端なくて、『アイーダ』や『ウェストサイド物語』や『エビータ』を観たあとのような苦しさに似ていた気がします。さすがアンドリュー・ロイド・ウェバー。素晴らしすぎました。
とはいえまだまだ役名も物語も理解しきれない部分がたくさんあったので、そこは観劇を重ねていきながら少しずつ咀嚼していきたいと思います。とにかくめっちゃ素敵な作品に出会えました。今、このタイミングで観ることができて嬉しかったです。
キャストの感想
気になるキャストの感想を書いていきます。
オペラ座の怪人:佐野正幸
圧巻でした。佐野さんファントムの感情表現があまりにも凄すぎて最後は泣かずにはいられなかったです。こんなにも救いようがなくて、でも思わず手を差し伸べたくなってしまう切なさも持ち合わせていて、見た目は醜いけどちゃんと他の人間と同じように心を持っているんだよな…と実感させられるほどの弱さが露呈していました。
声の厚みがあって迫力もあるのでひたすら人を脅かす悪魔のような存在なのかと思いきや、クリスティーヌを想って切なげに寂しそうに歌う一面もあったりして、凄く心がギュッと掴まれる感覚に陥りました。ファントムの感情に合わせてあらゆる歌い方をしていて、どこかまだ大人になりきれていない部分もあって幼稚な一面もあって、それが意外に感じたのも事実です。「怪人」と聴くとやっぱり不気味で怖くて強いイメージがあるので、そのギャップにやられてしまいました。
実はとても弱い立場の人間なんだなと思うと愛しさが込み上げてきましたし、どうすればこのファントムを救えたんだろうなぁ…とついつい考えてしまうほど感情移入できました。特にAll I Ask Of Youのリプライズは佐野さんの表情も含めて凄く切なかったです。そして2幕終盤。ただ、クリスティーヌを愛していただけなんだなって苦しくなってしまいました。佐野さんのお芝居と歌声と表情、すべてが秀逸すぎてファントムに対する感情がマジで処理できなかったです。
同時に歌声に美しさと色気もあって、ただ力強いとか弱々しいとか切ないとかだけじゃないのも凄いなと思いました。表現力が凄まじいし、長年ファントムを演じているだけあってファントムというキャラクターをしっかり理解して演じていらっしゃるんだなって感じることもできました。迷いがないし完成度も高すぎるし、お芝居の深みが凄い。どのシーンがどうで、とかまだ詳しく書けるほどではありませんけど、とにかく感情をごちゃごちゃにさせられてしまうようなファントムだったのは間違いないです。本当に素晴らしかった…。
クリスティーヌ・ダーエ:山本紗衣
紗衣さんのクリスティーヌ凄く楽しみだったのですが、予想通りであり予想以上に綺麗で美しかったです。どこまでソプラノの音域が出るのっていうくらい出るし、音程にブレもなくて凄く真っ直ぐとした美しさで魅了されました。とにかく歌声が綺麗。どの歌を歌っても凄く綺麗で、透き通っていました。
そして誰かに守ってもらわないと消えてしまうような弱さと脆さもあって、少女と大人の女性のちょうど間くらいで未成熟ゆえの好奇心と純粋さを持ち合わせているように感じました。紗衣さん、本当にこういう役凄く似合うし演じるの上手だなぁ…って思います。『ウェストサイド物語』のマリアとかもそんな感じでしたし、クリスティーヌの危なげな感じも絶妙でした。
ラウル・シャニュイ子爵:加藤迪
迪さんは今回がラウル役デビューとのことでしたが、めっちゃ完成度高いと思うんですけどどうなんですかね…。凄く安定していたし安心して観られました。迪さんラウルは年の離れたお兄ちゃんっぽくて、優しくて包容力たっぷりで、頼りになりそうな感じがしました。守ってくれそうな強さもあって、本当にかっこよかったです。
歌も厚みがあって安定していて、心地よい歌声でした。とにかくレディファーストでスマートなので、仕草ひとつにしても様になるし嫌味がないのも良かったです。身長も高いのでロングコートとかも似合っていたし、マジでラウルぴったりだと思いました。あとはラストの胸元がちょっと開いたシャツ姿も色っぽくてドキドキしましたし、カテコで紗衣さんクリスティーヌの手を取って甲にキスをしていたのも凄くスマートでした。かっこよすぎてずるいですね…。
カルロッタ・ジュディチェルリ:河村彩
カルロッタと言えば河村彩さん。観ることができて嬉しかったです!もう歌声がマジで凄すぎて終始ビビりまくり…。何がどう凄いってオペラ方面の用語とか知識がないので全然上手く伝えられないんですけど、紗衣さんクリスティーヌとは歌声も歌い方も違っていて、紗衣さんクリスティーヌは温かさと優しさがある歌声だったけど、河村さんカルロッタはそういう温かくて包んでくれる歌声というより力強くて主張してくる感じ?
とにかく美しくて迫力が凄かったです。カエルの泣き真似も上手でした(笑)散々クリスティーヌのことを貶すけど、どこか不憫で憎めない女性でもありました。カルロッタがこれほどまでに主張の強い女性だからこそ、クリスティーヌのヒロインとしての弱さや純粋さが引き立っていたと思います。
マダム・ジリー:戸田愛子
私てっきりマダム・ジリーとメグ・ジリーって、クリスティーヌに意地悪をするような親子だと思ってたんですけど全然違いましたね(笑)なんならクリスティーヌの味方でした。
バレエの講師ということで凄く厳しくて冷徹なマダム・ジリーでしたが、実は優しい一面もあるのがずるいです…。感情が読み取りにくくて近寄りにくい雰囲気があって、一見怖そうに見えるのに、クリスティーヌを褒めてあげたりラウルを手助けしたりする姿にコロッと来てしまいそうでした。そういう戸田さんのメリハリのあるお芝居が凄く良くて、その場を一気に引き締めてくれるピシっとした姿勢も声の張り方も個人的には結構目を引いて好きでした。
今回は戸田さんでしたが、木村智秋さんもデビューで控えているのでちょっと、いやかなり観てみたいです。
男性アンサンブル:高井治
他にも書くべき人たくさんいるはずなんですけど、ちょっと高井さんは外せませんでした…。私の中で『オペラ座の怪人』と言えば高井治さんのイメージだったので、ファントムではなくアンサンブルとしてキャスティングされていることがとても驚きでしたし、フォロワーの皆さんも相当驚かれていました。
1枠ということで色んな役で出られていたのですが、踊るし結構陽気な一面があるしでこれまでに観たことのない高井さんのお姿を観られて私も大興奮です(笑)高井さんが踊っているってもうそれだけで凄いし、2幕のパッサリーノ役ではメグ・ジリーだか誰かに何かをもらったかで喜ぶように両足をその場でふみふみしていたのがとっても可愛くて癒やされました(笑)あんな高井さん観たことない…可愛いし楽しそうに演じていらっしゃってて、なぜか心が満たされました。もちろんファントム役としても観たい気持ちはありますけど、こういう形ででも高井さんを『オペラ座の怪人』で拝見することができて嬉しかったです。
女性アンサンブル:石橋杏実
アンサンブルじゃあまり分からないかなぁ…と思いましたけど、やっぱりすぐに分かりました。バレエを踊るシーンがたくさんあって、石橋さんのバレエは本当に綺麗だし軸がブレないしもっと観ていたかったです。『パリのアメリカ人』をまた観たくなりました。
そして「マスカレード」では猿の格好をしていてそれも可愛かったです。下手側でクリスティーヌにちょっかいを出していたのも可愛かったし、ついつい目で石橋さんのことを追ってしまいました。
観劇の感想・考察
気になるポイントについて書いています。
結末について
正直今回だけでは色々考察したり細かいポイントをあげて解説したり…といったことができないくらい壮大なスケールだったので、自分が一番衝撃を受けた結末について書いていきたいと思います。
衝撃を受けたとは言いつつ、過去に一度観ているし確か映画も観たことがあったと思うし、なんとなくですが物語の結末は知っていました。でもいざ意識してこの作品を観たのは今回が初めてで、あまりにも切なすぎる最後に涙が思わず流れてしまいました。
ファントムのクリスティーヌへの愛情と執着心は異常でしたし、地下室にクリスティーヌの蝋人形みたいのが置かれているのを観たときはさすがに気持ち悪すぎてゾッとしたし、ただのストーカーすぎて気持ち悪い…という印象しかなかったです。だけど音楽の才能は確かにあって、クリスティーヌにあの歌声を授けたのは紛れもなくファントムでした。でもそれに対する見返りを求めたがゆえに、ひどく裏切られたと感じて、人を殺めるまでに至りました。多分、人から愛されることや人を愛するということをこれまで知らなかったんだろうなと思います。
ラウルの首に縄をかけて、自分かヤツかを選べと言いながら、自分を選んでキスしてきたクリスティーヌに驚いて衝撃を受けてうろたえてしまって、結局クリスティーヌもラウルも逃がしてしまい、自分は消え去る…っていうこの結末にはどんな意図があるんだろう、どういうことを伝えたかったんだろう…って考えて未だに抜け出せないままです。
まさかクリスティーヌが自分を選ぶとは思っていなかっただろうし、自分に触れるどころかキスをしてくるということも予想していなかっただろうし、そうやってクリスティーヌの愛が自分に向けられたことでようやく初めて、自分が本当に欲しかったのはこんなものではない…と気付かされたのかなと思いました。見せかけの愛情、自分の好きな人の幸せを踏みにじってまで得る自分の幸せは本当に幸せではないことを、このときファントムは思い知ったんだろうなと…そう考えると余計につらくなりました(笑)
1幕と2幕とでラストの描かれ方はほぼ同じで、All I Ask Of Youを歌うクリスティーヌとラウルの歌声を遠くで聴きながら「クリスティーヌ…」と彼女を想うファントムの構図を再び用いる演出にも鳥肌が立ちましたし、でもこのときのファントムの心情は1幕と2幕とでまったく別のものだったんだろうな…とも思うと胸が張り裂けそうでした。本当の意味で愛することを知ったファントムは、心からクリスティーヌの幸せを願って姿を消したのかもしれないなぁ…なんて。
どうすれば全員が報われる結末になったんだろうと考えてもキリがないですし、悲恋っちゃ悲恋だけどクリスティーヌやラウルからしたらきっとハッピーエンドですし、要は脅威=邪魔者が排除された世界がゴールとなったわけで、この後味が悪い終わり方って『ウィキッド』そっくりだなと思いました。どこかで幸せに暮らしてくれていたらいいんですけどね。
アンドリュー・ロイド・ウェバーの美しくも不気味な楽曲が織り交ぜられたこの作品は、観れば観るほどどんどん深みが増していって色々理解できるようになるんだろうなと思います。もちろん、演じる役者さんによってもキャラクターの印象は大きく変わるでしょうし、もっと色んなキャストでこの作品を観てみたいと思いました。
まとめ
なんというか、言葉にしようとすると安っぽくなってしまうし上手く歌えられないんですけど、すっごく胸の奥にずっしりと鉛が落下していったような謎の余韻があって、いつまでも消化されない感じがしています。それくらい色々と考えさせられたし、つらくなりました。
誰かの犠牲のうえに生まれた幸せって本当の幸せなのかなぁ…って考えさせられてしまいます。きっとクリスティーヌはあのあともきっと本当の意味で幸せになるには相当時間がかかったんじゃないかなと思いました。マジであのあとのことを色々と考えてしまいます。ぜひ色んな有識者の感想や考察を読んで、私も作品への理解を深めていきたいです。
ということで今回は『ロボット・イン・ザ・ガーデン』からの『オペラ座の怪人』のマチソワでしたが重かった…。せめて逆にすれば良かった(笑)
正直、『オペラ座の怪人』を観たらそのあとはしばらく何も観れなくなりそうなくらい後味の悪い余韻が残ってしまいますね。次回は観劇する際のスケジュールはよーく考えておきます。でもこうしてようやく観劇できて嬉しかったです。ロングランみたいですし、さすがにハイペースで観るにはメンタルが心配なので、ゆったりと回数を重ねていきたいです…。こうやって沼に引きずり込まれていくんでしょうね。手招きされているので、深みまで行き過ぎないように気をつけます!笑
コメント
ゆうきさん、こちらでは初めてコメントさせてもらいます。自分はそれ程オペラ座に思い入れがあるタイプではありませんが、全体的にかなり的確に捉えられてらっしゃるなと感じました。
それを踏まえてLove Never Diesの事を考えると「ホンマにALWさん何してくれてんねん…拗らせすぎやろ…」という感じになりますw
土曜日の博多マンマで芝サムが癖になってしまいましたが、オペラ座も早く見に行きたいです。
次は是非支配人ズにもご注目下さい。個人的に、村フィルマンと北澤アンドレが揃ったら突発しますw
コメントありがとうございます!
オペラ座の迫力が凄すぎていまだに余韻が残っていますが、なんだかクセになってしまいますね。
次回は支配人ズや他の人たちにも注目しながら全体的にもっと深く理解して観劇できたら嬉しいです!