2022年10月4日マチネ 劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』@福岡




ロボット・イン・ザ・ガーデン
この記事は約11分で読めます。

キャストの感想

キャストの感想です!

ベン:山下啓太

山下さんベンもたくさん観たなぁ…。田邊真也さんベンとは全然違うベンで、山下さんならではのベンのお芝居をしていて、毎回お芝居が変わるのでこの作品を通して山下啓太さんって凄いんだなぁ…というのを強く実感しました。田邊さん同様、山下さんも毎公演しっかりベンの人生を生きていました。

常にニコニコでワンコみたいで可愛いベンなんですよね。その無邪気さがエイミーを救ってきたし、同時に苦しめてきたのがもどかしいね。優しくて明るい山下さんベンの性格は周りの人たちを自然と笑顔にするし元気にしてくれるんだけど、ベン自身は苦しんでいるっていうのが本当に切なくて、それがミナミーにとっても苦しくて仕方なかった要因の1つなんだよなぁ…と思うと胸がキュッとなりました。

深い悲しみの淵にいるけど這い上がることもできず、へらへらと笑って繕ってる。エイミーにタングを粗大ゴミと言われたことに不満を抱いていたけど、まるで自分自身のことを粗大ゴミとでも思っているかのような「粗大ゴミ、か…」を聞くたびに、タングを自分と重ねているのが感じられて切なくなります。

「ふたりのことば」でも「壊れていてもゴミじゃないんだ、なのにどうして伝わらないのか」の歌詞のところでは凄く思い詰めたような表情をします。まるで自分を重ねているかのようで、そんな山下さんベンを観ているともっと自分愛してほしいって思っちゃうんですわ。山下さんベンは「自分を愛せない」っていうベンの特徴をよく捉えていると思います。だから観るたびにもっと自分を愛していいんだよ!って声をかけたくなっちゃいます。ミナミーも同じように思ってたはず。まちまりさんブライオニーもね。

山下さんベンにとっては笑うことが防衛本能として刷り込まれているんだろうなとも思いました。笑えばごまかせる、笑えばなんとかなる、笑えば痛みが緩和される…。心が笑っていなくても、笑っているように見せることで自分自身を守ってきたんだろうなぁ…って思いました。

エイミーに追及されている本題を避けるようにはははって笑ったり、エイミーが家を出て行ったときも「さすがエイミー!迷いがない!はははっ…」て笑うし、エイミーと電話するときも「これから日本へ行くんだ!」と言いながら笑ったり…キリがないわ。研修先から追い出された話をするときだって、エイミーに別れを告げるときだって、ずっと笑って誤魔化してる。自分の本心に向き合わず、痛みを緩和するために笑って逃げていました。

だから、ボリンジャーと会うことを決心してタングを直す決心をして、タングが間違ったことをしたらスルーしないでしっかり叱って…旅を続けていく中で何かと向き合うことができるようになって、最後には自分の気持ちにしっかり向き合って、エイミーとやり直したいという想いを彼女にしっかり伝えることができて…彼自身もう笑って誤魔化すことをしなくなったのは大きな成長だなぁ…って思います。

でもその分一貫して泣き虫なのは、たまらなく愛しい一面でした。ずっと泣いてばかりで本当に「泣き虫のベン」なのが凄く愛しくて可愛くて、嬉し涙も悲し涙も悔し涙も全部流す山下さんベンのお芝居の本気度に毎回心打たれていました。エイミーの妊娠が発覚したときに驚きと嬉しさとでしゃがみ込んで泣いちゃう姿は特に大好きです。

庇護欲にかきたてられるような可愛らしいベンなので、ミナミーもベンを守ってあげたいっていう気持ちが芽生えてたんだろうな。山下さんベンは元来素直な性格で、色々とごまかすのもきっと下手なんでしょうね。散々笑って逃げてばかりだけど、周りからすればそんなの強がってるだけっていうのがお見通しなわけです。感情をすべて表に出しちゃう一方で、とにかく優しさの塊な山下さんベンが本当に素敵で大好きでした。

エイミーのことが大好きで、大好きがゆえに甘えてばっかりだけど、男らしい一面もあってエイミーを幸せにしたいって想いを持つようになるかっこいい山下さんベンも最高でした。「君が好きなんだ」の言い方は今回も落ち着きのある言い方で、真剣っぷりが伝わってきてキュンとなりました。旅を通して「好き」という気持ちが「愛」に変わっていくのも感じられて凄く良かったです。

山下さんベンの魅力を再認識できた観劇になりました。毎回変わるお芝居の雰囲気やアプローチには驚かされていたし、ミナミーとの夫婦っぷりもニヤニヤが止まらなくて最高でした。想像以上にお似合いだったなぁ…。山下さんベンがいてくれたから、ミナミーがあんなに愛に溢れた女性になったんだと思います。最高の化学反応でした。

お芝居も熱かったです。こんなにも山下さんのお芝居に注目したのはこの作品が初めてだったのでたくさんの気付きがあったし、たくさんの魅力を知ることができました。ベンを演じてくれて、ありがとうございました。ミナミーを追えば自然と山下さんベンにも会うことができて、私にとって今ではもう山下さんも大好きな俳優の一人になりました。凄く素敵な俳優さんです。今回も素晴らしいお芝居をありがとうございました!

エイミー:岡村美南

かなりコンディションが良くて、お芝居も歌も絶好調でした。歌はキーにがっちりハマった歌声だったし、伸びやかに響いてたのでいつも以上に聞き心地が最高でした。今回が最後かぁ…と思いながら観ていたので、色々と初心にかえりながらミナミーってどんな女性なんだろうというのを考えていました。やっぱり一番は、愛に溢れた人だということです。

誰かに愛された経験も大切にされた記憶もなくて、ずっと1人で生きてきた彼女。ベンが初恋だったのかは分からないけど(原作ではベンと付き合いたての時点で処女ではないみたいなことは書かれてましたが…)、ミナミーはベンと出逢って愛することと愛されることを知りました。

彼と過ごした日々は確かに幸せで、愛に溢れていたんだなぁ…というのは「ふたりのことば」でしっかりと伝わってきました。だからこそ、そんな日々が崩れ去ってしまい、ベンが変わってしまったことが悲しくて寂しくて、またひとりぼっちになろうとしてたことが耐えられなかったんだなーって思います。彼に愛想を尽かしたんじゃなくて、すれ違ってしまったことがただただ寂しかっただけなのよね、ミナミーは。

だから未練がずーっと残ったままだし、どうやったって彼を嫌いになんかなれない。他の人と付き合ってみようとしても、そんな簡単に彼のことは忘れられない。ミナミーには、ベンしかいないんだなということが凄く感じられたお芝居でした。最初から最後までベンへの愛に溢れてるんだよね…。

だってさ、ベンと電話してるときに言う「他の人とも付き合ってみようと思って」のセリフ、あんなにも寂しそうに言う人いるかね?ロジャーも確かに素敵だけど、ベンが忘れられないんでしょ…っていうのがすげえ伝わってくるのよね。

ミナミーも前を向くために他の人と付き合おうとするのに、前を向こうと思えば思うほど、ベンへの気持ちに気付いちゃうんですよね。「私たち………これからも友達でいられる?」の間も本当に完璧。好きだからこそ、離れることが苦しい。自分の本心に嘘をつくことが苦しいってなってるミナミーがとても切なく感じました。

ミナミーを観てると、とにかく切ない気持ちでいっぱいになるのよね。「Gift」で凄く幸せいっぱいな姿を目の当たりにするから余計に落差がヤバい。

なんならガーデンパーティーでのベンとの会話すらも切なさ滲み出てたからね。自分の家族のことを話すときのミナミー、今回は「嫌いは言い過ぎでも、そりが合わないのね……うん、…悲しいけど、そういうことってあるわよ」とセリフの合間に自ら相槌を打っていたのが印象的でした。家族のことも、今までそうやって言い聞かせて自分を納得させてたんだろうなぁ…というのが伝わってきました。

愛されたことがなくて家族とも上手くいってないことが凄く伝わるお芝居。なんでこんなにも寂しさを滲ませることができるのかね。凄すぎるのよね。

でもそんな孤独な日々から救い出してくれたのがかつてのベン。ミナミーにとってベンとの出逢いがどれほどの奇跡だったのかを、「Gift」で見せる幸せいっぱいな表情が物語っていました。凄く穏やかに、心の底から笑ってるの。もう恋した乙女の表情。こんなに恋してる雰囲気を作り上げるのが上手いのはなんなの???凄いよね、私の贔屓…。

こんなにもミナミーに愛されてて、ベンは幸せものだよ?!私がベンになりたいくらいだが?!?!(突然の発狂)

ただただ包容力に溢れてるとか世話焼きなだけじゃなくて、ベンを愛したいっていう気持ちがあるから自然と彼を支えたい・笑顔にしたいと思うがゆえの世話焼き女房なのよね。原作のエイミーとは正直かなり雰囲気違うんですよ、岡村美南さんの演じるエイミーは。でも、ちゃんと岡村さんなりに解釈して咀嚼して演じられているから、お芝居の一貫性があって凄く好きでした。ベンをとにかく愛していて、愛想なんかついてない。ただ、寂しかっただけっていう。新しいエイミーの解釈を教えてもらったような気がします。

では今回も1幕から順番に感想書いていきます。

デフォでアンディへの「おはよ♡」がなくなってしまって寂しいですが、戦闘開始!での謎ダンスに挟む手をパンと叩く仕草の追加は本当に笑いました(笑)あまりにもやることが謎すぎる(笑)

あと、今更だけどエイミーの部屋にベンと出逢った当時の写真が飾られているのなんかいいですね。「ふたりのことば」ではその写真を眺める瞬間がありますけど、エイミーがベンと出逢った頃の思い出をずっと大事にしているっていうことを表していて凄く素敵だなと思いました。ミナミーは特にあの頃の大切な日々をずっと今も忘れずにしていて、当時のことを思い出すだけで幸せが溢れてくるような表情をするから、ミナミーにとっては相当大切な写真なんだろうな…って。なので、今のベンとの冷え切った関係性に寂しさを抱いている中でも過去に縋るように写真を眺める瞬間が余計に切なく感じました。

ベンに離婚を告げるところは早い段階で涙が込み上げていました。潤んだ目を何度も瞬きすることで涙を引っ込ませていて、それでも鼻はすするし、泣くのを必死に我慢している姿がとても健気で可愛かったです。積もり積もった不満はあるだろうけど、それも今までは仕方ないなぁ…って許してきてなんとかやり過ごしてはいたものの、自分でも気づかないうちに相当寂しさが溢れていて我慢していたんだろうなっていうのが伝わってくる佇まいでした。岡村さんはお芝居の中に寂しさや切なさを引き出すのが上手です。

続いてブライオニー宅。今回はポラリスをじーっくりと観察するのに夢中になっていて、ポラリスが微笑みかけてくれていることにすら気付いていない様子でした。ミナミーは本当にポラリス欲しいんだな~っていうのが伝わってきて可愛いです。まちまりさんブライの姉御感の前ではミナミーもちょっと素直に甘えられるのが可愛くて好きでした。Free Freeも相変わらず素敵だったな。

リジーの見学ツアー客。今回も圧強めでしたが、長手さんをリジーと勘違いしたんだかなんなんだか、「あなたが案内してくれるんでしょ???」みたいに開き直ってグイグイ迫ってたので、長手さんがタジタジになっていました(笑)

秋葉原スタッフミナミー。眠そうでしたなぁ…。今回もところどころ目を閉じて眠そうにしていました(笑)そしてここ最近はタングを見つけるなりハッと驚いたようなリアクションをする動きが復活していました。北陸ではやってなかったから懐かしかったです。

先に総評のところで書いちゃったレポ以外だとこんな感じですかね。ミナミー以外の出演シーンはかなり自由度高めに楽しくやっていたし、岡村さんにとってもかなり刺激的な経験になったんじゃないかなと思います。一方でエイミーのお芝居は岡村さんらしく、包容力に溢れたお姉さんみのある佇まいが最高でした。山下さんベン相手だとよりお姉さんっぷりが発揮されて可愛かったです。

デビュー当時の自分のレポを読み返していたら、エイミーじゃなくてブライオニーを演じるんじゃないかって予想していた過去の自分がいて、今じゃそんなこと思う余裕もないくらいにエイミーがしっくり来ていて、良い意味で期待を大きく裏切ってくれたなぁ…って嬉しくなりました。

原作のエイミーはあてがきかってくらい鳥原ゆきみさんのエイミーにピッタリですけど、岡村さんのエイミーはパラレルワールドに存在するかのようなオリジナルなエイミーでした。とにかく愛に溢れた人です。山下さんベンと同様、誰かを傷つけることでまるで自分自身にも痛みが跳ね返ってくるかのように、痛みを分かち合える人で、とても感受性が豊かでした。だから惹かれ合ったのかもね、2人とも。本当に本当にお似合いでした。

年齢と共に演じる役柄も変わってきているけど、まさかエイミーがここまでハマるとは思っていなかったのでビックリです。それだけ岡村さんも経験積んだってことかな。まだまだ若いけどね。でも大人の女性として演じていく役柄はどんどん変わっていくだろうし、エイミーを演じる岡村さんの色んな一面を観ることができて嬉しかったです。

ミナミーに出逢えて幸せでした。今回も本当に素晴らしいお芝居でした。たくさんのメモリーをありがとうございました!

まとめ

もう思い出は語り出したら止まらないです。ツアーに関しては私自身9月16日がMy初日だったこともあって1ヶ月間も通ってないのよね。本当にこの3週間だけなの。全6公演しか観られなかった。もっと観たかった。言い出したらキリがないですが、でもどの公演も無事に観られて嬉しかったです。

最後の地がまさか福岡になるとは思っていなかったから油断していたけど、でもうち2公演だけでも観られて幸せでした。観るたびにどんどんお芝居に深みが増していって、人間ドラマとしても見応え十分でした。色んな発見があって楽しかったな…。愛のカタチって人それぞれなんだなって。ミナミーを観ているだけでもそんなことを感じられてさ。凄く楽しかったです、本当に。

この1年はエイミーがメインだったね。私は28公演観られました。いや、だいぶ観ましたね!欲を言えば30回観たかったけど、この28回の思い出を大切にしていきたいと思います。岡村美南さん、本当に本当にありがとうございました!

コルクも一緒に旅をしたよ。かけがえのない、楽しくて幸せな旅でした。

皆さんもこの数ヶ月間、ミナミーとともに旅を続けてきた私を温かく見守ってくださりまして、ありがとうございました!そして最後までご覧いただき、ありがとうございました!

0

コメント

タイトルとURLをコピーしました