2022年5月31日ソワレ 劇団四季『ノートルダムの鐘』@横浜




ノートルダムの鐘
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キャストの感想

キャストの感想です!

カジモド:寺元健一郎

寺元さんはデビュー2日目あたりから観てきていますが、お芝居がだいぶ板についたような印象を受けました。そもそもデビューのときから完成度は高かったですし、安心して観られることに変わりなく、良くも悪くもシンプルなカジモドっていうところも変わりません。クセの強さがあるわけでもないし、個性が強いわけでもない。臆病で優しい、基本のカジモドらしさが寺元さんの印象です。

お芝居にクセがないっていうのは観やすいですが、もっとカジモドのお芝居を深掘りしてディテールをより濃くしてくれたら嬉しいな~と個人的に思ったりもしています。その分純粋さと真面目さが目立つので、これも一つのカジモド像としては正解なんだろうな。

でもその純粋で真面目なところがカジモドのピュアさを表現していたし、華奢なのも相まって小動物のような可愛らしさもあるんですよね。見た目は子供みたいだけど、精神的にはちゃんと大人。飯田達郎さんカジモドのような無邪気で幼稚な感じはありません。寺元さんカジモドはしっかり大人に成長している男性です。

で、寺元さんは華奢なんですが歌声のパワフルさは相変わらず凄まじかったです。そしてやっぱりふとした瞬間に海宝直人くんに歌声が似る…。だから時々凄くドキッとしてしまいます。寺元さんの歌声とても好きなんですよ。久々に聴けて嬉しかったです。

最後に、寺元さんカジモドの一番すげえ…!と鳥肌が立ってしまった瞬間。体中の骨を折ってでもフロローを許さず投げ落としたカジモドが、その後エスメの前で泣き崩れるフィーバスの元へ向かうじゃないですか。そのフィーバスの元へ向かう瞬間に、歩き方もカクカクしてて両腕の曲がり方も凄く歪だったんです。直感的に「あ、骨が折れてる…」って思いました。そうした身体的なカジモドの表現がすげえ上手くて感動しちゃいました。

最後の最後で寺元さんカジモドの好きなポイントが一つ増えたのが嬉しかったです。これからどんどんお芝居を重ねてもっと寺元さんならではのカジモド像を見つけていってほしいな~と期待しています!

フロロー:野中万寿夫

ついこの前まで岡村さんと同じく『ロボット・イン・ザ・ガーデン』で拝見していたので、なんだか不思議な感じでした(笑)万寿夫さんフロローは多分一番多く観ているんですけど、安定の不気味さがありますね。人間臭いほどに人間臭く、近寄りがたい気難しい雰囲気を纏っています。

でも万寿夫さんフロローって表裏一体だから、直感的にこの人ヤバそう…ともならないんです。元来から気難しい性格をしていて、感情を表に出しやすく、同時に感情に突き動かされやすいフロロー。でもいつからか感情を抑えるようになり、冷え切った孤独な雰囲気も感じられました。

本当は優しくて良いご主人様なんだろうな…って思うんですよ。ふとしたときに見せる笑顔とかを見ると。偽りの笑顔ではなくて、心の底から笑ってくれてるんだろうなって。

万寿夫さんフロローはスイッチが入ったように人が変わるんじゃなくて、地続きな印象です。本来の自分と感情に突き動かされて怪物のようになってしまう自分とが一緒なんです。だからどんどん心が蝕まれていく感覚で、良と悪の心がぐちゃぐちゃな感じ。人間臭いのに怪物のような怖さもあって、まさに「人間と怪物、どこに違いがあるのだろう」という歌詞がピッタリのフロローだなと改めて感じました。

あとはヘルファイヤーが圧巻でした!アレンジもきかせていて、鳥肌立っちゃいました。万寿夫さんフロロー、マジかっけえっす!久々に万寿夫さんフロロー観れて嬉しかったです。

エスメラルダ:岡村美南

おかえりなさい!2019年10月14日以来のエスメ出演です。その3年半のブランクを感じさせないほどの圧巻のパフォーマンスで魅了し、かつその間に経験したものをすべて注ぎ込んだお芝居をしていました。明らかに今までの岡村さんエスメとは違います。

元々そんなに棘がないエスメではありましたけど、さらに丸くなったような気がしました。それはドナやエイミーという成熟した大人の女性を演じたことがかなり大きく影響しているんだと思います。若気の至りで突っ走るような危なっかしさはだいぶ薄れて、どんなことにも冷静に対処できるような肝っ玉の強い女性になっていました。

以前の岡村さんエスメって結構感情を剥き出しにする瞬間が多かったんです。フロローに言う「分かってるの?私を見るその目つきで」っていうセリフも以前は嫌悪感を剥き出しにして突き放すように言っていましたが、今回は落ち着いた感じで見透かすような言い方でした。ずっしりと、どんと構えていて、その度量の深さに驚きました。

同時に声の出し方も結構変わっています。丸みを帯びた声が出るようになったので、パワフルに大胆に歌う!っていうよりも大人の奥深さをしっとりと歌い上げる感じっていうのかな。さすがに少女らしさはないけど、達観した聡明な女性らしさはさらに強調されていて、ジプシーらしくないジプシーとしての興味深さは凄く増したと思います。

ところどころセリフの言い方も変わっていて、経験を積んだ今だからこそできるお芝居になっていました。ドナやエイミーのお芝居を経てのエスメラルダだなと思わせる、岡村さんの大人の魅力が詰まったエスメでした。だからとっても新鮮で観ていて楽しかったです。

タンバリンはダイナミックなダンスと圧倒的歌唱力で魅せてくれて「これこれ!」と思いながら感動していましたが、腰からスカーフを取り出して踊り出す際にふわっと空中に舞ったスカーフを見上げる余裕すら出ていたのは驚きました。小道具すらも完全に味方につけていたのが凄く良かった。人を魅了するパフォーマンスと、自分を魅力的に魅せるやり方を分かっているかのようなパフォーマンスがとても素敵でした。

さすがにエスメを150回以上演じていらっしゃるだけあって完全にものにしています。試行錯誤している感じも特に見受けられなかったし、ベースのお芝居にあとは自分の経験してきたものを重ねていく…そんなアプローチに感じました。貫禄もあるけど絶対的な説得力があるから、本当に引き込まれるんです。贔屓フィルターがかかっているだけなのかもしれないけど、本当に圧巻のパフォーマンスでした。

ただ、相変わらず色気はなくて草。色っぽく見せるのは上手いけど内から滲み出る妖艶さがないのはどうしてなんだか…。それが岡村さんの健全で健康な女性らしさの魅力でもあって大好きです(笑)

Top Of The Worldでは包容力が大爆発。女神のような温かさと優しさで包み込んでくれる岡村さんエスメが改めて大好きだと感じました。柵に乗ってカジモドと向き合うときに、寺元さんカジが「二人でいる」を手を使ってジェスチャーしながら歌ってくれたおかげで、岡村さんエスメもカジの真似してジェスチャーしてくれたのが嬉しかったです。ここ、カジによって岡村さんエスメもジェスチャーするかしないかが変わるので、やってくれたの本当に嬉しいの!

尊いものを、愛しいものを見るような優しい目つきでカジを見つめて最後は優しく頬に触れる。そんな仕草も健在でした。ここの岡村さんエスメは一番のお気に入りなので、変わらずにすべてやってくれてめっちゃ嬉しかったです。わざとらしくない、自然な仕草が大好きでした。

その一方で、ラポンテでフィーバスにキスされて逃げ出したあとにふと立ち止まって唇に手を当てながら嬉しそうにはにかむ表情も健在。ここも大好きなポイントだったので変わらなくて安心しました。隙のない女性が見せる隙がたまらないです。

他にも好きなポイントはたくさんあるんですが、「え、やらなくなっちゃったの…?」となる瞬間はなかったので良かったです。好きなポイントは残しつつ、さらにブラッシュアップを加えてきたのでただただ最強のエスメラルダになって帰ってきてくれました(笑)

あと大きく変わったなと思うポイントはSomedayです。その直前、バスティーユでのお芝居そのものが結構変わったポイントあったんだけど、フロローに迫られて「助けてー!」って叫ぶ声も以前とかなり変わって凄く切羽詰まった感じが出ていて良かったです。お芝居にリアリティが凄く出るようになったかも。そして何より、涙脆くなった。

今回、フィーバスと向き合ってお芝居をするシーンでフィーバスがエスメを説得するセリフが続くときに岡村さんの顔から水滴がポタっと下に垂れていったのが見えました。マジか…って思いました。客席を振り向いた岡村さんエスメの頬には涙が流れた筋があって、正直ビックリしたんです。

そのままSomedayに入り、目に涙を溜めて歌い上げる岡村さんエスメ。目力のお芝居が凄く良かったです。歌詞をただなぞるように歌うのではなく、心の底から祈りを捧げるように想いを込めて歌っていたのが伝わりました。今の世界情勢にきっと思うところがあるのかもしれません。

でもフィーバスの頬に触れながら歌うときに、早い段階から涙が込み上げて声が出なくなっちゃってそのまま泣き崩れていきました。お芝居なのか本当にそうなっちゃったのか分からないくらい自然でした。正直ね、こんな岡村さんエスメ観たことなくてビックリしたんですよ。

これまでにもボロボロに泣いてた公演は何度かあったけど、岡村さんってこんなに涙脆かったっけ…って。これもドナやエイミーを演じて変化した部分だと思っています。これらの役を演じてから、岡村さんは確実に涙脆くなりました。母として子と向き合うとか、妻として夫と向き合うとか、そういう家族の愛をお芝居を通して感じながら、どんどん岡村さんの感受性は豊かになったんだと思います。その経験がそのままエスメのお芝居に反映されていました。

泣くことが良いことってわけではありませんが、わざとらしくなく、自分の感情に素直になった結果流れた涙は凄く美しいし心を揺さぶられます。岡村さんエスメがこのナンバーに対してどんな想いで歌い上げているのか全部は分からないけど、エスメを通して自分自身の気持ちを歌声に滲ませているのは凄く伝わってきました。だからすっごく良かったです。これは以前と大きく変わったポイントでした。

あと、1幕終盤で魔術を使ってフィーバスと逃走をはかるシーンは相変わらず逃げ方が上手いなって思いました(笑)ちゃんと魔術が光っている間はその場にとどまっていて、真っ暗になった瞬間に捌けるので本当に魔術を使って姿をくらましたように見えるんです。岡村さん、ここの表現マジ上手いのでぜひ注目してほしいです。

正直挙げたらキリがないくらい岡村さんの感想や良かったポイントを書けるんだけど、今回はいったんこの辺で。オリキャスとしての存在感と説得力、圧倒的な美しさと賢さ、そして今の岡村さんだからこそ演じられるお芝居。それらをたっぷりと堪能できた観劇でした。ドナとエイミーを経たエスメが観たいと思っていたので、念願叶って嬉しかったです。改めて、戻ってきてくれてありがとうございました!

フィーバス:神永東吾

デビュー初日ですか…?と言いたくなるくらいフィーバスがしっくり来ていました。安定感があってお芝居に淀みもなくて、凄くスムーズにお芝居をされていた印象です。一緒に稽古をしていた佐久間仁さんのエッセンスをやや取り入れている印象もありましたが、神永さんならではのフィーバスを演じられていたと思います。

とにかくフランクで陽気でワイルド。神永さんそのものって感じでした。息抜きのときなんか女の扱いに慣れている様子で、スケベ心を隠すこともなく、その様が逆に清々しいほど。でもその裏に隠された悲しい過去に、ふとした瞬間取り憑かれてしまうっていうのもしっかりと伝わってきて良かったです。あからさまに怯えた表情をしたり体を震わせたりはしていませんでしたが、急に翳るのでグッと引き込まれました。

ひたすらかっこいいです。長髪も似合うし背も高いし、まさに色男って感じでした。隊長とは思えないくらいフランクなので距離感が逆に掴みにくいですが、闘志を燃やして業務を遂行する様はギャップを感じました。神永さん、陰と陽の使い分けが凄く上手い印象です。

そしてエスメに対する愛情表現がとても素敵。個人的にはバスティーユでのお芝居が凄く印象的で、セリフの発し方がどこか諦めとそれでもエスメだけは救いたいという気持ちとでいっぱいになるような感じでした。からのSomedayでは、泣き崩れるエスメを後ろから優しく抱き締めて、安心させるようにほんのり笑みを浮かべながら優しく歌っていたんです。そんな歌い方するのか…!って衝撃を受けてしまうほどに、優しく温かくエスメを包み込んでくれました。

「大丈夫だよ」って言ってくれているみたいで、なんか凄く胸がギュッとなりました。ここって清水さんも佐久間さんも表情をキッとしたり強い瞳で前を向くように歌ったりしていた印象があったので、こんなに柔らかく笑いながらエスメを安心させるように歌うフィーバスって個人的にとても新鮮だったんです。もうこの神永さんフィーバスを観た瞬間に落ちましたね、私(笑)

初日にしてこの完成度とオリジナリティーは凄いです。もう3年前くらいからフィーバス演じてたよね?って思うくらい、凄くしっくり来ていて本当に素敵でした。歌に関しては高音の部分が少しきつそうな瞬間も多々ありましたけど、その辺は今後の課題かな。でも初日でこれなら、これからもっと魅力的なフィーバスになることは間違いありません。凄く期待できそうです!何はともあれ、デビューおめでとうございました!

まとめ

久々の観劇レポ更新だったので、いつもと雰囲気違わない…?っていうところもあるかもしれないですが、ひとまず最後まで読んでくださりありがとうございました。私自身2ヶ月ぶりの観劇で、観劇の仕方すら忘れていたくらいなので(笑)

でもずっと待ち続けて良かったです。いつ観劇行こうかなって考えてチケット取っては気持ちが追い付かなくて手放して…を繰り返していたので、やっと心も体も突き動かされる形で劇場に向かえました。まさか岡村さんのエスメを観れるなんて思ってもいなかったですけど、大好きな岡村さんエスメに再び会えてとても幸せでした。

気付けば今回で通算192回目の岡村美南さん。あと8回観たらついに200回です。6月の鐘で決めたいな(笑)

改めて、最後までご覧いただきありがとうございました!次は日曜かな!嘘かもしれない!

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