キャストの感想
キャストの感想です!
ベン:山下啓太
どんどん感情豊かなお芝居をするようになって人間味のあるベンになった印象です。デビュー直後はもっと自信喪失していて感情すらもあまり表に出さなくて心が動かない感じのベンだなぁ…という印象があったのですが、回数を重ねていくごとに一生懸命もがきながら生きている側面も見えるようになりました。
「本当は前に進みたい」っていう気持ちが凄く感じられるんです。でも抜け出せなくて、ずっともがいてる。エイミーを笑顔にしたい人だっていうのは伝わってくる、でもその想いがだんだん甘えに繋がってしまっていて本人もそれに気づいてすらいないから、本当にどうしようもない。
悪意は一切なくて、でももがいているうちにどんどん自信をなくしていって諦めちゃった感じ?「どうせ自分はダメだから」と渇き笑いをしながらなんとかやり過ごしてきたようなベンです。痛みを知っているけど、その痛みに気付かないフリをして生きてきた人。ミナミーもそんなベンだからこそ諦めずに変えようとしてくれたんじゃないかなぁ…って思いました。根が優しすぎるんですよ、山下さんベンは。
あと、なーんでこんなに可愛いんだろうなって思ったんですけど結構女々しいところがあるからだっていうのが判明しました。そういえば『アラジン』でオマールを演じていましたし、その名残があるって言ったら語弊かもしれないんですけど結構内股になる瞬間が多いのよ(笑)声の高さも影響しているとは思いますが、ふとした女々しさにキュンとなるし、頼りなさを感じるし、子犬みたいだと感じるのかもしれません。そりゃ対照的にミナミーがどんどん逞しくなっていくわけだ。
でも「タングは捨てない!ここは僕の家だ!」と主張するところとかは今回いつも以上に結構突っぱねる言い方をしていて、ちゃんと意思表示はできるんだなーって思いました。まあでも言い過ぎたってなって、すぐにおどけちゃうのは可愛かったですが。常にエイミーのご機嫌を取ろうとする、というよりは、エイミーなら笑ってくれるでしょっていう思いが根底にあるんだろうなーって。「謝れば許してくれる」と思ってる子供みたいに。ところどころ無邪気さが感じられるのはそういった理由かもしれません。
そして今回、エイミーに「そういうところよ!」と声を荒げられたときに言う「大声出すなよ!タングが怖がってる…」のセリフの言い方が凄く印象的でした。山下さんベン、怯えちゃってエイミーを直視できないんですよね。「大声出すなよ」は思わずベンも声が大きくなっちゃって、自分を守るために必死になっちゃっている感じが伝わってきました。エイミーの想いが全然伝わっていないというか、正面から来られると逃げちゃうんだなって。そういうところも直後のミナミーの寂しそうな表情に繋がってくるので、ここの山下さんベンの佇まいが凄く良いなと思いました。
エイミーと別れてからはしょっちゅう泣いてばかりで、本当に子供みたい。大きな子供を観ているみたいで、ついつい見守りたくなってしまいますね。田邊さんベンは成人男性が無気力でだらしないけど元の自分を取り戻していく物語、山下さんベンは子供みたいな男性が親(というかエイミー)離れをしながら成長していく物語に感じられるので、ベンの成長のプロセスの演じ方がそれぞれ違うのが面白いなと思いました。
声質の関係もあってか、田邊さんのようにメリハリのついたお芝居は難しいのかもしれませんが、一貫した優しさを感じさせるマイルドなお芝居は山下さんの魅力です。一生懸命成長しようとしている姿が愛おしい。半人前の男の子が一人前になろうと背伸びをしているみたいに、エイミーと別れてからはタングにたくさんの愛情を注いて、たくさんの人と出会う中で刺激を受けて、どんどん大人へと成長していきます。「止まった時間が再び動き出す=再起動」というよりも、未熟なベンの成長物語というイメージなので、多分本来のこの作品のテーマとは少しずれるかもしれないのですが、山下さんならではのベンのお芝居はオリジナリティに溢れていて凄く魅力的でした。
旅から帰ってきての山下さんベンも一貫しているのがいいなーって思います。エイミーに対してちょっとおどけたことを言おうとするときに、根底にエイミーを笑顔にしたいっていう気持ちがあるんだろうなーと思える柔らかい笑顔を見せるんですよね。エイミーへの愛に溢れているのが伝わってくるし、エイミーに想いを告げる瞬間はグッと成長した様が感じられるし、パパになってからはメガネを外したのもあるからかより一層グンと大人の男性に見えるし、終盤の畳みかけるような成長っぷりが凄まじかったです。
多分、ベンの成長を止めてしまっていたのはミナミーの面倒見の良さもあったと思いました。自分で考えて動くということができるようになってからの山下さんベンはマジで一気に大人の階段を駆け上がったような逞しさを見せますから、1幕とのギャップにもやられてしまいます。それこそ1幕最初はエイミーよりベンのほうが幼く見えたのに、2幕終盤は対等な印象を受けるんです。山下さんマジックよ。そういう意味でも岡村さんとのバランスが良いなーと思いました。本当にピッタリです、この2人のバランスは。
色々書いてきましたが、東京公演の山下さんベンの総括をすると、子供というかわんこ。未熟で甘えんぼで半人前。でも凄く優しくて温かい心を持った人。人の痛みが分かるし、自分の痛みも分かる。でもどちらにもあえて気付かないフリをする人。だけど大切な人を心から笑顔にしたいと思っているし、そのためには自分を犠牲にできる人。相手が泣いていたら一緒に泣いてくれる人。相手が笑っていたら一緒に笑ってくれる人。一緒に何かを共有してくれる人。そんな感じですかね。
鳥原ゆきみさんと組むようになったらまたガラッと印象変わるでしょうし、京都、全国と公演を重ねていく中でお芝居がどんどんブラッシュアップしていくとも思います。だから東京公演でしかきっと観られないであろう山下さんベンのお芝居をたっぷり堪能できて幸せでした。元々山下さんは好きでしたが、こんなにガッツリとお芝居に注目する機会はなかったので貴重な経験になりました。何より、贔屓と夫婦役でガッツリ絡むようになってこんなにもバランスの取れた相性抜群の掛け合いができると思っていなかったので本気でビックリしています。
山下さんベンがいてくれたから岡村さんのエイミーもあんなふうに輝けたんじゃないかな。岡村さんのデビューの相手役が山下さんで本当に良かったです。とても素敵なお芝居をありがとうございました!
エイミー:岡村美南
最後で気合い入っていたのかいつになくコンディションが良かったです。でも最後の最後までお芝居を模索し続けていて、土曜日とは違う部分もたくさんありました。東京公演はたった10公演のみの出演となりましたが、その中でも岡村さんなりに思考錯誤して色々考えてどんどんエイミーのお芝居を掴んでいったのかなぁ…というのが伝わってくるラスト公演でした。
でもデビューからラストまで一貫していたのは、「愛することをやめない人」っていうこと。エイミーがこんなにも愛に溢れた女性だっていうことは岡村美南さんのお芝居を通して強く感じました。自分自身が両親に愛されずに育ってきた過去を持ち、そんな過去を乗り越えるために強く逞しく自立し前に進み続け、だらしなくて立ち止まってばかりのベンをそれでも愛し続けた素敵な女性でした。改めて思い返すと、岡村美南さんにしか演じられないエイミーだったなぁ…と感慨深くなりました。
ゆきみさんのエイミーとは違って穏やかで大人びた印象のあるお芝居をしていますが、それも岡村さんの魅力です。感情をパッと表に出さずにいられる忍耐強い人…というと語弊ですね、受け入れられる人。相手の色んな面を認めて受け入れてあげられるだけの器を持った人なんだろうなと思います。でもミナミーの辞書にも限界という文字は存在しますから、ぷつっと限界を迎えてしまうんでしょうなぁ…。コップのフチギリギリまで耐えて耐えて、突然水がこぼれちゃうような脆い人なんです、きっと。
前のブログにも書きましたが、ミナミーは自分よりも他人のことを考えて動ける人なんだと思います。自分よりも誰かのために生きられる人。もちろん自己管理能力も相当高いです。自己管理能力は別として、誰かのために生きられる人っていうのは山下さんベンと似ていますね。でも他人のことで一生懸命になっちゃって、気付いたら自分がボロボロになってしまっている人なんだと思います。だから突然限界を迎えちゃったんだろうなーって感じました。
だけどね、ベンを限界を迎えてしまう最後の最後まで見捨てなかったんですよ。たとえば仕事前にベンに「いってらっしゃい」とキスをされそうになってかわしながらアンディに「OK、アンディ!今日の…天気は?」と話題転換をしつつも、時計をいじっているベンを気にしているんですよね。そういうさりげないお芝居もいいなーと思いました。ああだこうだ言いつつもベンを気にかけていて、ベンに変わってほしい気持ちをずっと持ち続けながら諦めずに向き合ってくれているのが伝わってきました。
一方で、限界を迎えてしまったときのお芝居が今回ちょっと変わった部分があって、グッと来たのでレポします。「あなたと一緒にいると自分が嫌いになりそうなの」というセリフをベンに言うミナミーですが、今回「あなたと一緒にいるとっ……自分が、嫌いになりそうなの」という感じで言葉に詰まるような言い方でこのセリフを発していました。この言葉の詰まり方が凄くリアルというか…。岡村さんの目にも涙が溜まっていましたし、感情が込み上げたんだろうなーと思いました。
この一言も「あなたは何一つ成し遂げたことがない!何一つ!」のセリフも、ベンを傷つけるって分かっていて言うわけじゃないですか。絶対に言いたくなかっただろうな…っていうのが伝わってくるし、言ってる本人が一番つらそうなのが本当に観ていてしんどい。岡村さん、こういうお芝居も本当に上手だなーって思いました。愛想を尽かしたからボロクソ言ってやろうっていうんじゃなくて、どんなに相手を想っていても伝わらない寂しさから来る感情をぽろっと吐き出すことで、何より一番自分自身を傷つけていてマジで胸がギュッとなる思いでした。
でさ、そのあとの「アウディーは私のだから乗っていく。書類はあとで郵送する」って言いながら出ていく支度をするミナミーが笑顔を見せるのもまたつらいです。「そっか、やっぱり伝わらないか…」という寂しさを吹っ切らせるかのごとく、明るめに言うんですよ。別に空元気ってわけではないけど、寂しいだろうに悔しいだろうにそういった感情を押し殺して笑顔で去っていこうとするのがまた彼女らしいなと思いました。とどめの「さよなら」は一転して鋭く言い放ちますけどね。
なので「ふたりのことば」以降のお芝居の緩急が凄まじいのを今回改めて実感しました。それまで比較的優しい口調でたしなめていたミナミーが、言葉を詰まらせてしまうほどに限界を迎えてしまってベンにキツイ一言を浴びせて、でも笑顔で振るまって。感情の起伏が激しすぎますわ。そりゃもう精神的に強く逞しく育ってきたミナミーだからこそできることでしょうね。いつも以上にセリフ1つ1つに感情がこもっていたので、観ていてハッとさせられる瞬間がたくさんありました。
同時に「ふたりのことば」の表情や歌い方、歌声も色々と気付かされることがあります。歌い出しの「あなたとふたり家族になりたいと願った日々は今も鮮やか」は目を閉じながら笑みを浮かべて穏やかに歌うんですよ。ミナミーのこの表情を観ていると、彼女にとってベンと出会ったときから今まで彼に対する気持ちはずっと変わらないんだなというのが伝わってきます。本当に今も鮮やかなんだと思います、彼への気持ちも彼と家族になる未来も。
人って突然心がポキッと音を立てて折れてしまうことがあります。ミナミーは多分そんな感じ。寂しさを抱きつつも、自分自身がこれまで強く生きてこれたから耐えられたし、自分で自分の傷に蓋をすることもできたんだと思います。ナンバーのラストで「もうだめ…!」と限界を迎えて離婚を決意しますが、最後の「もう一度やり直したい」の歌詞はどこか寂しそうに歌っていたのが印象的でした。これが彼女の本心なんだなと。心と体がちぐはぐになっちゃってる感じ。知らぬ間に疲弊してしまっていてボロボロになっていたんだな…ということが伝わってきて、凄くつらかったです。
1幕冒頭のお芝居は回を増すごとにどんどん寂しさが増していったし、心にずしりと重くのしかかるようになりました。ベンのお気楽さが余計に引き立ってしまうくらい、ふたりのすれ違ってしまっている関係がしっかりと表現されていたと思います。特に今回は岡村さんの感情がそのままお芝居に乗っかって、エイミーの言葉や表情として表に出ていたので凄く見応えがありました。
でもこれだけ1幕冒頭で寂しさだとか悔しさだとかを強調させられるから、2幕ラストの結末がより一層幸福感を引き立たせるんだと思います。ミナミーはずっとベンへの想いがブレないので、最後に幸せそうに泣き笑いする彼女を観るとすっごく心が満たされました。お芝居の説得力ですね。エイミーという人物がこんなにもリアリティを持って存在できるのは、岡村さんのこだわりのあるお芝居あってこそだと思います。
愛することをやめない人だからこそ、ベンの元に帰ってくることも凄く納得できたし、ベンからも愛されて子供もできて温かい家族に囲まれて幸せそうにしている姿はより一層感動をもたらしました。ゆきみさんのエイミーももちろん素敵ですが、違った角度からエイミーを演じてこんなにも魅力的な女性に仕上げたのはさすがとしか言いようがありません。やっぱり岡村美南さんって凄い俳優だなと思いました。彼女を信じて応援し続けてきて本当に良かったです。
最後の暗転前に山下さんベンの隣にやってきて肩に頭をコツンと置いて幸せそうに目を閉じている姿も最高に素敵でした。「ふたりのことば」ではきっともう叶わないであろう遠い彼方の夢を思い描くように目を閉じて、掴むことのできない幸せを噛み締めていましたけど、今はもう幸せは彼女の目の前に。彼女を温かく優しい人たちが囲んでくれている。その幸せを享受するかのように、山下さんベンに身を寄せるミナミーが本当に美しすぎました。やっぱり大好きな人の幸せそうな姿ほど観ていて気持ちいいものはありませんね。今回も特にミスなどもなく、最後まで駆け抜け、エイミーとして幸せな結末を迎えられて良かったです。これ以上ないくらいに最高のラストでした!
ざっくりとした総括はこんな感じかな。いやーーー、本当に素敵なのよ。この作品にピッタリな人だなって思いました。愛に溢れすぎていて母性がヤバい。姉さん女房だとか言ってるけどそんなレベルじゃないくらいに愛に溢れすぎです。凄く凄く素敵なエイミーでした。岡村さんがこんな素敵な役を射止めてくださったこと、マジで感謝しかないです。ありがとうございました!
あとは細かい部分をちょこちょこ書いていきます。せっかくなので全体の流れに沿いながら!
まずは登場シーン。セットの2階から登場してくるエイミーですが、岡村さんは階段を下りる前に体を何度か捻るようにして軽いストレッチをします。こういうところ、ミナミーの健康志向っぷりというか気合いの入れようが伝わってきて好きです。
続いて、「OK、アンディ!スリープモード、解除!」。解除を告げるときに両手でアンディを指差すのが死ぬほど可愛いのですが、アンディが「おはよう、エイミー!」って言ったらミナミーがオフマイクで「おはよ♡」ってすっげえ可愛い声で返すんです。これマジで死ぬほど可愛いので必見。母性に溢れすぎていて、まるで溺愛のペットに声かけるみたいな甘ったるい声で「おはよ」って言うので耳が溶けます。岡村さん、こういうとこなのよーーーー。『ウェストサイド物語』でも『パリのアメリカ人』でもこういう死ぬほど可愛い声出す瞬間があったので、久々に不意打ちにやられたのよーーーー。ガチ恋!!!
また、「戦闘開始!」ですが、まず目を閉じて両手をウエストのあたりに持ってきて仰ぎながら精神統一。また右手で何かをサッと空中で掴んでいました。そしたら次はトレンディエンジェルの「チェケラッチョハゲラッチョ」の動きのように両手を左右にシェイクして、永野の「ラッセンが好き~!」のステップ(笑)芸人コンボに私の腹筋が死ぬかと思いました。8公演観てきて毎度色んなバリエーションでやっていたので、ここは日替わり確定ですね!
そして庭にいるタングを見つけたときの「何?」はゆきみさんエイミーのような「何!?」と驚く反応ではなく「何……?えっ?!」という感じで時差で驚くお芝居をします。細かいねぇ、いいねぇ。
タングが家に上がっていて、帰宅したエイミーが持っていたテイクアウトのコーヒーをタングが奪い取ったときの反応。ここ、ゆきみさんは毎度違った反応をしてオフマイク全開で喋り倒しますが、ミナミーは驚いたように両手を口元にやって泣きそうな反応をします。これは毎度固定っぽいねぇ~。特にオフマイクもないけど、田邊さんと組んだら変化出るかな?
あ、ちなみにこの辺のベンと言い合いをするシーンの中で言う「そんなこと言ってないでしょ」の言い方が今回ちょっと芸人さんがツッコミをするような間とテンポとトーンだったので思わず笑っちゃいました。岡村さんのお芝居の緩急マジで好きです。
場面変わってブライオニー宅。渡邉さんポラリスを、覗き込むようにしてまじまじと観察しているのがとても可愛いです。本当にポラリス欲しいんだね~っていうのが伝わってきます。
「Free Free」のお尻叩き合いは今回はぺちぺち叩きまくるやつに戻っていました。まちまりさんには「痛いんだけどー!」みたいに詰め寄られて必死にお尻叩き返されるのを回避していました(笑)いやもうさー、岡村さんとまちまりさんの声の相性抜群なのよね。いかにも法廷に立っていそうな強つよウーマンって感じで聴いていて毎度痺れてしまいます。華やかさがあって凄く素敵な組み合わせでした。
ちなみにこのシーンのラストでブライオニーの車に乗って出勤しようと下手側に捌けていくミナミーですが、デイブにバイバイしたあとにくるっと振り向いたらちょうど捌け口と捌け口の間にある舞台袖の幕が目の前にあって慌てて方向転換して捌けていきました(笑)ほんとこういう隙だらけなところも可愛くて大好きです。
いつものリジーの宇宙博物館の見学ツアー客と1幕ラストの不審者は相変わらずやりたい放題。特に1幕ラストの不審者は観れば観るほど面白さが増してしまうから笑わずに観ることができませんのよ。こんなにも不審者な贔屓を観ることになるとは思わなかったし、直前までのエイミーのお芝居との落差がひどすぎて本当に腹筋崩壊案件なのでこれからミナミーをご覧になる方はぜひ心してください。
あ、ちなみにロジャーにキスされそうになる瞬間の「やめて」の言い方がめちゃ好きです。相手に向けて「やめて」って言うというよりも、咄嗟に出てきたような言い方なのが良いんですよ。本心がそのままぽろっと口から出てしまったような印象を受けました。些細な呟きのような言い方で、彼に対して言うんじゃなくて自分の心が拒絶をしてしまったかのようなニュアンスがあって凄く好きです。やっぱりベンを忘れられないというか、ベン以外の人をまだ受け入れられない。そんな彼女の迷いも感じられるので、だからこそそのあとのベンとの電話シーンはグッと来るものがありました。
2幕。秋葉原のスタッフは特に日替わりということもなく、ずっと隠れオタク設定でした。まあでも猫背の姿勢悪い岡村美南さんなんてこの先絶対に観ることができないでしょうからマジで貴重ですよ。あのスタイル抜群で何でも着こなしちゃう岡村美南さんが、こんなにもダサくなれるのって凄すぎるんですよ。それに謎のスマホ5本指操作だし、色々と面白くて最後の最後まで笑わせていただきました。
ガーデンパーティーのシーンはまだお芝居を模索しているのかそれともバリエーションをきかせながらお芝居しているのか…。「今度は私が傲慢で、家族を恥じてるって」のセリフは「家族を恥じてる~~~!って!」とベンに迫る勢いで指を差しながら言う言い方でした。今回のミナミーは笑い飛ばして過去を克服するタイプのお芝居でした。どちらに転んでもミナミーは家族の話をするとき、寂しさが溢れるので本当に観ていて苦しくなりますな…。本当に「家族」というものに深い傷を負っているし、同時に強い憧れを抱いているんだなっていうことへの説得力がありました。
あと、これは毎度書いてますけど「Gift」の岡村さんの通常より8割ほどトーン高めの声がたまらなく可愛いです。このナンバーって「10代の頃のフレッシュな恋心を思い出しながら歌ってほしい」というディレクションをオリキャスのゆきみさんは初演時に受けているんですよね。多分岡村さんも同じディレクションを受けているでしょうし、若かりし頃のエイミーを表現するために声のトーンをあえて高くしてお芝居するのが凄くメリハリあっていいなと思うし、感心しています。通常時の声のトーンが低めなので、この声の高低差だけで時の経過を表現できるのだからマジで凄いです。
パラオも可愛いんですよねー。腹筋バキバキってことはないけど縦に筋入っているし凄く綺麗なお腹なのでついつい観てしまいます…。そして安斎さんとのバカップルダンスも可愛い。上手から下手に移動してきたときに、「もうー!」って怒ったフリをしてぷんすかしながら安斎さんのあとを追いかける岡村さんがマジで可愛すぎますので必見です。パラオ、演出変更マジで神。
そして2幕ラスト。ここもお芝居やっぱり模索中かなーと思ったのが離婚届を破るシーン。土曜日マチソワは二つ折りを広げずにぐしゃぐしゃにしていましたが、今回は従来通りしっかり広げてベンに突き出してからぐしゃぐしゃにしていました。うん、これもベンを脅しに見せかけて破っちゃうっていうところもミナミーの遊び心があっていいと思います。まあでもぐしゃぐしゃに丸めた離婚届がゴミ箱に入らなくて外に出ちゃってましたけどね(笑)後ほど心臓の音を聞くときの動線で、拾い上げてしっかりゴミ箱に収めていました。
あとはここも同じく模索中かな~というのが、心臓の音が聞こえてきたときの反応。土曜日マチソワではまず口元に手をやって驚いた表情をしてから山下さんベンを見上げていましたが、今回はまず山下さんベンを見てからハッとなったように口元を手で覆っていました。個人的に好きなのは土マチソワの反応ではあるのですが、何よりもまずベンを見るっていうのがミナミーらしいなって思います。ベンと「家族になりたい」と願っていたのは誰よりもミナミーですし、子供ってベンとの愛の結晶じゃないですか。だからベンを真っ先に見て、それから想いが込み上げるっていう反応がミナミーのベンに対する愛情の大きさと深さを凄く表していて素敵だなと思う瞬間でした。当の山下さんベンは心ここにあらずっていう感じでしばらく動けなくなってるんですけどね(笑)
そして今回も心臓の音のシーンでは岡村さんの目には涙が。目頭から伝った涙のあともありましたし、泣いちゃったんだねぇ…って。本当に岡村さん、ドナやエイミーを演じるようになったからか感受性がさらに豊かになりました。1幕では悔し涙を浮かべていたミナミーが、2幕で嬉し涙を流すっていうのがたまらなく愛しくて胸がいっぱいでした。幸せそうな贔屓を観ることが私にとっての一番の幸せです。こんなにも幸せを享受して良いものかと思ってしまうほどに、幸せいっぱいな贔屓を観られて幸せでした。
カテコでは今回がラスト出演だったからか、満席の客席を噛み締めるように眺めていた姿も印象的でした。いつもなら山下さんたちが登場してわちゃわちゃしているのを見て笑っているんですけど、今回は客席を見ている瞬間が多かったです。私が記憶にないだけかもしれないけど、コロナ禍以降で間引きしていない客席で満員御礼状態ってこの作品がもしかしたら初めてじゃないかな、岡村さん…。
『マンマ・ミーア!』は福岡・京都ではなかなか完売しませんでしたし、すっごく久しぶりの景色だったのかもしれません。だからというわけではないですが、凄く噛み締めるような表情が印象に残っています。やり切ったことの達成感と満員の客席から送られてくる拍手への喜びと舞台に立てることの幸せと…。きっと色んな想いがあってのカテコの表情だったのかなと思いました。本当に良い表情でした。
ということで、岡村さんの感想だけで10000文字くらい書いてしまったんじゃないか…っていう感じなのですが、これでもまだまだ書き足りないくらいなんですよ。もっと細かく挙げていけば全部の表情や仕草を列挙できる自信ありますが、まあね…この辺で。
デビューから見届けて9日間。最初から完成度は高かったしオリジナルのお芝居で岡村さんにしか演じられないエイミーをしっかりと演じ切っていらっしゃいましたが、まさかこんなにもしっくり来るとは思っていませんでした。ゆきみさんとは違ったアプローチをしたから、ある意味想像とは違ったエイミー像で不意を突かれた感じもあります。でもディテールにまでこだわってお芝居をして、こんなにも魅力的な女性に仕上がったのはさすがだなぁ…と思いました。
舞台に出演していなかった10ヶ月間をどのように過ごされていたかは知りませんが、ドナを経てきっと色んなことを感じて考えて、このエイミーという役に臨んだと思います。一緒にデビューした山下さんとも稽古を重ねながら作り上げていった役でしょうし、岡村さんの想いが詰まったお芝居だったことは凄く伝わってきました。何より本人が楽しそうに演じているのが証拠です。だから、エイミーという役にチャレンジしてくださったこと、実際に舞台に立ってくださったこと、感謝しかありません。本当に本当にありがとうございました。
そして改めて岡村美南さんのお芝居や歌やダンス、もうすべてが大好きだということを強く実感できて幸せでした。東京公演は10回しか出演されませんでしたけど、それでもたっぷりと堪能できてこれ以上ないくらいに幸せです。今後京都や全国でさらにブラッシュアップして進化していくんだろうなと思うと今から楽しみで仕方ありません。でも東京公演でしか観られないであろうミナミーのお芝居のカタチをたっぷりと目に、脳に、心に焼き付けられたので大満足です。
どうかこれからミナミーをご覧になる方たちに愛されますように。私もこれからも見届けていきます。東京ラストの公演、どの瞬間も本当に最高でした!ありがとうございました!
まとめ
(今回も)めちゃくちゃ長くなってしまいすみませんでした。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!ここまで読んでくださった皆様は猛者です。凄い。エクセレント(万寿夫さんボイス)!
キリ良く10公演で抜けられたので総括もしやすく、ついつい熱く書きすぎてしまいました。どうせ毎回書いていることは同じなんですけどね。改めて書きたくなってしまうんですわ。短期集中的に通ったのもあって、短い間に山下岡村チェンバーズ夫妻に愛着が湧いてしまったんです。本当に可愛くて可愛くて。
前にも書きましたが、この作品はオリキャスのイメージが相当強い作品だと思っています。特にベンを演じた田邊真也さんとエイミーを演じた鳥原ゆきみさんの印象は相当大きかったと思いますし、この2人のナチュラルで息の合った掛け合いは誰しもを魅了したんじゃないでしょうか。私も大好きでしたもん、田邊さんとゆきみさんのお芝居。
だからそんなハードルの高い役を贔屓が演じるっていうこともドキドキしたし、相手役を山下さんが演じるということにも期待と不安が正直ありました。受け入れられるかな?相性はどうかな?など、凄く不透明な感じはあったのですが、いざ蓋を開けてみたらこんなにも素敵な夫婦で…。マジで嬉しかったです。
できることなら10公演全部見届けたかった…。そのうちの1公演は謎の貸し切り公演だったからそもそも行けなかったですけど、オペラ座千穐楽行った日を除くと全通になるんだけど、いやぁ…毎日でも見届けたかった。それくらい大好きになりました。でも無事にコロナにかかることもなく公演が中止になることもなく、最後まで見届けられたので幸せです。
日に日に感染状況が悪化していますが、そんな中でも舞台に立ち続けてくださってありがとうございました。新役ということやセカンドとしてのプレッシャーなどもある中で不安も相当大きかったと思いますが、本当に素晴らしいお芝居でした。やっぱり岡村美南さんは最っ高でした。
自由劇場での岡村美南さんの存在感は圧巻でした!より一層大好きになれた2週間でした。たくさんの思い出をありがとうございます。どうかゆっくり、お休みになってください。
ということで皆さんもこんな私を温かく見守ってくださってありがとうございました!次は22日ソワレ!東京公演My楽です!
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