2022年9月16日ソワレ 劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』@金沢




ロボット・イン・ザ・ガーデン
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キャストの感想

キャストの感想です!

ベン:田邊真也

田邊さんのベン観るの1月22日以来なんですよ。めっちゃ久しぶりすぎました。そして相変わらずお芝居が上手すぎでした。以前観たときとはまるっきり違うお芝居していて、これまで以上に殻に閉じこもっていて内向的な感じがビシバシ伝わってきました。これは相手がミナミーだから?それとも私が観ていない間に田邊さん自身のお芝居がそうなっていっただけなのかな。どちらにしても、救いようがないくらいの喪失感と空っぽな感じが目も当てられないくらい酷かったベンでした。

いやね、笑うところはへらへら笑うのよ。ゆきみさんエイミーだと「で!?」とキレ気味に食ってかかるからその温度差が逆に面白かったけど、ミナミーはガチで「で?」って感じであんまりキレないから余計に冷めてるというか静かな雰囲気が怖いの。なんでこの2人は夫婦になったの…?って思うくらい、2人の生活の中に何も感じられませんでした。

だけど、たとえばエイミーに別れを切り出されたシーンはめっちゃ俯いて静かにそれを受け入れるようにしていたのが印象的で…。思い込む癖がとても強くなった感じがします。そうだよな…こんな自分なんか……って、否定する気もないし笑ってごまかす気にもなれなくて、ただただ喪失感でいっぱいなの。殻に閉じこもって出てこようとさえしない。向き合うこともしないでただ自分を責めてさらに殻の奥深くへ閉じこもる。今回の田邊さんのお芝居は、そんなベンの雰囲気でした。完全にシャットアウトしていて、ミナミーすらその中に入れないような感じで。完全に赤の他人状態になっていたのが観ていてしんどかったです。

あと、相変わらず間の取り方が上手かったな。詰めるところは詰めて間髪入れずに発するし、溜めるところはひたすら溜めていました。タングに「タングのこと、もう嫌い?」と言われた田邊さんベンは、もうセリフ飛んじゃった…?と心配になるくらい溜めてから「なあタング、知ってた?」と発言していました。ベンの中でその言葉に対するさまざまな想いがあったんだろうなっていうのが伝わってくる間でした。何も考えずに生きてるんじゃなくて、色んなことを考えすぎるほどに考えていて逆に生きるのが苦しくなっているタイプのベンなんだと思います。

空っぽだけど空っぽじゃない。誰よりも周りを見ているし考えてる。考えすぎているくらいに考えてる。だけど自分のことになると空っぽで、外側に向けている愛情をもっと自分に注いでほしい。そんな不器用なベンでした。

凄く印象的だったのは、ガーデンパーティーのシーンでブライオニーに「私の弟、ベンよ」と紹介されたときに服装のことを言われてふてくされるようにポケットに両手を突っ込んで俯いていた姿です。本当に自分ってどうしようもないなと自覚して落ち込んでいるかのようで、こういうところでも悲しみから立ち直れずにいる様子が見て取れました。お芝居がとことん細かいです。

だからこそ直後エイミーと出会ってニコニコして舞い上がるかのように飛び回る田邊さんベンが、凄くキラキラ輝いていました。そうか、彼にとってもこの出会いは運命だったんだなと思わせてくれる佇まいでした。

田邊さんベンは山下さんベンほど好き好き~!って気持ちが表に出ているわけではないんだけど、エイミーのことをすっごく大切に想ってくれているのは伝わってくるんです。1幕ラストでエイミーから電話がかかってきたシーンでは、目を閉じて聞き入るようにして彼女の声を聞いていたのが印象的でした。大好きな彼女の声、久々に聞くことができたことの喜びとやっぱり好きだなぁ…と実感するかのような表情が凄く良かったです。

そしてガーデンパーティー直後でエイミーに電話をかけるシーン。電話を切ってから泣く田邊さんベンのお芝居が個人的に良くて、声をあげて泣くんじゃなくて静かに泣いていたんです。嗚咽は漏らしてたけど、声を出して泣くことはしていませんでした。わーんと泣くほど子供でもないし、強がったり寂しさを感じないでいられるほど弱くもなくて。でもこんなときでさえ、彼は殻から抜け出せなくて表に感情を出すことができていなかったのが切なかったです。

だけど、こういう仕草の一つ一つから田邊さんベンにとってエイミーの存在がどれほど大切で愛しいものだったのかを凄く感じました。好きなんだよな、彼女のことが…。愛されることを知らずに育ってきたけどそれでも自立して自分を愛しながら健気に生きている彼女のことが。ラストでエイミーと再会したときに、タングに告げる「馬を見ておいで」というセリフの溜め方も凄く良かったです。彼女と向き合わないとという気持ちを固めるために時間が必要なのと、殻から抜け出した自分がどう彼女と向き合うべきか考えているんだろうな…というのが伝わってきた間でした。

山下さんベンみたいに勢いで言うんじゃなくて、着実に一つずつ丁寧に。田邊さんベンらしい彼女との向き合い方でした。すっごく良かったです。

あとはボリンジャーやタングに対しての物言いも田邊さんベンならではな感じでした。ボリンジャーに対しては相手の出方を必死に探っているような接し方をしていて、そのぎこちなさがリアルだなぁと思いながら観ていました。田邊さんのお芝居は本当にリアルです。そのうえで、ボリンジャーが間違ったことを言ったとしても感情で訴えかける部分と同時に理性で諭すかのように向き合う部分とがあって言葉に重みを感じました。「あんたは…………愚かだ」とボリンジャーにそう言うセリフも相当溜めて「愚かだ」と言ったのが良かったですね。その間が良い。

タングに対しては怒るんじゃなくて叱るのでもなく言い聞かせる感じ。言葉でねじ伏せたり勢いで言い負かすんじゃなく、相手の目を見て相手に伝わるように言っていたのか良かったです。田邊さんベンは本来そうやって誰かと向き合うことが得意な人なんですよ、きっと。相手の本質をしっかり見極められる人。そのうえでどう接するべきなのかを理解できる人。だから、タングとも対話をするような姿勢は凄くハッとさせられるものがありましたし、ベンがちゃんとたくさんのことを考えながら必死に生きている感じも伝わってきて良かったです。

そして、やっぱりタイトルナンバーは田邊さんの歌声で聴くと涙が出ちゃいますな…。やっぱり田邊さんは最高のベンです。改めて田邊さんベンの凄さを実感して、こんなにもお芝居にリアリティがあってちゃんとベンがそこに存在しているっていうのを感じました。この1回しか観れないの悔しすぎるくらい、田邊さんベン本当に素敵でした。とにかく最高…。

岡村さんのことも引っ張ってくれるというか、ちゃんと岡村さんに合ったお芝居をしてくださっているのが良かったです。もちろん2人でどう演じるかは話し合っていると思いますが、それでもちゃんと岡村さんのお芝居を受けて田邊さんがお芝居してくださっていたので、本当に凄い俳優さんだと思わずにはいられませんでした。次回はぜひドナとサムで共演してもろて…(笑)

本当に岡村さんにとっても刺激になったと思います。改めて田邊さんベンにまた会えて幸せでした~!お疲れ様でした!

エイミー:岡村美南

エイミーとして観るのは3月21日ぶりです。本当にお久しぶり。エスメラルダを経て何か変わったかな~なんて思ったりもしたけど、それ以上に田邊さんと組んだことで変わったことが多かったですね。山下さんとはずっと一緒に稽古を重ねてきてデビューして東京、京都とずーっと組んでたから岡村さん自身も安心感があったと思うんです。なんなら年齢も近いし『パリのアメリカ人』で共演もしてたから仲良かったし。

田邊さんとも『キャッツ』で共演はあったけど、こんなにガッツリ絡むのは初めてだし何より大ベテランじゃないですか。初演の頃からベンを演じ続けている大先輩とまさかの夫婦役だもんね、そりゃ緊張するよね。山下さんと組んでるときにはあまり感じられなかったような緊張感が凄くありました。ピシッとしてるというか、いつも以上に田邊さんベンのお芝居をしっかり受けてお芝居している感じ?

だって「Gift」で田邊さんベンが跪いてそれに対して口元に手をやるなんて乙女みたいな仕草、岡村さんは絶対にやらん!って思ってたもん。でもやってたから、岡村さん自身相当田邊さんベンとの掛け合いに緊張感を持ちつつ丁寧さを心掛けて向き合っているんだなっていうのがそれだけで伝わってきました。でも本人にとっても田邊さんとの共演は良い刺激になってますよね、きっと。

年齢も含めて、精神性が相手のほうが優位もしくは対等であれば岡村さんの自慢の包容力は結構薄れるものなのよな~ってふと思いながら観てました。あんなにバリバリ包容力出しまくって何もかも温かく包み込んでくれるような世話焼きミナミーはいずこへ。年下感というか、愛されたいとか大切にされたいとか、純粋にそういう気持ちを持っている女性像だったのが本当に新鮮でした。組む相手によってお芝居の感じや雰囲気が変わるの、とっても好きです。田邊さんベンの演技力の高さも相当影響が大きいと思うんですけど、おかげさまで岡村さんのお芝居が凄く変化しました。

自分が何かしてあげなきゃ・あげたいというスタンスじゃないミナミーって凄く新鮮なのよ。もちろん彼に変わってほしい気持ちはずっと持ち続けていただろうけど、そもそも殻に閉じこもっちゃったベンに対して自分でさえそのパーソナルスペースに立ち入れない状態だからね。完全遮断状態。お手上げ状態なわけです。だけどそれでも彼を嫌いにはなれないし、「ふたりのことば」を歌っているときのミナミーはかなり穏やかで、序盤から何度も目を閉じてうっとり歌っていたのが印象的でした。そうか、今はこんな状態でも彼と過ごした日々は彼女にとっては幸せなものだったんだ…と。

「Gift」のシーンを思い返せば、確かにミナミーにとって彼との出会いは激的なものだったということも納得です。自分をこんなにも大切に扱ってくれるというか、言葉の一つ一つが仕草の一つ一つが表情の一つ一つが、嘘偽りなく嫌味もなく彼の心から生まれたものであって、ミナミーを温かく包み込んでくれる。そんな感覚は生まれてからきっと初めてだったんでしょうね。まさに「舞い上がる、鳥のように」という歌詞にピッタリなほど、このときのミナミーは舞い上がっていました。

今でこそ落ち着いた大人な感じの女性になったけど、ベンと出会った頃は鳥のように舞い上がってしまうほど嬉しくて彼を好きにならないわけがなかったんですよね。うん、そりゃ可愛い。あの頃の気持ちをずっと持っていたかったし、今も持ってはいる。世話を焼くとかそんなお節介なことをする必要はないわけですよ。田邊さんベンは凄くしっかりした大人だから。ただ、彼には自分を大切にすることや愛することを知ってほしいの。閉じこもった殻から出てきてほしいの。ただそれだけ。

自分に甘えてくるわけでもないからね、そもそも突き放すとか世話を焼くとかそんなこともできないのよね。そんな状態だと自分ができることも少ないだろうし、ただただ寂しかったんだと思います。ベンにとって自分って何なんだろうって。嫌いになって別れたわけでもないから、別れてからも彼のことは相当気にしているし。彼が殻を破ってくれるなら、また一緒になりたいわけですよ。

今回、2幕ラストで田邊さんベンが改めて告白をしてきたときに凄く涙ぐむ瞬間があったんですよね。まさに彼が殻を破って以前の自分を取り戻し、あの頃のように自分に真っ直ぐな言葉をかけてくれる、大好きになったあの彼が戻ってきたことの嬉しさゆえの涙なのかなとふと思いました。本当に涙流してて泣き虫かよ~~~~~、可愛すぎる。

あと、心臓の音が聞こえてきた時のリアクションも可愛かったな…。やっぱり両手で口元を覆って俯いて涙ぐんでちょっと前かがみになってたんです。女性らしいっていう表現は適切ではないのだけど、凄く庇護欲に溢れたミナミーでした。田邊さんベンが彼女をしっかり支えてあげてほしい。ストレートに甘えているわけじゃないけど、彼女なりの甘え方なんだと思います。だから仕草の一つ一つも本当にキュンと来るものばかりで、凄く新鮮でした。破壊力が凄すぎたね。ミナミーをこんな風にしてしまう田邊さんベン、罪な男すぎるよ。責任もって幸せにしてくれ…。

いやでもほんとに田邊さんベンとの組み合わせは凄く新鮮だったけど意外と良かったし、私としてはあり寄りのありでした。もう一度観られるものなら観たいです。歳の差ならではのね、彼に甘えたい自分もいるみたいなところが本当に可愛かった。良い化学反応でした…。すっごく良かったです。

あとね、まちまりさんブライオニーに「新しい恋しなさいよ」って言われながら両手でほっぺ包まれてむぎゅってされてたんですよ。死ぬほど可愛くない?????何それ???可愛いんだが???安定のまちまりさんブライとの組み合わせも最高でした…。この2人のつよつよ感マジで好きです。

あとめっちゃウケたのが、見学ツアーの客。ツェザリさんとの組み合わせ初めて観たんですけど、ツェザリさんがなかなか案内してくれないで立ち止まったままだからすげえイラついてて「まだ?」「ねえ」って何度もブツブツ声かけながらオラオラと迫ってました(笑)長手さんのときよりもはるかに治安が悪すぎて厄介な客でした。ツェザリさんめっちゃ困ってたよ、ほんと面白すぎたな。

他のシーンも相変わらずやりたい放題で可愛かったです。こんなにも楽しそうにお芝居している岡村さんを観られるのはこの作品だけですよ…。エイミー枠本当に美味しすぎました。久しぶりにこんなに可愛い岡村さんを観られて幸せでした、マジで。そんで元気そうで安心しました。北陸来たのもあってか、本人も気合い入ってるんだろうな。ここから金沢2日目、富山公演とさらにテンション上げてお芝居に臨んでくることでしょう。今から楽しみです。

何はともあれ、岡村さん充できたので幸せでした。念願の田邊さんとの組み合わせも観れたし大満足。本当に最高に可愛かった。久々に観る贔屓は顔イイな…。大好きです。戻ってきてくれてありがとうございました!

ボリンジャー:野中万寿夫

万寿夫さんボリンジャー観るの結構久しぶりでした。万寿夫さんも今回の金沢公演1日目で抜けていしまうのでしっかり観ねば―!と思いつつ、目が足りませんでした。でもやっぱりこの役は万寿夫さんがとてもしっくり来ますね。初演の頃からずーっと万寿夫さんで観続けてきたのもあって、これこれ!と思いながら観ていましたもん。

お父さんのときとボリンジャーのときとで雰囲気変わりすぎなんですよね。毎回観ていて思うけどやっぱり凄い。つい2ヶ月前まで岡村さんと一緒に『ノートルダムの鐘』のほうに出演されていましたけど、フロローを演じていたとは思えないほど邪悪さが一切ない優しいベンのパパはマジで凄いです。一方でボリンジャーはね、この極悪非道さを自覚していないあたりが厄介で良いなと改めて思いました。万寿夫さんのお芝居は善と悪の境目が分かりづらいのよね。フロローのときもそうだけど、表裏がないというよりは、ハッキリと演じ分けるんじゃなくて地続きのように演じるのが怖いの。

だから悪を悪だと思っていない感じが怖いし、ボリンジャーにとってはそれが当たり前なんだなって考えると恐ろしくて仕方ないですわ。万寿夫さんは人間味のある悪役を演じるのが本当に上手いです。そんな極悪非道な役を演じつつも、その直後には優しいパパに戻るんだからやっぱり凄い。表情を大きく変えてるわけでもないのにさ、凄いよな…。雰囲気だけであそこまでガラリと変わるって、やろうと思っても簡単にできることではないですもんね。さすがプロなんです。久々に観られてめっちゃ嬉しかったです。もっと観たかったよ、万寿夫さん~!ひとまず、連投お疲れ様でした!

まとめ

とにかく観れて良かった、これに尽きます。無事に幕が開くかも心配だったし、台風も来そうだったし仕事も終わらなくて死にそうだったし、自分がこうして金沢に来れて無事に最後まで見届けられたことが本当に奇跡のようでした。とにかく楽しかったです。

海老名公演観に行けなかった悔しさがマジで大きかったから、その雪辱をなんとかして果たせて感無量。ようやく観られた田邊さんベンとミナミーの組み合わせ、本当に良い化学反応でした。やっぱり大先輩と掛け合いをすることって、身が引き締まるんでしょうな。岡村さんのお芝居がこんなにも変化するんだ~ってとても興味深かったです。たった1日だけだとしても、無事に観られて本当に良かった…。

今後実現しない可能性だってあるわけだし、この公演のことは一生忘れませんわ。結論、田邊岡村チェンバーズ夫妻も最高だぞ!ってことです。全部いいね、最高。

ちゃんとコルクも持っていきましたから、夫婦と一緒にしっかり撮ったよ。いやーーー2022年、田邊さんと岡村さんが夫婦になるなんてなぁ…。2020年は阿久津さんと、2021年は芝さんと夫婦になったけど、2022年は田邊さんと夫婦になったかぁ…。面白いな。ベテランと夫婦になっていく岡村さん、面白いけど本人にとっては大きな経験になっていますよね。マジで見届けられて嬉しかったです。

ということで久しぶりの黒キャスボ白文字!全国公演のキャスボに名前載るの久しぶりだもんね~。エイミーとしては、私は初めてのお写真ですわ。いや、そもそもツアーも終盤に差し掛かってるのにようやくMy初日って(笑)いや、My初日を迎えられただけでも幸せなことですね。大満足です。

舞台に立ってくれてありがとう。やっぱり私は岡村美南さんが大好きです。そのことを改めて実感できた今回の観劇でした。

ということで、次回は金沢公演2日目です!キャストも大きく動くので、違いもしっかり楽しんできます!最後までご覧くださりありがとうございましたー!

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