2022年9月17日マチネ 劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』@金沢




ロボット・イン・ザ・ガーデン
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キャストの感想

キャストの感想です!

ベン:山下啓太

いやー本当に山下さんベンすっごくお芝居の雰囲気が変わっていました。ワンコみたいな甘えた系男子じゃなくなっていて、だらしなさも比較的なくなっていたかも。ただただ自信喪失しているのと人見知りな感じっていうのかな。以前は勢いがあったしテンションが上がるとはしゃぎまくっていて、精神年齢も低めな感じの男の子っていう印象がありました。

でも今回の山下さんベンは落ち着いていて大人びていて声を荒げることもなければはしゃぐことも少ない。とても静かな青年っていう印象でした。物腰の柔らかさはあるんだけど温度を感じないっていう表現が近いかもしれない。以前のような温かさのあるまろやかな感じではなくて、温度を感じにくくて掴みどころのないもどかしさみたいなものがあったの。

精神年齢の低さを引き上げて、殻に閉じこもっちゃっている中年男性の引きこもり感が強調された印象があります。若さゆえの勢いみたいなものが削ぎ落され、年相応の静けさと落ち着きを持った男性になったことで、逆にミナミーのほうがちょこっと若く見える瞬間もありました。

とにかく喋るときの声のトーンがさ、山下さん特有の高めのはしゃぐようなものじゃなかったんです。ほとんど落ち着いた細々としたトーンで、叫ぶというより囁く感じ?それが逆に言葉の重みをもたせていたようにも思います。以前までは勢いで言っていた部分もあっただろうから、エイミーへの好きっていう気持ちも全面に溢れていたりしたけど(それはそれでめちゃ可愛い)。

でも今回はどんな物事においても、ちゃんと自分の気持ちを相手に伝えるっていうことを第一に行っていた気がします。以前までは気持ちを「ぶつける」っていう表現が近かったと思うんだけど、今の山下さんベンは気持ちを「伝える」というほうが表現として正しいです。相手に伝わるように、感情をぶつけるんじゃなくて理性を働かせて冷静に誠実に自分の想いを告げるっていうスタンスになりました。だから凄く大人びているの。自立もしているし、自分の想いを一方的にぶつけるだけの幼稚なベンではなく、凄くかっこいいベンになっていました。

だから2幕ラストでエイミーに気持ちを伝えるときも、「絶対に諦めたくない!」「君が好きなんだ!」と感情をぶつけるんじゃなくて「絶対に諦めたくない…」「君が好きなんだ…」と自分の気持ちをちゃんと丁寧に伝える感じで言っていたのが印象的でした。凄く誠実で、自分のこの想いを大切に打ち明けるように、静かに落ち着いて一つ一つ丁寧に。若さゆえの恋愛じゃなくて、大人ならではのゆっくりじっくり温めるような恋愛模様でした。凄くビターな感じもあって新鮮で良かったです。

でもね、可愛い一面もちゃんと節々にあったんですよ。

たとえばカトウに「クリスマスはヒューストンで過ごしてみるとか」と提案し、それに対してカトウが「電話してみます」みたいなことを言ったら、その返事を聞いてガッツポーズしていました。めっちゃ可愛かった。あなた人のことより自分のことどうにかしなさいって思っちゃった。

そして「Gift」でも同じようにガッツポーズしていたシーンがあって、エイミーにコルクをあなたが持っててと言われる流れで「僕でいいの?」と聞いたら「ええ、あなたが!」と返したエイミーに、彼女には見えないように嬉しそうな顔してよっしゃ!ってガッツポーズしてました。あまりにも可愛すぎでは…???当時、山下さんベンにとってエイミーと心を通い合わせられたことがどれだけ嬉しいことだったのかをこの仕草で痛感しました。

以前みたいに分かりやすくエイミーへの愛情が表に出ているわけじゃなくなったけど、内に秘めてる彼女への想いは変わらないんです。むしろもっとその愛情が深くなった気がするの。大人びた印象だけど、それは同時に彼女のことを真剣に考えているからでもあると思います。ベンにとって彼女の存在がどれほど大切で、勢いだけでどうにかできるものではなくて、彼女への想いと彼女自身に真剣に向き合いたいからこそのあの態度なのかなぁ…と思いました。そう考えると、今回の山下さんベンはヤバいですよ。

一番可愛い~!ってなったのはタングから、エイミーから心臓の音が2つ聞こえるということを教えられたときの反応です。エイミーが「それって本当に?」と聞いてタングが頷いたのを見て、山下さんベンはその場にしゃがみこんで口元に両手をやって驚きつつ泣いていたんです。可愛すぎかよ…。嬉しかったんだね、子供ができたこと。妻の妊娠を素直に喜んでくれるベンでいてくれて良かったです。

心臓の音が聞こえて最後暗転していくときに、ミナミーと見つめ合って山下さんベンがようやく以前のようなワンコみたいな笑顔で笑っていたのが私の中ではドンピシャに好きなポイントでした。あぁ、どんなお芝居していても山下さんベンは山下さんベンなんだな…って思えた瞬間で、凄く救われた気持ちです。だから本当に嬉しかったです。

今回、ガラッと変わったお芝居の雰囲気に驚きすぎて色々と頭の中がパニックになっていたけど、それでもやっぱり山下さんベンのことが大好きだと実感できた観劇になりました。根は優しい好青年だから、どんなベンだとしても愛しさは募るんです。ミナミーのことを今まで以上に深く愛してくれるようになったこともたまりません。本当に最高。久々だから細かい部分までしっかり見切れなかったけど、今の山下さんベンも観れば観るほど良いなと思えるポイントたくさん増えそうです。

何はともあれ久々に山下さんベンを観られて嬉しかったです。大人びたけど泣き虫なのは相変わらずだから、愛しさいっぱいのベンは健在でした。戻ってきてくれてありがとうございます!

エイミー:岡村美南

田邊さんベンと組んだ翌日なのもあってか、かなり乙女なエイミーでしたわ。山下さんベンのお芝居が変わったことも影響しているかもしれません。とにかくただの世話焼き姉さん女房ではなくて、対等な関係のとして、世話も焼くけどそれだけじゃなくて彼に愛されようとする一面も垣間見えたエイミーでした。

でもだからこそ1幕冒頭の山下さんベンの振る舞いや佇まいには寂しさも感じているようで、自分の想いが彼に伝わらないことの悔しさだったりもどかしさだったり、彼がそんな状況すらも受け入れてしまっていることだったり…に唇を震わせていて、涙ぐんでいました。鍵を取って「アウディは私のだから乗っていく」と言うときに俯きながらさりげなく目元を手で拭っていた姿を観て、凄く胸が締め付けられました。岡村さんがこんな序盤から泣いてるの観たことないので、なんかしんどかったな。

それこそ私が今回の山下さんベンに「私の知ってる山下さんベンじゃない…」という喪失感を抱いたのと同じように、長年連れ添ったミナミーにとっても「私の知ってるベンはもういない」という喪失感が強かったのかなぁ…というのをいつも以上に強く共感しました。ムキになって言い返すことすらしないのよ、今回の山下さんベン。本当に覇気もなくて静かにただ受け入れるだけ。そんなの張り合いもないし寂しいよね。そんな今回の山下さんベンのお芝居に、ミナミーも相当グッとくるものがあったのかもしれません。

そんな夫婦仲ではあったけど、ミナミーのほうはベンのこと好きなのやっぱりダダ洩れしていて可愛いんですよ。今回の山下岡村ペアはとにかくミナミーのほうが好き好き~!っていうの伝わってくるから可愛すぎる。同時に切なすぎる。

ガーデンパーティーのシーンなんかはより一層物腰が柔らかくなっていて、やっぱり以前に比べて乙女度が増していました。でね、ミナミーが「Gift」を歌い始めるのって彼を元気づけたい気持ちと同時に彼に「あなたは素晴らしい人なんだ」って分かってもらいたい気持ちがあったんだな…っていうのを今回感じました。歌い始める前に、自分のことを否定するベンに対して「そんなことないわ」と声をかけますが、そこから曲のイントロが流れて歌い始めるまでの数秒。ミナミーは一切ごまかすように笑ったり照れたりしないんですよね。優しく微笑んで、じーっくりベンを見つめてくれるの。彼女が真剣にベンのことを想ってくれていて、誠実に向き合ってくれているんだなっていうのが伝わってきました。

ただただ夫婦の馴れ初めのラブソングなんかじゃなくて、ミナミーからのエールでありラブレターのようなものなんだなって。一世一代の告白なんでしょうな。だから自分自身、彼に対して真剣な気持ちでこの曲を歌い始めて彼に気持ちを伝えたわけですわ…。まあ、ちょっと照れるようにしながらファサァ~ッて翼を広げるポーズしちゃうけどね。

出逢った頃からミナミーは彼と正面から向き合ってくれていて、彼のことを笑ったりからかったり否定したりせずにずーっと応援してくれていたんだなぁ…ということを改めて気付かされた今回の「Gift」でした。ミナミーのこのナンバーでの向き合い方というか振る舞い方というかアプローチのスタンスがあまりにも好きすぎました。凄く良かった。

「君こそくれたよ僕にGiftを」は山下さんベンは跪いて歌わないから、田邊さんベンのときにやっていた口元に手をやって驚く乙女の仕草はやっていませんでしたけど、すっごくニコニコしながら聴いていましたよ。本当に可愛いね。恋してる瞳をしていたね、可愛いね。ミナミーは出逢った頃から今までずっと何も変わってなかったんですよね。変わっちゃったのはベンだけなんですわ。

そんな甘ったるい「Gift」の直後の電話シーンもね、良い表情していました。「君の親友の弟だよ!」と空元気な山下さんベンの声を聞いてちょっとだけ笑っていたんですけど、そのあとの「さよならエイミー、幸せにー!」で一気に表情が硬くなって一瞬泣きそうな顔をしたのを観て、心を潰されそうな感覚になりました。ベンのこと、まだやっぱり好きなんじゃん…。喪失感が大きいよね。今回のミナミーのお芝居は本当に喪失感でいっぱいで、とても観るのがしんどかったです。

そして2幕ラスト。彼のことを好きな自分を否定しない、自分を肯定した自分で戻ってきたミナミー。以前に比べてだいぶ角が取れて丸くなった雰囲気がありました。なんならとっても乙女。「他の人とは付き合えなかった!あなたが恋しくて」の言い方もベンに想いを告げるところとかも、声色やトーンがいつもより気持ち高めで明るめで、すっごく可愛かったです。今回も泣いていて可愛かったね…。ミナミー本当に可愛いね…。

でね、ソファーに座りながらタングに心臓の音を聞かせてもらっているときに、心臓の音が聞こえてきたら一瞬驚いたような表情をするんですけど、そこからゆっくり目を閉じて耳を澄ませて音を聞いていてちょっと微笑んだりしていて、この瞬間の喜びを静かに噛み締めるようにして味わっていたのがすっごく良かったです。その日そのときの感情をそのまま演じているんだなぁ…って。だから凄くリアリティがあって素敵でした。本当に可愛かったです。

1幕から2幕にかけてのベンとの掛け合い、今回はいつも以上に見応えがあって最高でした。久々の共演ってのも相まってお互いに懐かしさと同時に新鮮さも感じていたのかもしれませんね。だから余計に掛け合いもリアルに感じたのかも。本当に良かったです。

そしてやっぱりね、山下さん相手だと岡村さんがかなり伸び伸びしていました。田邊さんと組んでいたときの節々から感じられた緊張感みたいなものはかなり薄れていたので、やりやすかったんでしょうな。もう本当に可愛いのよね…。カテコでもさ、山下さんと一緒にタングかついできたから(笑)わちゃわちゃやりやすいんだよね。本当に可愛かったです。

今回はちょっとしたミスとか色々ありましたけど、お芝居に関してはとにかく最高でした。相変わらず可愛いしもう終始目が離せなかったです。今回も素晴らしいお芝居をありがとうございました!

まとめ

あっという間に金沢公演が終了。この2公演で2組の夫婦を観られて贅沢な日々を過ごせました。色々とトラブルも多くてヒヤヒヤしましたけど、何はともあれ無事に幕が閉じて良かったです。

どの作品でも言えることですけど、キャストが1人変われば作品そのものの印象も大きく変わるもんなんですね。田邊さんベンから山下さんベンへとバトンタッチしたはいいけど、山下さんベンが以前とまた大きくお芝居変えてきてるから頭パニック状態って感じでした(笑)

でも本当に楽しかったし面白かったです。お芝居が変わるって、新鮮だったな。

金沢公演での収穫はたくさんあったので観に行けて良かったという気持ちでいっぱいですが、次の富山公演こそが一番の本命です。なんならこの日を楽しみに2022年を生きてきたようなもんです。私にとって最高のバースデープレゼントになることでしょう。

今回も素晴らしいお芝居でした。ちょこちょこハプニングやらはあったけど、冷静に対処していてさすがでした。そして相変わらず可愛くて良い奥さんになること間違いなしって感じの貫禄ある佇まいになってきて最高でした。本当に終始可愛い。大好きです。

さて、次は岡村美南さんの地元・富山公演です。どうか無事に幕が開きますように。私にとって最高の席で最高の観劇ができることを祈っています!ということで、今回も最後までご覧いただきありがとうございました!

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