キャストの感想
キャストの感想です。
カジモド:金本泰潤
2019年9月28日以来の泰潤さんカジモドでした。ちょうどその日が初めて泰潤さんカジモドを観たときだったので、今回が2回目となります。初見のときのフロローが川口竜也さんだったのもあって、凄く印象に残っていたカジモドだったんですよね。だからまたいつか絶対に観たいと思っていて、3年越しにようやく念願叶いました。
泰潤さんカジモドは体躯が大きく声も太めなので、達郎さんみたいなパワー系カジモドですね。声をしわがれさせて喋りますが、ガーゴイルと喋るときや歌うときは滑らかになります。カジモドだけの世界のときと、他人と関わるときとで喋り方に変化をつけるタイプのカジモドだったので、観ている側としてもスイッチの切り替えが凄く分かりやすかったです。
そして、フロローが容姿が醜いことやジェアンの堕落した血がカジモドにも流れていることなどを繰り返し説いてきただろうから、自分が教えに背くことをしたり人に理解されないことを言ったりすると、泰潤さんカジモドは自分で自分の頭や手を叩くんですよね。自分で自分を傷つける行為をするの、確か達郎さん…?あっきー?もやっていましたよね。だからこの仕草を観たときに懐かしさがぶわっと込み上げました。
でもこの自傷行為が本当に切なくて、カジモドは決して何も悪いことをしていないのに…って思っちゃうわけです。石の友達がいることだってカジモドにとっては事実であり真実なんですし。だからそうやって自分を傷つけるカジモドをエスメラルダが「ううん、そんなことない」って否定して止めてくれたのが凄く救いでした。
泰潤さんカジモド、純粋すぎるほどに純粋なんです。だからすっごく愛しいし可愛い。寺元さんカジモドのような小動物的な可愛さとは違う、人間としての可愛さがあります。体は大きいし見た目も確かに怪物みたいな迫力があるんです。見る人が見れば怪物に見えるかもしれない。だけど、心は本当に美しくて綺麗。エスメが死ぬ間際にカジに言う「あなたも美しいわ」って言うのは、内面から滲み出る美しさのことを言ってるんだと思います。今回観ていて、泰潤さんカジモドは本当に美しいと思いました。
あと、第三者視点でのカジモドは凄くしわがれた声ですけど、カジモドの心の声や歌うときの泰潤さんは凄く綺麗な声していてギャップにやられました。爽やかで優しさに溢れた歌声で、キュンと来てしまいました。その一方で力強い歌声も素敵で、特にMOSは圧巻。芯の通った太めの声で、カジモドの決意と心の叫びがそのまま歌声に乗っていてグッと来ました。
ちなみにMOSはしっかりハイトーンも上がり切ったのですが、最後の「閉ざして」のロングトーンで途中息がきつくなってかフェードアウトしていくような終わり方でした。でもそれも凄く良くて、カジモドがすべてを出し切って息も絶え絶えになっていく感じがしたんですよね。完全燃焼しきった感じがカジモドの想いを昇華させたような気がして、逆に良かったです。
で、何より鳥肌が立ってしまったのは冒頭にも書いたんですけど、フロローを投げ飛ばすシーンの全身の骨を折る表現。ボキッボキッて音が聞こえてきそうなくらい、関節を砕いて曲がった体を起こしたお芝居をしたんですよね。その後、フィーバスの元へ向かうときも関節が変な方向に曲がった状態で歩いていて、エスメを持ち上げるときも凄く歪な感じで歩いていて…。とにかく骨が折れた表現があまりにもリアルで、怖かったです。本当に凄すぎて衝撃を受けました。
他にも書きたいことはあったんですけど、最後のこの骨を折る表現ですべての記憶が吹っ飛びました。それくらい衝撃的だったので、泰潤さんカジモドを観ることができて嬉しかったです。やっぱり記憶通り、凄いカジモドでした。また観たいです!
フロロー:野中万寿夫
万寿夫さんフロローの善悪表裏一体な感じ、何度観ても怖いですね。凄く人間臭いだけに、リアリティがあるんですよね。こういう人、日本中探せば何百人何千人といると思うんです。万寿夫さんフロローは聖職者という尊い地位の人ではあるけど、人間としてはあまりにも普通というか…。
誰にだって憎しみを抱いたり負の感情でいっぱいになったりすることはあるじゃないですか。フロローは聖職者という神聖なはずの役職者でありながら神に背く行為をしてしまったこと、そして権力を振りかざして私的な感情をたった一人のジプシーに向けて命を奪おうとしたこと、これが誤りなだけで、もし聖職者でなければこんなことにはならなかったと思うんですよ。
愛が憎しみに変わってしまうことなんて、決して珍しくはないんです。フロローのやり方は確かに惨いんだけど、それは彼が聖職者だから特別大事になっているだけとも思います。そういうところも含めて、万寿夫さんフロローはとても普遍的な人間だなーって思いながら観ていました。だから怖い。どんな人間だって怪物になりうる可能性を秘めているっていうのをあまりにもリアルに体現しているんですもの。
万寿夫さん、特別怖いお芝居をするわけでもなく、自然体なままお芝居するからそれが余計に怖いですよね…。私、これまでは芝清道さんのフロローみたいに、善人だった頃と悪人になってからとで180度変わってしまうようなタイプのフロローが好きだったんですけど、一周まわって万寿夫さんフロローの怖さをようやく実感して凄く好きになっています。
そんな中でヘルファイヤーは今回も激アツでした。アレンジの利かせ方も含めて本当にかっこよかったです。万寿夫さん、おそらく『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の栃木公演には出演されると思うのでそろそろ抜ける気がするんですよね。だから今回もたっぷり堪能できて嬉しかったです!
エスメラルダ:岡村美南
私の贔屓は今回も最高に素敵でした。やっぱりお芝居は柔軟になっていたし、声の出し方・歌い方も変わっていました。さらに喉を開くようになったのかな。ドナやエイミーのお芝居が活かされている部分ももちろんありますけど、それとは関係なく岡村さんの発声方法が以前と変わっているような気もしていて、正直正解は分かりません(笑)
ただ、エスメの居方は変わったなっていうのは確かです。やっぱり凄く堂々としている佇まいになっていました。たとえば1幕のGod Help直後のフィーバスとのやりとり。目を逸らすフィーバスに「私の目を見てもいいのよ」というセリフを投げかけますが、このセリフも以前なら「いいのよ~?」って挑発するような、からかうような言い方をしていたんですけど、今回は諭すというか逃げも隠れもせず堂々と…っていう感じで言っていたのが印象的でした。
小細工を仕掛けるでもなく、ありのままの自分でい続ける。なんかそれが凄く岡村さんエスメらしくて好きだなーって思いながら観ていました。
あとはバスティーユでフロローがスカーフを取り出して迫ってくるときも、以前なら逃げ場を探すように視線を後方に彷徨わせていましたけど、今回は首にスカーフをかけられる直前までフロローから目を逸らしませんでした。逃げない、堂々としている。恐怖と不安でいっぱいだろうに、それでも勇敢に立ち向かう。そんな姿が強烈に印象に残りました。
岡村さんエスメは本当に勇敢です。別にうわべを取り繕っているわけでもなく、自分の心に正直に生きているだけっていうのが凄く説得力あって、本当に真っ直ぐでかっこいいです。その内なるかっこよさがそのまま外見の美しさにまで反映されている感じ。背筋がピンと伸びて、スッとした鋭い眼光。でもその目つきが穏やかになったとき、殻が破れて一気に温かさでいっぱいになる。そのメリハリのつけ方が上手すぎる。
毅然としているのに雰囲気が急に和らぐし、かと思えばスルッと相手をかわす鋭さもあるし、なかなか懐に入り込めないんですよね。そんな彼女の隙を奪えたのがフィーバスだったっていうわけですけども。でも、フロローが「魔術を使う」と言いたくなるのも正直分かります。掴みどころがなくて、それがまた魅力なんだろうなーって思いました。彼女はあくまで自然体なのに、周りからすると非常に多面的。だからあんなにも魅了されてしまうんだなっていうのを再認識しました。
で、久々の泰潤さんカジモドとの組み合わせを観たわけですが、岡村さんエスメは泰潤さんカジモドに凄く優しいですね。別に寺元さんカジモドに対して優しくないって言っているのではなく、それ以上に泰潤さんカジモドには凄く繊細に接している感じがありました。その理由としては、泰潤さんカジモドの感想で挙げたように彼が自傷行為を働くのを目の当たりにしたのもあると思います。
彼自身でさえも時として彼自身の敵になってしまう泰潤さんカジモドを見て、味方になってあげたいっていう気持ちはあったんじゃないかなって。だから安心させるように、そして彼が一言一句しっかり聞き取れるように、優しく、丁寧に話したのかなって思いました。こればかりは今回の観劇だけで判断はできないので、もう少し回数観ていつか相対的な所感を書きたいです。
ちなみにTOTWの「二人でいる」のジェスチャーは泰潤さんカジモドがやらなかったので岡村さんエスメもやりませんでした。残念!観たかったぜ~~~~!
そして今回も特に魅了されたのはSomedayです。岡村さんエスメの想いがひしひしと伝わってくる佇まい。全身全霊で祈りを捧げるように、邪念をすべて捨てて負の感情を取り払って、そっと目を閉じながら歌っていた姿が印象的でした。真っ直ぐ前を見据えて歌う姿も凄く神々しくて、後ろから光が差し込む中で歌うあの瞬間は本当に女神になってしまったんじゃないかと錯覚するほどです。
想いとともに涙が込み上げて歌えなくなってしまう瞬間のお芝居もすっごく上手になりました。別に下手だったわけではないけど、感情の込み上げ方が凄くリアルになった印象です。この辺はドナやエイミーを経たからこその変化かな、多分。そしてそんな岡村さんエスメの想いを引き継いでくれる神永さんフィーバスがまた良いんですよ…。岡村さんエスメ×神永さんフィーバスは沼かもしれません。
ひとまず今回はこんなところですかね。Somedayがめっちゃ良かったのと、TOTWがいつ観ても天使っていうのを再認識した観劇でした。エスメラルダという役は本当に岡村さんにピッタリです。どの役を観てもハマり役だなとは思うのですが、エスメは本当にしっくり来る。岡村さんも無理をして演じている感じが一切ないので、自然体のままお芝居に臨めているんだろうなーっていうのが伝わってきました。だから観るたびに愛しさが込み上げてしまって胸が苦しいですわ…。恋。
今回も素晴らしいお芝居でたっぷり魅了されました。大好きなエスメのお芝居堪能できて最高に幸せです!
フィーバス:神永東吾
デビュー4日目とは思えないくらいしっくり来すぎて、マジでフィーバス何年目ですかと問いたいくらいです。デビュー当日よりも肩の力を抜きつつ、1幕は伸び伸びとフィーバスのお芝居を楽しんでいる印象すらありました。そのお調子者な感じ、すっごく神永さんらしくて好きです(笑)
神永さんフィーバスはおちゃらけすぎてコミカルな部分もあってそれがまた歴代フィーバスとは違う雰囲気なので観ていて新鮮さを感じるのですが、それも神永さんフィーバスだから許されるみたいなところがあるんですよね。神永さんだからこそ成り立つフィーバス。もうオリジナリティに溢れています。素敵!
God Help終わりにエスメと対峙するシーンでは、エスメを捕らえたときに彼女の胸元に回した腕をエスメに指でなぞられて、気持ち良かったのかエクスタシーを感じて昇天しそうな顔をしていました(笑)どこまでもスケベで面白いです。
ラポンテでエスメにキスしたあと、エスメが逃げ出そうとしたときに追いかけるように言う「どこに行けば会える!?」は全身全霊の叫びのようで必死さが伝わってきて笑いました。神永さんって感情が昂ったときに発する声が凄く野性的なので、凄く分かりやすくて好きです。
細かい部分を挙げたらキリがないので、一番書きたいポイントを書きます。今回魅せられたのは、2幕のバスティーユのシーン。デビュー当日もこのシーンは魅せられたんですが、今回はさらに引き込まれてしまいました。
Somedayを歌いながら祈りを捧げるエスメを、フィーバスはやや後方の位置から眺めているんですよね。この瞬間のフィーバスって、歴代の人たちのお芝居を思い返すと、どこにもぶつけようのない憤りの感情を必死にしまいこんで虚しさでいっぱいになっている表情をしている印象がありました。しかしながら神永さんフィーバスは、そんなエスメを見て口元を震わせて涙を溢れさせながら優しく微笑んでいたんですよ。
苛立ちでも怒りでも悔しさでも虚しさでもなく、穏やかに笑うんだ…って凄く衝撃を受けました。負の感情を一切取り除いてただひたすらに祈りを捧げて未来に自分の想いを託すエスメを見て、フィーバス自身もその想いを一緒に託したいと思ったのかもしれません。彼女についていくと決めた神永さんフィーバスは、すべてを捨てただけある覚悟をここでもしっかりと見せてくれました。
こうやってフィーバスがエスメの想いを一緒に未来に託し、彼女と共にあり続けようと心から思えたからこそ、エスメのあとを追うように歌い始めるんですよね。エスメ「いつか人がみんな」、フィーバス「人がみんな…」というように。そして彼がついてきてくれたことにエスメはゆっくりと振り返って、彼の元へ歩み寄ります。しかしエスメは涙が込み上げて歌えなくなってしまう。だから、彼女の想いを引き継ぐようにフィーバスが「来ると祈ろう」と続けて歌ってくれるんだなって、ようやく…ようやくSomedayの歌の流れを理解できました。
そのまま泣き崩れたエスメを後ろから優しく抱き締めて歌う神永さんフィーバスが、囁くように彼女を安心させるように優しく微笑みながら穏やかに歌うっていうのも、「彼女を安心させたい」っていうだけじゃなくて、エスメの想いを引き継いで未来に託すと決めたから、エスメだったらきっとこうすると思いながらその表情を浮かべたのかなぁ…とも思いました。フィーバスもエスメと同じように、邪念をすべて取り払い、ただ純粋に未来への祈りを捧げたんだなと。
もうこんな理不尽で拷問され牢屋に入れられ夜明けには処刑されてしまう、そんなときですら、神永さんフィーバスはフロローを憎むのではなく、エスメについていくことを決意したっていうのがたまらなく好きで…。神永さんフィーバスの解釈があまりにもドンピシャに好きすぎて、完全に沼りました。ここの神永さんフィーバスのお芝居はヤバいですよ。本当に神がかっていました。
1幕であんなにおちゃらけていた神永さんフィーバスが、まさかこんな穏やかな表情を浮かべるようになるなんて思いもしなかったんですよね。だからギャップがヤバいし、エスメについていくと決めた覚悟の強さを凄く感じられたお芝居の説得力が凄すぎました。
で、そのあとクロパンに助けられたフィーバスが民衆に訴えかけるナンバーがあるじゃないですか。あそこの神永さんフィーバスも神がかっていて、もう喉を枯らす勢いで全身全霊の叫びとして歌うんですよ。それがかっこよすぎて、どれだけエスメのことを愛してるのって思ったし、エスメの想いを引き継いで未来に託すと決めた彼の、今からでも人々を変えたいという思いが凄く伝わってくる歌声でした。
いやーもう1幕と2幕とでお芝居のギャップが本当に凄すぎます。2幕の神永さんフィーバスのお芝居の解釈は私的にめちゃくちゃ好きだったので、今回で一気に神永さんフィーバスの虜です。岡村さんエスメとの組み合わせも凄く良くて、2人のお芝居の解釈が私好みなので沼だな…と思った次第です。
デビュー4日目でこれなので、今後の神永さんフィーバスの進化が楽しみすぎますね。今後は神永さんフィーバスにも注目して観劇したいと思います。今回も神がかったお芝居を堪能できて嬉しかったです!
まとめ
自分も大人になったな~って感じた観劇でした。今回、この作品のテーマを深掘りするかのように現実世界とリンクさせながら観劇したことや、俳優さんのお芝居の解釈を踏まえて観劇していったことって、多分自分自身が色々と経験を積んでたくさんのことを知って考えて感じてきたからこそできたことだと思うんです。
子供のときに観るのと大人になってから観るのとでは印象が変わる、なんてよく言うけど、たった数年だとしても自分がいかに年齢を重ねたのかっていうのを凄く実感した観劇でした。経験豊富になればなるほど、観劇で得るものの深さも変わってくるのかもしれませんね。
まあそんな偉そうなことを言いつつも、内心では岡村美南さん綺麗可愛い好きぃ…って思いながらエスメをガン見していました。フロローの気持ちがよく分かるよ。私の贔屓、マジで可愛いんだもん。ありゃ誰だって好きになっちゃうよね。圧巻ですもの。
ひとまず、泰潤さんカジモドを観たいという今週の目標は無事達成できたので満足です。あとは観られるうちに無理のない範囲で岡村美南さんエスメに会いに行ければ…と考えています。今回の観劇で通算193回目の岡村美南さんだったので、残り7回…。結構な出費だから行けるか分かりませんけど、悔いのないようにしたいです。
今回も素敵なお芝居をありがとうございました。改めて、2022年に岡村さんのエスメが観られることに感謝。ファンとしてこれ以上幸せなことはないです。
ということで、長くなりましたが今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
コメント