2022年6月9日マチネ 劇団四季『ノートルダムの鐘』@横浜




ノートルダムの鐘
この記事は約9分で読めます。

キャストの感想

キャストの感想です!

カジモド:寺元健一郎

今回も寺元さんカジモドのお芝居は圧巻でした。なんかこの1週間で見違えたのではと思うくらいにどんどん良くなっていって、凄くビックリしています。クセがなくて割とシンプルなカジモドっていう印象があったんですけど、そのシンプルな基本のお芝居に深みが増している印象です。日に日に熱量の高いお芝居になっているから、観ているこっちまで惹きつけられてしまいます。

そして村さんフロローとの組み合わせは寺元さん自身初めて?だと思うんですけど、凄く良かったです。まさにアニメ版のカジモドとフロローを観ているかのようでした。村さんフロローが非常に厳格なので、カジモドが常にご主人様の顔色をうかがいながら接しているのが凄く伝わってきました。ビクビクとした寺元さんカジの表情は子犬みたいで凄く可愛いです。

2019年の京都公演で観た川口竜也さんフロローとの組み合わせのときの寺元さんカジモドほど怯えてはいないですけど、閉塞感と抑圧感でいっぱいだったんだろうなーというのが感じられました。だからこそOut Thereでの伸び伸びとした歌声や幸せそうな表情が凄くキラキラ輝いていて、そのギャップに泣かされそうになります。寺元さんカジモドは精神的に大人びた印象があるので、きっと誰よりも色んなことを考えたり悩んだりしているような気がしました。感受性豊かなカジモドです。

MOSは今回もラストのロングトーンを絶唱していて、この前のは日曜日で翌日休演日だからってわけではなかったみたいです(笑)喉をいじめまくる歌い方は思わず心配になっちゃいますけど、カジモドの感情爆発が全身に伝わってくるのでグッと涙が込み上げてしまうんですよね。寺元さんカジのMOSはデビュー当時から好きでしたけど、改めて大好きになりました。

で、やっぱり寺元さんカジモドの一番好きなポイントは2幕ラストの骨を粉砕する身体表現。「悪人は、罰を、受けるんだ!」のグギギギ…って感じの体の起こし方は毎度鳥肌が立ってしまいます。そしてフロローを投げ飛ばして、エスメの亡骸に縋りつくフィーバスの元へ向かうときも、よたよた…とした歩き方で両腕の関節が変な感じに曲がっている表現をしていて、もうその姿を観るたびにブワッと涙が溢れてしまい、個人的号泣ポイントです。

寺元さんカジは華奢なだけに、ラストにいくにつれて内に秘める強さがどんどん開放されていくのがすっごく感動します。見るからに強そうなカジモドではなく、一見貧弱そうなカジモドが実は凄く強いっていうギャップにもなっていますからね。寺元さんカジを観るたびにラストはよりグッと来てしまいます。改めて寺元さんカジモドを好きになれた観劇でした!

フロロー:村俊英

ようやく村さんフロローを観れて感激です!2018年は色々あって観劇一切していなかった時期だったので、なんなら村さんがフロローデビューしたことすら知らなかったんですけど(小声)。でも本物ですからね…、アニメ版のフロローが舞台でも観られるなんて奇跡みたいです。だからこうして観ることができて本当に嬉しかったです!

村さんフロローはとても静かで落ち着いていて、厳格な印象がありました。なんならちょっと冷たさすらも感じるような印象があって、カジモドに対しても義務感として育てているだけな感じもしたんですよね。とはいえ1幕冒頭はカジに向ける笑顔に優しさは垣間見えたので、そういう顔もできるのか…とは思いました。だけど、その笑顔も別に愛情ゆえのものではなくて、「カジモドができたこと」に対して「良くやった」と満足感を得られただけのような感じもして。カジに対して愛情はきっとなかったんだろうなって思いました。

それこそ冒頭で赤ん坊のカジモドを投げ捨てようと両手を振りかざしたときに、悲痛そうな表情を浮かべて「やっぱりできない…」となっていたのが非常に良かったです。カジへの愛情があったわけではないだろうけど、ジェアンのことは本当に愛していただろうから、彼の託した命を捨てることはできなかったんだな…と村さんフロローの葛藤が伝わってきました。ここ、そういえば川口竜也さんフロローも同じようなお芝居していたなっていうのをふと思い出した瞬間でした。

あとは村さんフロローって自分を守ることに必死な印象があります。愛しているのは自分自身だけ、みたいな。というか正直この人に心があるのかも分からないくらい感情が読み取れないんですよ。感情的な万寿夫さんフロローとは真逆で、人間味がないというか、人間の体温を感じないなって思いました。だから怖い。

聖職者として清き道を生きるためにすべての欲を取り払い、邪念を取り払ってただ職務を全うする人ってああなっちゃうのかな…って。だから何事にも一喜一憂せずに、自我を忘れない。感情に乱されない。そういう印象がありました。

その一方で常に静かで厳かなので、勢いという部分はありません。万寿夫さんの勢いあるフロローをここ最近観ていたのもあってそこは個人的に物足りなさを感じてしまった部分でもありましたが、どこまでも聖職者として心を穏やかにありつづけようとする村さんフロローはまさにフロローそのもので凄く良かったです。

エスメに対してもあからさまに狼狽えたりせずに、グッと感情を飲み込んで冷静に慎重に向き合っていました。だからエスメにタジタジになることもなく、むしろ岡村さんエスメの聡明さや勇敢さが通用しないようにも見えました。村さんフロローはなかなか手強いです。

でも、そんな彼の心が蝕まれていくっていうのが伝わってきたのがヘルファイヤーでした。アニメ版の歌唱吹き替えキャストでもあった村さんのヘルファイヤーは死ぬほど楽しみだったので、歌い出した途端にめっちゃテンション上がりましたよね(笑)

「私は悪くない」って歌うところあたりから少しずつ心が乱されていくんですけど、それでも必死に自分の欲に抗って清き聖職者でいようともがいていました。でも最後のロングトーンでは両手を広げながらどんどん目に力が漲っていって、まさに殺意のようなものを感じさせる狂気の目をしていました。同時に両手が大きく震えていて、全身の血が逆流しているのが伝わってきて、それ観た瞬間に鳥肌です。これまでずっと落ち着きのある静かなフロローだっただけに、このラストのロングトーンの狂気に満ちた村さんフロローの佇まいで一気に心を掴まれました。とにかく迫力が凄かったです。

それ以降もまるで人間の皮を被ったかのようにこれまでと変わらない落ち着きっぷりでしたが、その化けの皮が剝がれたのはバスティーユのシーンでした。赤いスカーフを取り出したかと思うと腕に巻き付けて彼女に迫るじゃないですか。そこで薄笑いのようなニヤニヤとした笑みを浮かべたんですよ。もうその笑顔がすっごく怖くて、悪寒がしました。スケベな感じのニヤニヤなのではなくて、完全に自我を失った殺人鬼のような悪に取り憑かれた笑みだったんです。これまでずっと笑顔なんて見せてこなかっただけに、ここでそんな笑顔をする村さんフロローの破壊力は凄すぎて鳥肌ものでした。

ちなみに火炙りのシーンでエスメにツバをかけられたとき、村さんフロローは顔を拭かないんですね。確か芝さんフロローも拭かなかったから、うわ来た気持ち悪いフロロー!って思いました(笑)ツバ吐きかけられて拭わないのってなんか非常に気持ち悪いですよね(?)

あとはラスト、投げ落とされる瞬間のお芝居も印象的でした。怯え切っていて、ここで一気に人間らしさを取り戻していたのが凄く切なかったです。そうか、村さんフロローでも怖いと思うことがあるのか…死が怖いのか…と衝撃的でした。村さんフロローはとことん厳格で人間の体温を感じさせなかっただけあって、最後の最後に死ぬことへの恐怖で狼狽えている姿は凄くグッと来るものがありました。

村さんフロローを観たことによって全フロロー制覇したんですけど、フロローを演じてきたどの俳優さんとも違うタイプで村さんらしさがあって良かったです。本物を観られたことへの感動はひとしおでした!

エスメラルダ:岡村美南

今回も圧倒的な存在感と絶好調な歌声で魅せられました。岡村さんって役によって相性の良し悪しがあって、この役は結構調子悪いとか色々あるんですよね。そんな中でエスメは凄く相性良いなって毎度思いながら観ています。まさにハマり役だなと思いながら観ていました。

村さんフロロー相手だからなのかは分かりませんけど、所々ちょっと声の出し方変わったなとか喋るトーンが変わったなとか思った瞬間はあったのですが、意図的なものなのか日による変化だっただけかは分かりません。ただ、よりエスメの慈悲深さと芯の強さが強調されたような印象は受けました。

ちょっと変わったなと思う点としては、バスティーユでフロローに言う「なんで私なの?分からない、なんでよりによって私なんか…」というセリフの声のトーンかな。今までは嘆くような感じの言い方だったんですよ。ちょっと感情がこもった力みのある言い方というか?

でも今回は淡々とっていうと語弊なんですけど、嘆くというよりは感情を抑えて言うような言い方でした。村さんフロローの静かなお芝居に影響されてそういう感じになってるのかな~?とも思いましたが、たった1回の観劇では判断できませんね。でも以前川口さんフロローと共演したときも、川口さんフロローのお芝居に影響されてか岡村さん自身のお芝居にも変化があったので、「村さんフロローを相手にした」エスメとして振る舞っているのだとしたら凄いなと思いました。

あとは、今回の岡村さんエスメに幼さが凄く垣間見えたんですよ。これも多分村さんフロローが相手だからかなとも思います。万寿夫さんフロローは非常に感情的なので対する岡村さんエスメの落ち着きっぷりが成熟した女性らしさを感じさせたんですけど、静かで落ち着きのある村さんフロローを相手にする岡村さんエスメはどこか幼く見えました。岡村さんエスメのがムキになっちゃうような印象もあって、年相応の感じがあって新鮮でした。

幼さという部分でいえば、バスティーユのシーンでフィーバスに説得されているときの岡村さんエスメの表情がちょうど上手から観るとバッチリ正面だったので堪能できたのですが、すっごく幼い顔をしていて可愛すぎました。フィーバスを見上げるために自然と上目遣いになるのもあるでしょうけど、目がうるうるしていて八の字眉毛で口元をぷるぷる震わせていて、もう…泣きべそかいてる女の子そのものであまりにも可愛すぎました。

バスティーユのシーン、フィーバスと対峙しているときの岡村さんエスメが一気に幼くなるのでめっちゃ好きなんですよね。ジプシーという身分ゆえに迫害されていたから必死に勇敢に生きていただけで、本当は10代のか弱い女の子なんですよね。すっかり忘れてた…ってなるんですよ、バスティーユでの幼い岡村さんエスメを観ていると。ほんとこういう多面的なお芝居、上手いです…。

1幕の岡村さんエスメは生命力を凄く感じさせてくれるので、2幕にいくにつれてその生命力がどんどん薄れていくのがたまらないです。久々にエスメ観てここ最近感じていることですが、岡村さんはやっぱりこういう陰な役が似合いますな。ハッピーエンドの役柄も凄く似合うし素敵だけど、翳りのある役はマジで似合いますね。エルファバといいアニタといい。系統としては濱田めぐみさんタイプなんだと思います(笑)

今回は村さんフロローを中心に観ていましたけど、岡村さんエスメはとにかく安定でした。フロローに対する在り方は多少変化あったようにも感じますが、勇敢でかっこよくて圧倒的存在感と美しさであっという間に虜にされてしまう、まさに魔性のエスメラルダでした。ほんと、贔屓は健康にイイ。今回も素敵なお芝居を観られて嬉しかったです!

まとめ

今週も最高の観劇ができて幸せでした。ようやく村さんフロローも観れて、いよいよ未見のキャストが少なくなってきました。色んなキャストで観るとどんどん解釈が深まって作品への理解に繋がっていくので、観劇がさらに楽しくなりますね。エスメに関しては岡村さんにこだわりすぎてしまうんですけど、それ以外のキャストは観られるチャンスがあれば逃したくないなと改めて思いました。

座席を選んでいる余裕もないくらいチケットは取れませんけど、行ける日があればまた観に行きたいです。せっかく岡村さんがエスメまた演じてくれていますしね…!あと5回岡村さんを観たら通算200回ですよ。チケパト頑張る~~!

今回も素晴らしいお芝居をありがとうございました!元気そうなお姿を観られて良かったです!

さて、次の観劇予定はマジで未定ですが、チケット取れ次第行きます!今回も最後までご覧いただきありがとうございました!

2

コメント

タイトルとURLをコピーしました