2022年6月25日ソワレ 劇団四季『ノートルダムの鐘』@横浜




ノートルダムの鐘
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キャストの感想

キャストの感想です!

カジモド:寺元健一郎

前回に引き続きの寺元さんカジ!なんかもう寺元さんカジに関しては心配がなくなりましたよね。歌声も圧巻で、しっかりと歌い切ってくれるので凄く安心して観ていられました。子犬みたいに可愛くて健気で、それでいてその華奢な体つきからは想像もできないほどの力強さを持っていて。毎度そのギャップにキュンと来ています。

トプシーでフロローから「もう外に二度と出るな」と言われてカジが王冠をフロローに渡そうとするも避けられ、その腹いせ?じゃないですけどフィーバスに王冠を渡すんですが、寺元さんカジ、なかなかの馬鹿力で凄い音立ててフィーバスに押し付けるのがさりげなく好きなポイントだったりします。神永さんフィーバスも弱っちいので、王冠で腹パンされておうふっ…ってなってるのが好きです(笑)

で、今回のMOSなんですけどちょうど歌い出しのところのセリフ間違えちゃったみたいで…。「僕が何を信じているか、どうして分かるのさ」っていうセリフを「僕が助けるとどうなるかどうして分かるのさ」みたいな感じで言い間違えてしまい、歌の入りがズレてしまいました。ひええ~とヒヤヒヤしたのですが、なんとか出だしの「君らなんかに僕の何が分かるんだ~」は歌うというより呟くような言い方にして上手く帳尻を合わせていたのでさすがプロです。

その後もちょっと歌い方をあえてリズムからずらすようなことをしていて、全体的に違和感をカバーしていたのが本当に上手いなぁ…と思いました。そしてラストのロングトーンも、一瞬掠れそうになったけどちゃんと音程は出ていてさすがでした。MOSの寺元さんカジはとことんかっこいいです。

今回はミスしちゃいましたけど、相変わらずの全力なお芝居には胸を打たれました。本当にかっこよかったです。岡村さんエスメと並ぶと弟みたいで、そんな可愛らしさも健在でした。たっぷり堪能できて嬉しかったです!

フロロー:村俊英

いやもうねええええ、村さんフロロー大好きマンなので終始ニヤニヤしっぱなしでした。村さんフロロー、今回は結構感情的だった印象があります。わりと感情に揺さぶられて声を荒げる瞬間も多くて、凄く葛藤している様が滲み出ていました。それこそ1幕冒頭のオーリムでの村さんフロローってまさに人間そのもの。なんか、悪に染まっていないまだ比較的ピュアだった頃のクロードって感じがあって、序盤から引き込まれました。

でもこのときから自分のしていることに間違いはない、自分が正しいと思っている節はありますよね。凄くプライドが高く、完璧主義者な人なんだろうなーと観ていて思いました。

しかしながら本質を見抜いてくるエスメラルダと出会い、ことごとく論破されて狼狽える村さんフロローもまた良き…。なんならエスメとお話ができることに嬉しさを隠せないのが可愛すぎて、小学生か!と思いました(笑)ガッツリ表情に出ているわけじゃないんですけど、あの厳格な村さんフロローの表情が心なしか柔らかくて口角がほんのり上がっているんですよ。可愛い(笑)初恋拗らせおじさん、本当に可愛くて愛しさしかない…。

TOTW終わりにエスメと対峙して色々喋ってプライドをずたずたにされて、怒り狂ってエスメを外に追い出してカジモドを呼び戻した村さんフロローは、いつも以上に声を荒げていました。で、「約束しろ。あの女のことは考えないと」とカジモドに言うんですが、そのときに村さんフロローの口元がパクパクしていたんですね。パクパクって文章にすると一気に情けなくなるけど(笑)これ、1幕冒頭でカジに聖アフロディージアスの話をするときと全く同じ仕草でした。

1幕冒頭でカジが聖アフロディージアスの名前がなかなか言えないときに、村さんフロローは「せい…あ、あ…あふ?」って口パクで導こうとするんですよね。それとまさに同じで、「やく…や、や…」みたいな感じでカジモドに「約束します」と唇の動きで言わせようとしていました。あ、村さんフロローはこうやって自分で言い聞かせて相手を抑え込むんだ…とゾッとした瞬間でした。洗脳の仕方が姑息で怖いですね。

そしてヘルファイヤーは今回も素晴らしかった…。最初のほう、リズムより遅れて歌っているような感じだったので少し心配でしたけどすぐに持ち直し、なんならいつも以上に心が乱れているような佇まいで、必死に手が空中を仰いで、何かにしがみつこうとでもしているかのようでした。「地獄へ落とすか」はキッとした狂気の表情だったのに直後の「私に与えたまえ」は一気に慈悲深い表情になっていて、こっわ!って思いましたよね。善と悪の同時性が垣間見え、葛藤しながらどんどん悪に蝕まれていく様をありありと表現していました。歌声にも力が漲っていて、めっちゃかっこよかったです…。もう最近は村さんフロローのヘルファイヤーを聴きに行くために通ってるみたいなところもありますからね。目も耳も幸せでした。

この直後のルイ11世に会いに行くときの村さんフロロー、正直感情が一切読み取れなくなっていました。読み取れない…というよりも、もはや「無」に等しい感じ。正義のために正しいことをしているとか悪を滅したいと怒りの炎を燃やしているとか、そういう思いすらもはや見えず、なんかもう何かに取り憑かれて心を失ったような気がしたんです。「はい、陛下」というセリフの言い方にしても、もう感情が一切なかったの。それが凄く怖くてゾッとしました。肉体だけがかろうじて動いている感じっていうのかな。そのリアルさに感服でした。ヘルファイヤー直後の佇まい、本当に凄かったです。

で、2幕終盤。エスメの死を確認した村さんフロローですが、ここでも自分のしたことは正しいと信じて疑わない様子がとても醜く映りました。自分が正しいと思っているフロローだけど、1幕オーリムのときの表情とはまるで別人。悪に取り憑かれた彼の表情はもう理性を失っていました。でも、カジモドに「悪人は罰を受けるんだ!」と言われたときにハッとなるのを観ると、彼も自分が正しいと信じて疑ってはいなかったはずだけど、同時に心のどこかで間違っていると分かっていたのかもな…とも思いました。そんな自分の間違いを認められなくて目を背けていたのかな…と。

村さんフロロー、本当にどこまでも哀れで悲しい人です。救いがなくて、聖職者としても人間としても破滅の道を進むしかなかったかのような残酷卑劣な人です。その説得力がすべてのお芝居から感じられました。本当にただただ素晴らしい…。今回も村さんフロローを観てゾッと鳥肌が立ちましたし、観れば観るほど好きなポイントが増えていくしで、とことん沼です。大好きな村さんフロローをたっぷり堪能できて幸せでした!

エスメラルダ:岡村美南

今回も素晴らしいお芝居でした。今回は声の出し方がいつも以上に真っ直ぐというか、芯があってブレない感じだったので、凄く新鮮な気持ちで歌もセリフも聴いていました。だから今回の岡村さんエスメはとても勇敢で男勝りなかっこいい印象がありました。前回のあの脆すぎて今にも消えてしまいそうだったエスメはどこ行った…?ってくらい、まるで違ったお芝居でした。

で、意図的にお芝居変えてきたな~と思ったポイントがあって、それはTOTW終わりにフロローと対峙しているときのお芝居。迫ってくるフロローに言い放つ「分かってるの?私を見るその目つきで」というセリフの言い方を意図的に変えていました。ここ、台本にはどういう風に書かれているのかは分からないですけど、「分かってるの?」とフロローに問うようなニュアンスだと思ってたんですよ。でも今回の岡村さんエスメは「分かってるの。」とまるで自分がそうであるかのように言っていました。問うようなニュアンスではなく、自分の考えを伝えるような言い切るニュアンス。

そこも含めて、聖域でのフロローとの対峙シーンは凄く強気に出ていてとても勇敢でした。あの村さんフロローがタジタジになってしまうくらい、キッと睨んでいた様子が頼もしかったです。それも今回の芯の強いブレないお芝居が影響しているのかしら?日によってお芝居の雰囲気が変わるから観ていて楽しいです。

あと、今更だけどTOTWでカジモドに名前を呼ばれて言う「何?」の言い方が好きです。「なあに?」じゃないのが岡村さんエスメらしくて好きなんですけど、カジモドを同じ人間として見てくれているからこその言い方なんですよね。子ども扱いをするわけでも自分が優位に立っているわけでもなく、対等に。岡村さんエスメのお芝居の根底には、やはり「人はみな平等である」という軸がしっかりとあるなーって思います。彼女の信じる正義はそれであって、その正義を全うするために自分らしく生きているっていうことの説得力が、こういうセリフ一つにしてもちゃんと感じられるのが素敵だなと再認識しました。

そして今回のSomedayはまた前回とは違った解釈だったと思います。やはり涙は流していたんだけど、今回は結構希望に満ちた表情をしていた気がしました。わりと前向きに未来を捉えている印象。生きることに絶望をするでもなく、死ぬことに恐怖を抱くでもなく、ただただ祈りを込める聖母のような佇まいでした。それも今回のお芝居の芯の強さゆえかな?

最初のほうでフィーバスに視線をやって微笑むのも、凄く穏やかに柔らかく笑っていたし、「祈るわ争いの炎が消えることを」も、前回観たときのような苦しさとか怖さとか虚無とかそういう感情はほとんどなくて、真っ直ぐにただひたすら祈っていたように思えます。フィーバスと向き合った瞬間にふと悲しさや寂しさ、悔しさが込み上げてきて泣き崩れてしまうけど、フィーバスに抱き締められてからの表情はまた真っ直ぐと前を見据えたものでした。

なんなら理不尽な世の中に対する怒りすら感じられたかも。今の状況に絶望しているというよりも、たとえ自分が死んだとしても絶対に世の中を変えてやるとでもいうような、力強い瞳をしていました。だから今回の岡村さんエスメは本当に精神的に強かった…。刺々しいわけではなくて柔らかくて温かな佇まいではあったんですけど、それでも凄く希望に満ちたSomedayでした。今回のSomedayも素晴らしかったです。

ただ、火炙りにされるときは目がうるうるしていて、その瞬間だけはいつもの少女らしさが出ていたような気がします。どんなに勇敢でも死ぬ瞬間だけは怖いっていうのが、人間的でとても愛しさを感じた瞬間でした。岡村さんの強さと弱さの同時性の表現、いつ観ても凄くリアルで人間臭くて好きです。

今回は前回観たときとはガラッとお芝居の雰囲気が変わっていたので、凄く新鮮でどの瞬間も観るのが楽しかったです。冒頭にも書いたように、エスメラルダに対する聖母性の謎も自分なりに答えを見出したことで、より岡村さんエスメのお芝居の説得力を感じられた観劇にもなりました。歳を重ねて出てきた貫禄であったり落ち着きであったり聡明さであったり、以前とは違う魅力もどんどん出てきているので、こうして多面的なエスメラルダの変化を見届けられることが凄く幸せです。

今回も素敵なお芝居でした。最高の時間をありがとうございました!

まとめ

今期ノートルダムは観るたびに色んな発見があって凄く楽しいです。その発見を与えてくれるキャストの皆さんのお芝居も本当に素晴らしくて、今期はどんどん作品への理解が深まっているような気がします。素晴らしいキャストの方々もどんどんデビューしていっているので、これまでとは違う角度から物語を観られているのが凄く新鮮でいいですね。

ほんとね、チケット取れればもっと気軽に観に行けるんだけど…(笑)でも何だかんだ今月だけでも10回目観ちゃったので、結構行ってるなと我ながら驚きました。贔屓を客席から応援できる今を大切に、というのをこれからも心掛けながら観劇していきたいと思います。

今回も素晴らしかったです。舞台に立ち続けてくれて、本当にありがとうございました!今週も堪能できて幸せでした。

長くなりましたが、最後までご覧いただきありがとうございました!

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