2023年7月29日マチネ 劇団四季『ノートルダムの鐘』




ノートルダムの鐘
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キャストの感想

キャストの感想です!

カジモド:飯田達郎

達郎さんカジモドを拝見するのは横浜公演に戻ってきてくださったとき以来なので、ちょうど1年ぶりくらいになります。達郎さんカジモドはお芝居がとにかく細かくてカジモドのお芝居の解釈がとても好きなので、久々に観ることができて嬉しかったです。改めて観てみても、やっぱり大好きなタイプのカジモドでした。

声のしわがれ方が以前よりさらに増して、障害のある感じがさらにリアルになっていました。でも、Out Thereでふと空想の世界に浸り出した途端に伸びやかな滑らかな歌声に変わるの何度観ても感動してしまいます。Out Thereの高いキーがやや出づらそうだったので、ちょっと心配になっちゃったんですけど、Made of Stoneはしっかりキーを合わせて歌い上げてきたのでさすがでした。これでこそ達郎さん…!声の厚みも凄いので、ド迫力で素晴らしかったです。

Out Thereでもガーゴイルに向かってまるで対話するように接するのがとても好き。自分一人で空想の世界に浸るのではなく、友達と一緒にその世界を楽しんでいる様子が伝わってきて、カジモドは一人じゃないんだな…と感じました。

Top Of The Worldの「二人でいる」はピースのポーズで、二人を表現したあとに指で円を描いていて、指で円を描くパターンははじめて観たので可愛い~!ってなりました。やはまるさんエスメも真似してくれて、達郎さんカジモドが嬉しそうにしてて可愛かったです。

達郎さんカジモドは本当に子供みたいに純粋で、エスメラルダに対しても女性としてだけではなく、きっとどこかお母さんの面影を重ねていたのかな…と思いました。In A Place Of Miraclesでクロパンたちとともに旅立つことを決意したエスメを遠目に見つめながら、何度も涙を手で拭って「エスメラルダ…エスメラルダ…」と名前を呼びながら彼女に手を差し伸べていました。その様子が、まるで置いていかれる子供のようで、ただの純愛とはまた違った感情が達郎さんカジモドにはあるんだろうなぁ…って思って、ここで涙腺崩壊。いつもここの達郎さんカジモドにはやられてしまうので、今回も大好きな仕草を観られて嬉しかったです。

また、エスメラルダを救出して息絶え絶えなエスメと対話するシーン。「ここにいればいいよ、永遠に」と言いながら、TOTWのときにやっていたピースの手で二人を表現する仕草をしていて、ここでも涙腺崩壊。カジモドにとってここは本当の意味でのサンクチュアリ=エスメラルダと過ごした特別な場所なんだなと思って、やられました。達郎さんカジモドからはとことんエスメへの深い愛情が感じられるので、こんな素敵な友達と最期のときを過ごせてエスメラルダも心が安らかだっただろうなぁ…と思います。

エスメの亡骸に触れながら、脚を何度もさすってあげる達郎さんカジモド。火炙りに処されてきっと脚は爛れちゃっただろうから、そんな痛々しいエスメの脚を優しく撫でてあげるのが本当に反則。どこまでもエスメへの愛に溢れてて素敵でした。

そこからの新演出版のフロロー投げ落としシーンは、あまりにも怖かった…。達郎さんカジモド、フロローを投げ飛ばす際に狂ったように笑っていたのが怖すぎて、最後の最後で本当の怪物になってしまうのが非常に皮肉的でした。達郎さんカジモド、ガタイも良いから怪力があることに説得力がとてもあって、迫力が凄すぎたよ…。いやぁ、達郎さんカジモド本当に凄すぎました。

最後、黒塗りを取って人間に戻った瞬間、目をそっと閉じて息をふぅ…と吐いて深呼吸していたのが印象的でした。カジモドを演じたこの2時間半に対する想いをそっと大切にしまうかのような佇まいも素敵だったし、達郎さんがこの7年間積み上げてきたカジモドのお芝居の集大成かと思うと、やっぱり一挙一動の深みが違いました。もはやレジェンドです。こんなに素晴らしい達郎さんカジモドを久しぶりに拝見できてとても嬉しかったです!

フロロー:道口瑞之

道口さんフロローはじめまして。道口さんの真面目そうな雰囲気とおぞましい雰囲気がそのままフロローに集約されていて、これまでにいそうでいなかったタイプでとても新鮮でした。道口さんはとても華奢なのでドンと構えて威厳を見せるタイプのフロローではありませんでしたが、声の低さや厳かな雰囲気でどこか冷たさを感じさせるような佇まいをしており、それが怖くてあまり近寄りたくないタイプのフロローでした。

ジェアンのことはとても愛しているのが伝わってきたし、その頃はまだ優しさの感じられる印象がありました。ジプシーに対して軽蔑の目を向けるも、まだジェアンが生きていた頃はそこまでではなかったように思います。ジェアンを失ってから、ジェアンを道連れにしたジプシーに対する怒りがより一層強くなり、憎しみという形でジプシーを「ウジ虫」などと呼ぶようにもなったのかな~と。もともと信仰深い人ではありそうですが、ジェアンを失ったことが彼を変えた大きなきっかけだなと伝わるフロローでした。

だから、大司教となってからの道口さんフロローは非常に潔癖な印象がありました。汚いものには絶対に触れないし思い出すだけで嫌気が差す、そんな佇まいを感じられました。「ウジ虫のようにうごめいている」のセリフからもジプシーに対する嫌悪感がヒシヒシと伝わってきて、こんなにもジプシーを恨んでいるのか…と。とにかく嫌いなものに対する嫌悪感を出し惜しみしないので、感情が表面に出やすいという点は非常に野中万寿夫さんフロローに近しいところがあると思います。

でも、そんな自分を自覚しているのかしていないのか、ハッとして聖人君子に戻ろうとする瞬間も見受けられたので、こんなにも感情的なのに自覚がないんだ…というのが逆に怖かったです。たとえばエスメラルダに向かって言う「また私と…!……話の続きをしよう」も、途中まで感情が溢れて前のめりになっていたところでハッとして、大司教らしく落ち着いた佇まいで「話の続きをしよう」と仕切り直していました。本能が理性を追い抜いちゃうんだね…。恐ろしすぎる。

Hell Fireもこんなに人間臭さのあるフロローってはじめてだったので、とても新鮮で衝撃的でした。たとえば芝清道さんフロローのように、もう悪魔に心を喰われた感じでもなくて、ちゃんと最後まで道口さんフロローのまま。必死に葛藤して、泣き縋るような気持ちで彼女を私の手に…と神に訴える姿は、もはや大司教などではありませんでしたが悪魔に心を侵食された人でもなく、ただ心の弱い人間そのものでした。それが逆に醜くて、なんか観ているのがつらかった…。人間って欲望の前ではこんなにも醜くなってしまうのか、と。聖人君子であろうとしていた彼が、ここまで落ちぶれるとは…。だから、道口さんフロローのHell Fireは佇まいも歌い方も本当に新鮮でした。いやでもさすが声が良いだけあって、地鳴りのするような歌声は圧巻でした。久々に道口さんの素敵な歌声を聴けて嬉しかったです。

奇跡御殿に突入するシーンも、声を高らかにあげながら入ってきて、かなり愉快でした。愚民たちを懲らしめるのが楽しいんだろうな~とことん性格がねじ曲がってるな~と思いました。いっそ開き直ってさえいるあたり、人間の醜さをかき集めた塊のようなフロローです。もう悪魔に心を侵食されたフロローであれば、もはや別次元の人間として観られるんだけど、道口さんフロローはとことん人間らしさがあるフロローだったからマジで観るのが逆にキツかったですね…。

なので、ラストはカジモドに首根っこを掴まれて窒息しそうになって弱々しさが強調される様子が非常に説得力あって良かったです。ただの人間が権力を手にしただけであんな横暴なことができて強がって大きく見せても、実際は大したことないただの弱い人間だった…っていうことにとても説得力を感じました。道口さんフロロー、華奢だから余計にここの強い達郎さんカジモドとの対比が感じられて良かったです。

初見での印象はこんな感じでした。もっと回数観たら色々気付ける点あるんだろうなと思うのですが、予想以上にとても人間臭さのあるフロローだったので意外でした。正直、もっと魔力に取り憑かれて悪魔のような佇まいをしたフロローになるのかなと思っていたので、ここまで人間らしく取り乱して神に縋りつくフロローだったとは…という衝撃で、私としては新しいフロロー像を観られたのでとても楽しかったです。道口さんはお芝居も歌も上手いので、安心して観ていられました。ずっと観たかったキャストの一人だったので、ようやく観られて嬉しかったです!

エスメラルダ:山崎遥香

やまはるさんエスメも楽しみなキャストの一人だったので、観ることができて嬉しかったです。エスメラルダに関しては9割以上岡村美南さんで拝見してきたので、本当に岡村さん以外のエスメってかなり久しぶりでした。だから、やまはるさんエスメの何もかもが当然ながら岡村さんエスメと違っていて、とても新鮮でした。そして、先述したようにやまはるさんエスメが本当に素敵だったので、私はとても嬉しかったです。

岡村さんって地声がとても落ち着きのある大人な声色をされているので、エスメのイメージも少女というよりは成熟した女性らしさがあるような印象があります。動じない落ち着きのある声、そして包容力に溢れた優しくて温かい声。だから聖母マリアのような包み込んでくれる感覚に陥る、そんなイメージを持っているんですね私は。

一方でやまはるさんエスメは、見た目こそ高身長でとてもお綺麗な方なので大人びた印象はあるものの声がとても若さを感じさせるので、声の感じからしてとても少女らしさがありました。そして、カジモドに対しても声色を変えたり優しく接しようとしたりせず、ありのままのやはまるさんエスメとして接していて、そのフレンドリーさや気さくさがとても沁みたんです。相手が誰だろうと変わらない。それがエスメの良いところでもあって、やはまるさんエスメの純粋さが非常に新鮮で素敵でした。

特にTOTWでカジモドと接するときのやまはるさんエスメはとても良かったです。声色や話し方が本当に絶妙で、とりわけ温かみがあるとか包み込んでくれるとかそういうんじゃないんだけど、カジモドを特別扱いせずに一人の人間として接してくれている感じが凄く伝わってくるんですね。そういうのを観ていると、やまはるさんエスメって聖母のような存在ではなく、本当に普通の女の子なんだなと思いました。

ラポンテでフィーバスにキスされたあとの「生きるためには稼がないと!」は岡村さんエスメのように嬉しそうに言う感じではなかったので、驚きのほうが大きかったのかな。唇に触れながら嬉しそうに微笑むというのも岡村さんエスメのオリジナルかな?細かい部分の表情や仕草の細かさは岡村さんエスメのほうが目立つ印象ありますが、もっと演じていくことでやまはるさんならではのエスメのお芝居がどんどん生まれていきそうです。

個人的に凄く良かったのはSomedayと息を引き取るシーン。Somedayはそれこそ岡村さんエスメのような神聖さとは違い、普通の女の子がどうしてこんな…という理不尽さのようなものも感じさせながら、とてもピュアに歌う姿が印象的でした。改めて岡村さんエスメって、選ばれし女性だったな…と思わざるを得なくて。ここまで神々しく女神のような佇まいを見せるSomedayって、歌声を聴きながら浄化されるような感覚にもなって、そりゃフロローも好きになるよ…って思うんですけどね。やまはるさんエスメのSomedayって普遍的でとても純粋で、不条理な世界を嘆く少女の儚さがヒシヒシと感じられました。

そして、息を引き取るシーンのやまはるさんエスメにはハッとさせられましたねぇ…。「永遠にはいられないかもしれない」のセリフを、目に涙を溜めて泣きそうになりながら言っていて、エスメも死ぬのが怖いんだ…と思ったんです。岡村さんエスメって苦しくも自分の死を受け入れているようなお芝居をするので、こんなにも死に対して怯えて怖いという感情を抱いて泣きそうになっているやまはるさんエスメが私にとってはかなり衝撃的でした。普通の女の子なんだな…ってここで再認識させられて私は大号泣。「あなたは本当に素敵な友達よ、カジモド」も泣きそうになりながら、声を詰まらせるようにしながら言ってて、もう…もう無理……ってなりました。つらかったね、苦しかったね…ってなっちゃって…。

このシーンのお芝居で、やまはるさんエスメを観て本当に良かった!と心から思いました。岡村さんエスメがデフォになってしまっていたから、エスメってこういうものだよなって自分の中でイメージが確立しちゃっていたんですけど、改めてエスメラルダは普通の女の子だったということに気付かされて作品全体の印象も凄く変わりました。いやぁ…素敵なエスメラルダに出会えた。というか、私がキャストにこだわりすぎていたことで作品やキャラクターに対する視野が狭くなっていたことを再認識しました。別キャストでも観るものですね。

どうしても岡村さんエスメとの違いを踏まえながらやまはるさんエスメのお芝居を観てしまったので、純粋な感想というよりは比較しながら…みたいな感じで非常に申し訳なかったんですけど、ちゃんとやまはるさんならではの解釈でエスメラルダを演じられていて凄く素敵でした。岡村さんにとっても私にとっても、エスメラルダってとても大切な役なので、素敵なエスメが誕生してとても嬉しかったです。改めてデビューおめでとうございました!

フィーバス:加藤迪

迪さんフィーバスも観たかったキャストの一人でした。私が前回通っていたときに観ていたのがチャラめの神永東吾さんフィーバスだったので、迪さんフィーバスの真面目さがめちゃくちゃ新鮮な感じしちゃって、迪さんらしいな~って思っちゃいました(笑)

迪さんフィーバスは本当に真面目に戦地で戦ってきて、そのトラウマを抱えつつ正反対の女遊びを楽しんではいるものの、女性に対してもとても誠実な感じが出ているのが面白かったですね。息抜きのラストに女性4枠さんを引き連れて膝の上に跨らせるように乗せるのが今までデフォでしたけど、跨らせてなかったですね。それが迪さんフィーバスならではなのかなって思ったんですけど、もしかして新演出でデフォになったのかな…?いずれにしても、初めて会った女性に対してふしだらなことをそこまでしない印象があって、凄く誠実さを感じました。歌がとにかく上手なので、とても心地よかったです。

エスメに「墓標のない墓に仲間を埋める仕事?」と言われたときの迪さんフィーバスが、背中を向けたり顔を背けたりするのではなく、ちょっと目が俯いてフリーズしちゃうみたいなところも良かったですね。あからさまに過去から逃れるのではなく、彼自身は受け止めることも逃げることもできずにずっとあの瞬間に立ち止まっているんだなぁ…と感じました。本当に真面目なフィーバスという印象です。

でもそんな真面目過ぎるほどに真面目な迪さんフィーバスが、Somedayの終わりにエスメを抱き締めてめっちゃ積極的にキスしてたのがなんかギャップ…ギャップやば…と思って(笑)彼女を愛していることももちろんそうなんだけど、生きていることを実感したかったのかもしれない。それくらい本能が全面に出ていて、ここでようやく迪さんフィーバスの人間らしさのようなものが垣間見えたような気がしました。

あと、バスティーユに連れてこられてきたときにフロローに盛大に投げ飛ばされるようにしてステージに倒れて行ったのももしかして新演出…?迪さんフィーバスが倒れるようにしてバスティーユに投獄されたのを観て、痛々しい…って思っちゃったんですけど、これも迪さんフィーバスのお芝居じゃなくて新演出なの?どこまでが演出なのか新演出初見の私には区別つきませんでしたが、個人的にここのフィーバスに対する扱いが酷いフロローの構図はしっくり来たので好きでした。

正直エスメもフロローも初見だし達郎さんカジモドは観たいしで迪さんフィーバスをガッツリ観るということはできなかったので、そこまでガッツリと細部までお芝居を観られたわけではなかったんですけど、とにかく終始真面目そうな印象でした。もっとお芝居で遊んでもいいような気もしますが、迪さんらしさのあるフィーバスだったのでほっこりしちゃいました(笑)念願の迪さんフィーバスも観られて嬉しかったです!

クロパン:白石拓也

白石さんって私初めて存じ上げたんですけど、外部の方なのかな…?めっちゃくちゃお芝居が好きなクロパンでした。よしつぐさんクロパンのようにカリスマ性があるというわけでも髙橋さんクロパンのようにリーダー気質があるというわけでもないんだけど、道化に徹した気楽さと必死に生きているさすらいの民としての野性的かつ理性的に物事を判断できるだけの聡明さみたいなものが感じられて凄く良かったです。

私がクロパンのお芝居で一番注目するのが「今度こそ落ち着けると思ったのに…」みたいなセリフの言い方と間の取り方なんですけど、白石さんクロパンの言い方も間合いも絶妙でめっちゃ好きって思いました。間を取って悔しさを噛み締めるように、でも言い過ぎない言い方が良いんですよね…。あからさまに取り乱したりしないのが頼れるリーダー感あってかっこよかったです。

スラっとしたスタイルの良さとイケメンな顔立ちも素敵だったし、歌も上手いのずるいですね。若い印象もあるので背中で見せるタイプのアニキ!っていう感じとは違いますが、若いながらにして才能があるんだな~って感じさせるのが凄く良かったです。名前もはじめてお見掛けした方だから全然事前情報なかったんですけど、とてもお芝居が好みで素敵なクロパンでした!

まとめ

新キャストやら新演出やら色々と情報が多すぎて、めちゃくちゃ頭と体力を使った観劇でした。その一方で劇場内はめっちゃ冷房効いて寒いし、体力の消耗激しかったです。この日は22時前に寝ちゃいましたもん(笑)

正直、今期の鐘は観たい観たいと思いつつご縁がないだろうな…って思っていたんですけど、ちょうどCFYも終わって落ち着いているタイミングで観たいキャストが揃ってしかもチケットがあって…という条件がすべて揃った公演だったので、観に行けて本当に良かったです。

新演出には驚いちゃいましたけど、こうやって時代とともに演出もキャストも変わっていき、自分が知っていたはずの作品がどんどん新しくなっていくんだなぁ…と思うと感慨深かったです。そして、フラットな気持ちで観劇できたから作品の世界観にも凄く没頭できたし、とても充実した観劇ができました。

いやー、でもこの新演出で贔屓のエスメ観るの怖いな。私耐えられるかな。ドキドキしちゃいますけど、また今後も色んなキャストで観に行きたい作品だと思いました。この作品で色んな感情を引き出されたいし、すべての感情を出し切って昇華したいです。何はともあれ、とても楽しい観劇ができて嬉しかったです!

そんなわけで長くなっちゃいましたが最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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