2022年1月10日マチネ 劇団四季『オペラ座の怪人』千穐楽




オペラ座の怪人
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キャストの感想

キャストの感想です!

オペラ座の怪人:岩城雄太

ようやくお会いできました!ずっと気にはなっていたのですがなかなかご縁もなかったので、滑り込みで観ることができて良かったです。イメージしていた以上に繊細で凄く岩城さんらしいファントムだなっていうのが全体の印象でした。こんなに繊細で脆いファントムは観たことがなくて、私の中のファントム像が大きく覆されたような衝撃を受けました。

歌い方としては佐野さんや洋輔さんのような厚みのあるものではないので、クラシックな感じの歌声とはちょっと違うんですよね。細めの歌声。あの、専門的な用語が分からないのでニュアンスで書いてます。語弊が多々あるかもしれませんが、なんとなく汲み取りながら読み進めてもらえると嬉しいです~!

だからファントムに対して歌声で恐怖を感じたり包まれるような感覚を抱いたり、これまでのファントムで感じたような歌声の甘美さというのは正直物足りないかな…というのが私が抱いた感想でした。あ、でも歌声はとても甘くて色気がある。クラシックな歌い方ではないから、「音楽の天使」という感じの歌声とはちょっと違うのかな?とも思ったのですが、その分感情を乗せて歌うのがめちゃくちゃ上手い!ここまで歌で感情をぶつけるファントムはいないんじゃないかってくらい、今回の新演出にバリバリ沿ったタイプのファントムだなーと思いました。

凄く繊細で清らかに歌うなぁ…というのが最初のイメージで、まるで壊れ物を扱うかのように囁きかけるかのように歌っていたのがとても印象的でした。凄く神経質だろうなぁ…って思ったし、ウィスパーみたいに優しい歌い方をするので逆に地雷を踏んでキレさせたら怖いだろうなとも思いました。なんか、ストーカーでよくいそうなタイプの男性像。一見凄く優しそうなんだけど、とても粘着質でしつこくて嫉妬深くて独占欲が強そう。清水さんファントムとは違う意味で絶対に好きになられたくないタイプ(笑)

でも本当に凄くクリスティーヌへの愛情に溢れたファントムで、彼女を見つめる眼差しは愛に溢れていました。節々からクリスティーヌのことが本当に好きなんだなっていうのが伝わってくるので、1幕ラストで失恋するお芝居であったり2幕ラストのお芝居だったりも凄く胸打たれました。なんというか、一方的な愛情表現だけじゃなくてクリスティーヌからも愛されることを強く望んでいるのが感じられるファントムでした。

たとえば2幕ラストで地下室にクリスティーヌを連れてきて、ブーケをクリスティーヌに渡すシーン。今まで観てきたファントムって押し付けるようにクリスティーヌにブーケを持たせていたのですが、岩城さんファントムはまずブーケを受け取ってほしいとでもいうように手元に差し出していました。でもクリスティーヌが受け取ってくれないので仕方なく押し付けるようにブーケを持たせていたんです。それを観た瞬間とても衝撃を受けてしまって、こんなにも誰かに愛されることを必要としているファントムっていたんだ…と胸を鷲掴みにされた感覚でした。

いやー、これはずるいですよ…。ここから畳みかけるような怒涛の感情的なお芝居に度肝を抜かれてしまい、胸が痛くて痛くて仕方ない…。先述しましたけど、一番グッと来たのはクリスティーヌが指輪を返しにくるシーン。彼女の気配を感じて振り返るのではなく、猿ゴールの前で泣きながらふと振り返ったら彼女がいた、というお芝居をしていました。だから一瞬ハッとしたような表情を浮かべていて。

クリスティーヌから指輪を差し出されてそれを受け取って、囁くように「I love you」を告げて、泣きそうになりながら去っていくクリスティーヌの後ろ姿をずっと見つめ続けて。しばらくそのまま動けなくて、ようやく顔を下げて視線を指輪に向けながら自分の薬指にはめて、「I love you…」と呟く岩城さんファントム。それからクリスティーヌが脱ぎ捨てたヴェールを拾い上げて、自身の頬に手繰り寄せながら何度も「I love you…」と愛をこぼしていました。泣いた。これはマジで泣いた…。

これまでの岩城さんファントムのお芝居の中でいかにクリスティーヌのことを愛しているかが伝わってきたからこそ、ラストのこの「I love you…」の切なさが増大していました。本当にこの人は彼女を愛しているんだなっていうのが伝わってきて、凄く凄くしんどかったです。今期のファントムはいずれもクリスティーヌへの愛を俳優さんたちなりに演じていらっしゃいましたが、こんなにもクリスティーヌへの愛がダダ洩れのファントムは初めてだったので衝撃を受けたと共に私は一気に心を掴まれてしまいました。

「怪人」と恐れられていたファントムが、こんなにも愛に溢れていて弱々しい人だったんだなというギャップにもやられました。洋輔さんファントムのような切なさとはまた違う、胸をギュッと締め付けられるような切なさでいっぱいです。でも同時に凄く岩城さんらしいファントムだなぁ…とも思いましたし、もっと早く観ておけば良かったと後悔しているくらいです。凄く素敵なファントムでした。

ロングトーンの厚みとかはやはりクラシックな歌い方ができる俳優さんのほうがしっかりとしているし迫力もあるなーというのは感じたのですが、岩城さんファントムはとにかく演技の部分が秀逸だったので個人的には大満足です。最後の最後でまた素敵なファントムに出逢えて幸せでした。

クリスティーヌ・ダーエ:山本紗衣

改めて紗衣さんクリスティーヌの素晴らしさを全身で体感した観劇でした。長く演じられている貫禄と安心感と絶対的な存在感。紗衣さんクリスが歌っているだけで彼女に恋してしまいそうになる感覚が凄く分かるような、まさに天使の歌声でした。今期オペラ座で一番観ているクリスティーヌではあるのですが、何度観ても「やっぱり紗衣さんは凄い!」と思わされるので凄いです。

TOMの圧巻な歌声も痺れたし、墓場に関しては優勝ですよ…。クリスティーヌがいかにパパの死を引きずっているのか、そしてそんな殻に閉じこもった自身からの脱却と決意、あらゆるストーリーが紗衣さんクリスの歌声と表情から伝わってきました。「どんなに抑えても涙溢れる」の歌詞のところはギュッと目を瞑りながら悲しさと寂しさを存分に感じて、「でももう寂しさに耐え忘れなくては」で直前までの寂しさを一気に振り払うように真っ直ぐな瞳で前を向く…というここの表情と歌声の変化がすげええ!となりました。

千穐楽だからなのかいつも以上に気合いが入った歌声でとても魅せられてしまい、墓場を聴いた直後はもはや放心状態でしたね。紗衣さんクリスの墓場は至高だというのは毎度ブログに書いていることですが、千穐楽の緊張感と熱量の高さとでいっぱいになりながらも静まり返った劇場に響く紗衣さんの歌声は本当に本当に圧巻でした。澄み渡るような、浄化されるような、包まれるような、愛を感じずにはいられない天使の歌声でした。本当に凄かったです。

そしてファントムに対して感情剥き出しにして向き合う2幕ラストも激アツでした。ファントムに「選べ!」と言われた紗衣さんクリス、これまでは目を閉じて自分の心を犠牲にして彼を選ぼう…と決意するかのような表情をしていましたが、今回は目を閉じることなく呆然としてしばらく逡巡してまるで無意識のように歌い始めたのが印象的でした。苦し紛れの決断というよりも、彼女自身が彼を救ってあげたい…という気持ちを一瞬でも見出してそれが湧き出てきたような…そんな印象を受けました。

今回観ていて感じたこととしては、紗衣さんクリスが以前よりも何か突き動かされるような瞬間が多くなった点です。自分という軸を持ちつつも、ふとしたときにふんわりと何かにさらわれるように自分でない何かが体も心も乗っ取るような…。法悦な表情を浮かべるほどファントムの歌声に心酔しているというわけではないのですが、彼の歌声にはつい身も心も捧げてしまう。そういった佇まいが感じられるようになっていました。

だけど最後の「選べ!」の瞬間だけは、何かに突き動かされて…というのとは違う、絞り出した答えでもなく、彼女自身の中から溢れたものをすくって拾い上げたかのように歌っていたのがとても印象的でした。紗衣さんのお芝居は昔から好きだったんですけど、今回の千穐楽のお芝居を観てさらに好きになってしまいましたね…。なんか、上手く表現できないけど凄く良かったです。

千穐楽を飾るにはふさわしい圧巻のお芝居で魅せてきました。やっぱり紗衣さんは凄い…。カテコでのやりきったようなホッとしたような表情も印象的でしたし、改めて紗衣さんの魅力を存分に浴びられた観劇となりました!

ラウル・シャニュイ子爵:加藤迪

迪さんラウルも安定のかっこよさ。改めて仕草や立ち居振る舞いがどれも紳士だし、ナチュラルだなーって思いながら観ていました。前々から話していることですけど、クリスティーヌに照明が当たるように一歩後ろに立つ姿なんかはあまりにもナチュラルすぎて惚れずにはいられなかったです。

岩城さんファントムが凄く粘着質でウィスパーなタイプなので、迪さんラウルのしっかりとしたお兄ちゃんみたいな頼りがいのある雰囲気と厚みがある歌声がより強調されていたように思いました。そのためファントムとラウルの違いが色濃くなって、ドラマ性も強くなったんじゃないかなー。

迪さんラウルは無邪気に笑うのが凄く可愛くて好きです。ラウルの年齢設定とか知りませんけど、きっと子供の頃から変わらない少年心を持った男性なんだろうなーと思いました。感情を剥き出しにして笑うし怒るし、クリスティーヌが自分を見てくれていないときに向ける置いてきぼりの子供のような表情も凄くキュンとなりました。

そんな迪さんラウルが、マネ2でクリスティーヌを説得しようと語気を強めて歌う「クリスティーヌ、クリスティーヌ、任せてくれ、恐れず僕の言う通りに」がめちゃくちゃ好きです。絶対に彼女を守ってみせるという強い決意が歌声からも感じられて、私の席からは背中しか見えなかったですけどとてもかっこよかったです。

迪さんラウルは一見大人びているのに少年らしい無邪気さと真っ直ぐな心を持ったラウルなので、そのギャップにやられていました。カテコでも歯を見せるように満面の笑みを浮かべていたのが印象的でした。とてもかっこよくて優しくて素敵な子爵様を最後にまた観ることができて良かったです!

カルロッタ・ジュディチェルリ:河村彩

やっぱり安心安定の河村さんカーラ!もういつ観ても圧巻で素晴らしいですね。ザ・プリマドンナというほどの貫禄。ピアンジがテノールのハイトーンを響かせているときに、まるで自分のことのように誇らしげに笑っていたのがとても印象的でした。

河村さんカーラって観れば観るほど愛しさが募っていって、ちょろさ全開なのが本当に可愛すぎる。河村さんカーラは狙ってそれをやっているというよりも自然とそうなっちゃうかのような説得力があって、嫌味がないのが凄く好感持てます。みんなに愛されて育ってきたのがさも当然のようで、そうしてもらうことが当たり前だからこそ悪気もなくて…。すべての振る舞いに対して、クリスティーヌに嫌味を言いつつも決して観ているこっち側は嫌な気持ちにならないというのが絶妙だなぁと思いました。

かつ、私が河村さんカーラでめちゃくちゃ好きなのがドン・ファンの勝利です。カルロッタって冒頭にちょろっと出るだけですけど、あんな端役でも彼女は舞台に立っている限りは全力でお芝居を全うしていて、その姿を観るたびにプロだな~って思わされるんです。彼女のプライドが決して許さないはずなのに、それでもやると決めたら全力でやり切るっていうのが毎度毎度観ていて素敵だな~と思っていました。だからやっぱり河村さんカーラは愛されるんだろうな。

今期は色んなカーラに出会うことができましたが、改めて河村さんカーラの貫禄と圧倒的な存在感と歌唱力に思わずひれ伏したくなりました。とても大好きなカーラで締めることができたので大満足です!

メグ・ジリー:松尾優

とてもキュートな松尾さんメグ!年相応でクリスティーヌのことが大好きなのが本当に可愛くていつもキュンとなっていました。ハンニバルのリハ中には紗衣さんクリスに髪の毛の乱れをずっと直してもらっていて、その直後すぐに手を繋ごうとしていたのが可愛すぎました。クリスティーヌ離れができないのが可愛すぎる…。

あとはやっぱり「お稽古ばっかり」の言い方がめちゃくちゃ好きです。最大限に皮肉をこめた言い方が松尾さんメグの愛らしさでもあり、マダムに厳しくしつけされつつも愛されて育ってきたんだろうなーっていう伸び伸びとした育ち方がうかがえますよね。愛嬌しかなくて凄く可愛いなーと思いながら観ていました。

前回観劇したときもそうだったんですけど、カテコでぴょんぴょん飛び跳ねるようにはしゃぎながら客席に手を振るのも死ぬほど可愛すぎました。軽率にガチ恋してしまうわ…。メグは五所さんが好きだなぁ…って思いながら中盤あたりは通っていましたが、改めて松尾さんメグの魅力に気付かされた観劇でした。本当に可愛いしちょっとお姉さんっぽい紗衣さんクリスと並ぶと赤ちゃんみたいで本当に可愛い。可愛さに溢れたメグちゃんを最後に堪能できて嬉しかったです!

マダム・ジリー:木村智秋

木村さんマダム、これまで観てきた中で一番アツイお芝居をしていました。1幕から白熱していて、ファントムの怖さを知っているからこそクリスティーヌやメグを守ろうとしているのも伝わってくるし、2幕はどんどんヒートアップしていって誰よりも必死に歌っていたのが印象的でした。木村さんマダムは声量があるので必死感が凄く伝わってきたし、マネージャーシーンではあれだけ何人も歌っているのに木村さんの歌声を聴き分けられるのが凄いなと思いました。

それでいてクリスティーヌやメグに対して優しく手を差し伸べる姿も相変わらず素敵で、ギャップがたまらないです。「マスカレード」後のラウルとのシーンでは怪しげに歌っていて、怯えるようにしつつもほんのり薄ら笑いを浮かべているのが逆に怖くて、ミステリアスな一面も抜群に強調されていてあらゆる魅力に溢れていました。

マダムって初めて観たときは凄くミステリアスで何を考えているのか分からないイメージがあったのですが。木村さんマダムを観てからはとても心優しくて一緒に戦ってくれる熱い人なんだという印象を持つようになったので、最後にこんな感情的で激アツな木村さんマダムを観ることができて良かったです。カテコで優しそうに微笑んでいる姿も印象的でした!

まとめ

何度も書きますが無事に千穐楽を迎えられて本当に良かったです。そして見届けることができて感無量でした。まさか2020年に開幕した頃は自分がこんなに通うとは思いませんでしたし、こんなに好きな作品になるとは思わなかったので我ながらビックリしています。

私をオペラ座沼に引きずり込んだ飯田洋輔さんファントムも、沼化を加速するきっかけを作った海沼千明さんや久保佳那子さんのクリスティーヌも、私に新しい解釈を与えてくれた清水大星さんや岩城雄太さんのファントムや山本紗衣さんクリスティーヌも、大ベテランの佐野正幸さんファントムも…。挙げていったらキリがありませんが、どのキャストも凄く印象的で素晴らしかったです。今期、出会えなかったのは岩城あさみさんクリスティーヌだけでしたがそれ以外のキャストは制覇。色んなキャストの方々に会うことができて楽しかったです。

次の大阪公演でまた新しい人がデビューしたりするんですかね。いつかぜひ岡村美南さんにもこの作品に携わってもらえたら嬉しいなぁ…なんて考えていますが、果たしてどうなることやら。

何はともあれ、本当にあっという間でしたが素敵な観劇ができて良かったです。千穐楽、おめでとうございました!!

改めて、オペラ座カンパニーの皆さん本当にお疲れ様でした!

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