2022年7月2日マチネ&ソワレ 劇団四季『ノートルダムの鐘』@横浜




ノートルダムの鐘
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キャストの感想

キャストの感想です。

カジモド:寺元健一郎(マチネ)

今回も寺元さんカジの声の伸びがとても良い…!真っ直ぐ綺麗に伸びる歌声が聴いていてとても心地良くて、その真っ直ぐさがそのままカジの純粋な性格を表しているようで清々しく感じました。

特にMOSが圧巻。今回はカジの苦悩が垣間見えるようにもがき苦しそうに歌う瞬間があって、カジモドも自分の役に立たなさがつらいんだよね…と胸が苦しくなりました。その思いが爆発するようなラストのロングトーンは、キーにしっかりハメてきてスコーンと伸びる歌声を披露しつつ、だんだんその歌声が絶唱へと変わっていきました。「閉ざして」も最後は絶唱に近い叫びのような歌声になっていって、鳥肌が止まらなかったです。本当に素晴らしいMOSでした!

あとは、瀕死状態のエスメと共に朝日を見つめているときの寺元さんカジの笑顔にもやられました。本当にキラキラした笑顔で、兵隊たちを追い払ったことへの満足感とエスメを救出できたことの達成感、そしてエスメとこの場所にまた「二人でいる」ことができた幸福感。色んな感情がごちゃ混ぜになっているような笑顔に見えました。その直後エスメが「あなたも美しいわ」と言いますけど、まさに美しさで溢れた笑顔でした。エスメも最期にあんな穢れのない綺麗な彼に看取ってもらえて幸せだったんじゃないかな…。そう感じてしまうくらい、寺元さんカジの笑顔は本当に救いでした。

今回も凄く素晴らしいお芝居で、至るところで泣かされそうになりました。本当に素晴らしかったです!

カジモド:金本泰潤(ソワレ)

泰潤さんも素晴らしいカジモドでした。喉の調子も絶好調で、MOSも圧巻で、とにかく今回は終始爆発的な歌声で魅了されました。やっぱり泰潤さんカジのお芝居の解釈、死ぬほど好きです。ご主人様の教えを守るために自分の頭叩いたりするのは観るたびに胸が痛むけど、それほどまでに従順で自責の念が強いんだな…と思うと、もっと自分を可愛がってもいいんだよって声かけたくなりますね。守ってあげたいと思わせるほどの庇護欲を掻き立てられます。

泰潤さんカジのOut Thereも大好きで、キラキラした希望に満ち溢れた表情はもちろんなんだけど、周りのガーゴイルたちに話しかけるような仕草を何度もするのが凄く好きです。自分にとっての憧れの世界を、彼らにも打ち明けるかのように、座っているガーゴイルたちを何度も見て「会話」するように歌うのがすっごく好きだなと改めて思いました。

そして、TOTW。歌の前のエスメとのやりとりで、彼女にどう接していいのか分からない困惑した姿も愛しさを感じました。ご主人様以外と「会話」をするのはこれが初めてだろうし、それがよりによって一目惚れしたあの女の子。そりゃもうカジモドもどう接していいか分からないですよね。ちょっとずつ距離をはかりながら、「でも…冬は、寒い…」って言ってみたらエスメがすっごく優しく笑ってくれて、泰潤さんカジの顔がパァッと明るくなったんです。バカにするでも否定するでもなく、自分の話を楽しそうに聞いてくれる彼女を見て、舞い上がってしまってその勢いで「ここからは何でも見える!」って彼女に自分だけが知る世界を見せてあげようとする姿も愛しさの塊でした。本当に嬉しかったんだろうなって。

TOTWも柵に乗ってエスメと向き合うところは泰潤さんカジが嬉しそうで、「二人でいる」と呼応してくれたエスメにまた舞い上がってしまって泰潤さんカジが両手を大きく動かして喜びを表現していたら、そんなカジに触発されてエスメもパッと柵から手を離して…。その瞬間に泰潤さんカジがパァッと嬉しそうな顔をしていました。あぁ、泰潤さんカジにとって今この瞬間は世界一幸せなんだろうなぁ…というのが全身から伝わってくるTOTWでした。大好きな組み合わせのTOTWを最高の席から見届けられて凄く幸せでした。

で、In a Place of Miracleに飛ぶのですが、想いを告げ合うエスメとフィーバスを見て遠くから歌っている泰潤さんカジ。終盤あたりから自分の右頬に触れるようにして歌っていたのですが、それってもしかしてTOTWラストでエスメが触れてくれたあの感触を思い出しているのかな…なんて思ったりもしました。彼にとってあの瞬間はまさに「奇跡」だったでしょうし、どれほど泰潤さんカジにとってTOTWでのエスメと過ごした時間が幸せなものだったのかをここでも再認識して、胸が苦しくなりました。エスメラルダのことが本当に好きだったんだな…と伝わる佇まいに愛しさしかなかったです。

そしてエスメが火炙りにされた瞬間に叫ぶ「エスメラルダー!!!」は全身の血が逆流するかのように怒りでいっぱいになっていて、顔が真っ赤になって息が荒くなって、自分の頭を叩いて、今自分がどうするべきかを瞬時に判断していて、もうその姿がただただ圧巻でした。緊迫感が伝わってきたし、カジモドが怒りに震えてどんどん自分の力を解放していくことに迫力すら感じました。

また、フロローを投げ飛ばすシーン。フロローが「死んだのか…」と言いながら鐘撞き堂に上がってきた段階で、「お前のせいだ…」は怒りに満ちた声色でした。もうそこからはどんどん理性を失って、まさに怪物そのものへと変化。フロローを投げ飛ばす瞬間もなんなら笑っていて、正直怖かったです。あんなに優しくて繊細だった泰潤さんカジがホンモノの怪物になってしまった瞬間でした。

そしてフロローとエスメの遺体を見て泣き叫ぶ泰潤さんカジ。うずくまる瞬間に、自分の胸を押さえるようにして泣いていたのが印象的でした。心が痛いのかな…。心が泣いてしまって、胸が痛くて、どうしようもない。感情についてよく分からないと言っていたカジモドが、感情をようやく理解して、こんなにも胸が苦しくなるんだ…と知ったのかな。なんだか、この胸を押さえる泰潤さんカジの佇まいがあまりにもちっぽけで痛々しくて、涙が込み上げました。どこまでもお芝居が細かくて上手いです。

エスメの亡骸を抱き上げて歩くとき、何度も彼女の顔に視線をやっていて。あぁ、どこまでもエスメに一途なカジモドだなぁ…と思いました。彼女を横たわらせて、彼女の手に触れるとき、凄く愛しそうに彼女の手を取っていたのも印象深かったです。泰潤さんカジにとってエスメラルダはただの想い人なんかじゃなくて、本当に本当に大切な人だったんだということが最後の瞬間まで伝わってきました。エスメの言うような「友達」という枠なんかには決して収まらない、自分の命に代えてでも守りたい大切な存在だったんだなと。お芝居の一貫性にただただ感動でした。

カテコはまるでやりきったような笑顔をしていたからもしや今週こそ最後…?なんて思ったりもしましたが、どうなんでしょうね。こんなに素晴らしいお芝居を観られて、私としては感無量です。本当に素晴らしかった…!今期は泰潤さんカジをたくさん観られて、泰潤さんカジのお芝居の解釈に胸打たれて何度も涙して…。本当に大好きなカジモドになりました。今回もとにかく素晴らしいお芝居をありがとうございました!観られて良かったです!

エスメラルダ:岡村美南

マチソワともにつよつよなエスメのお芝居でした。やっぱり今週の岡村さんエスメはフロローに対してとにかく嫌悪感剥き出しですね。元はと言えばフロローが悪いんだけどさ、フロローが可哀想なレベルで嫌悪感剥き出しにされてて草生えました。

マチネもソワレもなかなか強気でしたけど、GH前の大聖堂でのやりとりやTOTW後の鐘撞き堂でのやりとりやバスティーユでのやりとりは、とにかく語気が強かったですなぁ。大聖堂のシーンで言うなら、「あの子を助けたのなら、同じように不幸な人たちにも優しくすることができるはずでしょ!」ってセリフ。語気強めでぷんぷん怒ってましたわ。可愛い。

TOTW後のフロローとのやりとりの中で言う「分かってるの?私を見るその目つきで」は相変わらず鋭くピシャッと言う言い方でしたが、マチネはやや疑問系な言い方になってました。落ち着いたトーンでそんな核心突かれたらさすがのフロローもプライドずたずただよ???

バスティーユでの「なんで私なの?分からない…なんでよりによって私なんか…!」っていうセリフも凄く感情荒ぶっていました。今までって「なんで私なの…?分からない……」って本当に分からなくて困惑しているような言い方だったんですが、今回はもはやブチギレ状態(少し誇張しましたごめんなさい)。なんでこんなやつに好かれなきゃいけないの!ってぷんぷんしてました。可愛い。

ところどころ誇張表現が著しいので皆さんを混乱させていると思うんですけど、わりと本気でフロローに対する嫌悪感が強かったです。エスメラルダは自由に生きたい人なんですよね。囚われの身でいたくない人だから、束縛されるのって凄く嫌だと思うんです。そういう意味で自分についてきてくれたフィーバスの愛情表現は彼女にとっても凄く嬉しかったのかもしれないけど。一方のフロローは差別も酷いしやり方も姑息だし、まあエスメの逆鱗に触れますわよ。もう岡村さんエスメ、終始フロローに対してぷんぷんでしたからね。フロローには大いに反省してもらいたいです。

そんなフロロー嫌悪の岡村さんエスメ、ソワレではバスティーユでフロローに押し倒されたときに叫ぶ「いやああああ!!!」が凄く切羽詰まっていました。いつになく激しかったというか、なんだろうな…。本気で凄く嫌がってた。同時にどこか「女」を感じさせる色っぽさも滲み出ていて、我ながら「何事!?」と思うと同時に「好きいいい!!!」と呼応するように私も心の中で叫んでしまいましたわ…。上手く言葉で表現できない叫びでした。お芝居であんなリアルな叫びができるのか…と思うくらいのリアリティだったんですよ。嫌悪している相手に強引に迫られて性的に搾取されることへの恐怖の表れっていうのかな…。悲痛な叫びっていう言葉では表し切れないくらいの、凄まじい叫びでした。凄く良かった。

散々贔屓のことを「色気ない」とか言うくせに、不意に「女」を感じてしまうととてもドギマギしてしまうオタクです…。フロローが心を乱されて感情的になっちゃう理由が分かるような気がしましたよ。ほんと私の贔屓って罪深い女だわ…。

今回はソワレの感想がほとんどになっちゃうんですけど、処刑前にフィーバスと抱き合っているところを兵隊たちに引き剥がされてしまうシーンがあります。そこでは岡村さんエスメがとにかく縋りつくように神永さんフィーバスにギュッと抱き着いているんですよね。思えば、In a Place of Miracleで初めてフィーバスと抱き合ったときは恐る恐る手を回しているだけで、手は添えるだけみたいな感じでした。それがこの数時間後にはフィーバスの服に爪が食い込むくらい強く抱き着いていて、エスメのフィーバスに対する信頼や愛情、そして死への恐怖など色んな感情を感じさせました。

で、そんなフィーバスと抱き合っているところを引き剥がされてしまったときに、岡村さんエスメが歯を食いしばるような表情をしていたんです。ここ、わりといつも諦めたような表情していたり悲しそうな表情していたり、とにかく落胆の表情をしていた印象がありましたが、今回は怒りや悔しさみたいなものが混じっているようにも感じられました。引き剥がすなよバカ!って言いたげな、キッと歯を食いしばるほどの苛立ち。理不尽な仕打ちに対する悔しさも一切隠そうとせず、本当に今回の岡村さんエスメはとてもメンタル強めのイケイケなエスメでした。

しかしながら、ラスト息を引き取るシーンは息をするのもやっとで言葉を発するのも精一杯なんだろうな…というのが伝わる言い方でした。「あなたは素敵な友達ょ……カジモド…」というように、「よ」がもうほぼ掠れて聞こえないような感じで、静かに息を引き取っていきました。あぁ…なんて死ぬのがこんなに上手いの…って感心してしまいましたわ。メイクも落としてるから血色悪く見えるし、ピクリとも動かないから本当に死んだんじゃないか…ってむしろ心配になるくらいの死に様です。上手すぎるのよね…。とても素晴らしいお芝居でした。

そして今回、今更ながら気付いた点がありました。トプシーでカジモドが王様に選ばれたあとに歌う、「年に一度の祭りだ…」以降の歌のところ。岡村さんエスメはついに歌わなくなっていました。正確には、歌わない部分と歌う部分があるっていう感じですが、それこそ最初の「年に一度の祭りだ…」は口を閉ざしていて、カジモドに対する心配そうな目線と周りの市民たちの好奇な目線に対する不信感でいっぱいな表情をしていたんです。それがだんだんカジに対して祝おう!という動きに変わりつつある市民たちを見て少しホッとした表情を浮かべて、ようやく岡村さんエスメも「一番醜い王様」あたりから歌い出しました。

しかし直後、狂喜乱舞してカジモドを崇めるような彼らを見て、また口を閉ざして歌うのをやめてしまいました。でもカジモドが嬉しそうな笑みを浮かべているのを見てまたホッとして、再び歌うようになっていました。ちゃんとエスメはカジモドに寄り添って、嫌々ながら歌うのではなく、祝っていいんだ…と分かってから歌うようになりましたね。これ、いつからやってたんだろう!?全然気づかなかったよ、毎回岡村さんエスメのこと観ていたはずなのに(笑)

以前は嫌々ながら終始ちゃんと歌っていたんですよ、岡村さんエスメ。でも閉口するようになったのは凄く新しい変化で、え…それこそ今週とかからなじゃない?もっと前からやっていたのかな。私、この変化凄く好きだなと感じました。正義感が強いエスメラルダですから、いくら道化の祭りとは言ってもやっていいことと悪いことがあるし、そこをちゃんと理解して自分の正義を貫こうとしている姿が垣間見えて嬉しかったです。解釈一致。

私としてはこの変化を観られたことが今回の何よりの収穫でした。これは嬉しかったな…。岡村さんエスメ、お芝居の解釈がどんどん好きになっていくんだが。あまりにも好きすぎるわ。もちろん他のシーンもいいなって思った瞬間はたくさんあったし、今回も岡村さんエスメにはたっぷりと魅せられました。素晴らしいお芝居をありがとうございました!

まとめ

真夏日の、KAATの、『ノートルダムの鐘』の、マチソワは本当にハードでした。暑いし場所も遠いし作品も体力消耗するし、結構メンタルも抉られますが、私はもう鍛えられて鋼のメンタルを持っているので大丈夫です(???)。でもしんどいものはしんどいな!

今回、私としては泰潤さんカジ×岡村さんエスメの組み合わせは最高の席で見納めできたと思っているので、悔いはありません。これで来週もいたらさすがに笑うんだが。でも、最高の観劇納めができたと思っています。観に行けて良かったです。

ソワレも観終えて、いよいよ2022年36回目の岡村美南さん観劇となりました。年内にあと何回観に行けるのかな。正直もう通えるほどの経済的余裕はないので、毎回毎回の観劇を大切にしながら劇場に足を運んでいます。本当にね、このタイミングでまたエスメラルダ を演じてくれて嬉しかったです。こんなたくさん観られるとは思っていなかったから、観られる今が凄く幸せです。

今回も素晴らしいお芝居でした。ありがとうございました!

さて、次は7月3日。これがラストのつもりでしっかりと見届けてきます!

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