2023年7月6日マチネ 劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター(ジャポネスク)』




JCS(ジャポネスク)
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ゆうき
ゆうき

初のJCSジャポver観劇です!

日時:2023年7月6日マチネ公演
場所:自由劇場
座席:S席1階8列センター




はじめに

ジャポネスクは観たことがなかったので上演が決定したときは凄く喜びました。先行では開幕初日のチケットを取ったのですが、その日ちょうどCFYが2000回公演を達成した日だったので横浜から浜松町のマチソワは時間的にも難しいかもしれないと思って、泣く泣く手放し、無事にご縁をいただいてようやく今回観劇することができました。

エルサレムはこれまでに数回ですが観ていて、観るたびには心が苦しくなる想いをしていたので、メンタルが最強なときに観ないとな…と思い、CFYに通っている今行くしかないと思い立ちました。

灼熱の中、新橋から20分かけて歩いてきたので汗だくよ。磔にされたジーザスの気持ちがよく分かりました(え?)

相変わらずキリスト教に関する知識がない状態なので深掘りしたことは書けませんが、初見ならではの感想をレポしていきますのでぜひご覧ください!

総評

全体の感想です!

キャスト:★★★★★
座席:★★★★★
全体:★★★★★

静まり返った劇場の雰囲気と序章の不気味な音楽とともに始まるあの空気感、懐かしいなと思っていましたが、音楽には笛のような音が聞こえてきてロック調の音楽に和のテイストが盛り込まれていたのを聴いて、こうアレンジされるのかー!と感動しました。同時に、大八車がこちらに迫ってくるような臨場感にゾッとして、鳥肌が止まらなかったです。なんだろうね、あの迫ってくる感じ…。地獄がこちらにやってくるかのような…。ユダもきっとこんなふうにして追い込まれていったのかなと感じるほどに、恐ろしさでいっぱいになりました。

音楽には和の要素が取り入れられ、和楽器演奏で決めるところは決めて、その他にも顔はみんな白塗りで歌舞伎っぽいし、市場のシーンも和傘など日本テイストだし、随所にジャポネスクと銘打つだけあるなと思う要素が散りばめられていて、凄く面白かったです。正直ストーリーは知っているから、そっちの芸術的な部分に凄く惹かれながら観ていました。

内容はキリスト教のお話なのに、ビジュアルや音楽は日本風というアンバランスさも、作品の不気味さを助長させる要素の一つでした。不気味なのに美しいっていうのが訳分からないね。この作品を観ていると本当によく分からない感情に苛まれます。「凄い」だなんてそんなありふれた言葉では表現できないような、もっと奥深い感情が生まれるというか…。人間の醜い部分やおぞましい部分が勝手に引き出される感覚です。「怖い」「気持ち悪い」「不安」「不気味」そういう負の感情が増大するとともに、「美しさ」という相反する感情も生まれ、感情がごちゃ混ぜになってなぜか泣きそうになる。改めて、この作品の独特の魅力に憑りつかれた1時間45分でした。

「ユダの裏切り」では佐久間さんユダが摺り足でやってくるし、この作品を通して日本の芸術に触れる瞬間も多くて、凄く美しかったです。セット自体は大八車はあれど、エルサレムverと違って非常にシンプルなんですよね。エルサレムverってまるで砂漠のような埃の舞うちょっと空気の汚れた感じの舞台セットが特徴ですが、ジャポverはそんなことなくて。本当にまっさらなセット。だから、一切嘘の通用しないステージ空間だなと思いました。演者さんのお芝居がすべて。セットで誤魔化しが利くものではないので、俳優さんたちの力量が試されるステージだなと思いましたが、もうお馴染みの顔ぶればかりだったので安心して観ていられました。

前回公演から引き続きの神永さん、佐久間さん、高井さん、村さん、本城さんらはいやもうさすが。歌は上手いしこの作品に対する重厚感や爽快感を与えてくれるし、あっぱれでした。そして今回公演で初めて観るえばちゃんマリアや大森さんヘロデなども、これまで観てきた俳優さんとは違うお芝居と歌にとても新鮮みを感じましたが、凄く見応えがあって面白かったです。歌うまさんたちの集まり。さすがでした。

エルサレムverの演出をそんな新鮮に覚えているわけではありませんが、「自殺」はエルサレムだと蟻地獄にハマって下に引きずり込まれていくような演出がされていましたが、ジャポでは大八車の裏に落ちていくような演出でした。これはエルサレムverのほうが地獄に落ちていく様子がパッと見で分かりやすいので、エルサレムのほうが好きだなぁ…なんて。

あと、ヘロデのシーンもエルサレムのほうがもっと豪華絢爛なイメージですね。ジャポのヘロデは舞妓さんを2人携えて派手な格好で登場しましたが、ここはより一層日本らしさが強調される場面で、でも非常にシンプルだったのでもっと舞妓さんが舞う様子とか色々観たかったな~というのが正直なところ。

スーパースターもユダとソウルガールズが上からゴンドラのようなもので降りてきて歌うという演出で、エルサレムのように振付があるわけではないので直立で歌うというシンプルな演出でした。全体的に色んなものが削ぎ落されたのがジャポネスクの印象かなぁ。本当にシンプル。エルサレムのようにセットや振付などで派手に見せるというのとは違うので、それと同じものを期待しすぎるとギャップを感じるし、世界観が本当にシンプルで独特なので作品への没入感も個人的にはエルサレムより足りない印象がありました。とにかく、日本の芸術が取り入れられているという点が何よりの魅力であり美しいポイント。

ラストのジーザスが磔にされて灼熱の中どんどん干からびていく様子も、ジャポではかなり薄まった印象がありますが、その分最後にホリゾント幕に映し出される星たちが美しい~となったので、どちらかというととことん美しさという点が磨かれた舞台だな~という印象でした。やっぱり、作品への没入感や世界観の表現にはセットが欠かせないことを改めて再認識しましたし、私はジャポネスクよりもエルサレムのほうが好きだなと感じました。

エルサレムのほうがもっと表現が過激で直接的な印象があるから、エルサレムのほうが観終えたあとの疲労感や絶望感は大きいんですが、それくらいの絶望感を味わいたいんですよね、この作品では。それはそうとジャポでもやっぱり39回の鞭打ちのシーンは観ながら思わず顔が引きつってしまいました。あれがマジでむごすぎる…。

群集心理や人間の醜さ、おぞましさについては毎回考えさせられますが、今回はどちらかというよりも人間の弱さを実感させられて苦しかったです。常に誰かを頼っていかないとダメで、常に責任を誰かになすりつけないとダメで、自分で生きていけないのがね…。その点、ジーザスは神と自分だけを信じ、己の運命を受け入れるという姿に、人間離れしたものを感じるわけですよね。彼は強いわ…。人間に利用され捨てられた可哀想な人だ…。

そして今回はユダの葛藤にも胸打たれました。彼も利用されて捨てられた可哀想な人だわ…。ジーザスを愛しているのに。罪の意識に苛まれながら歌う「自殺」はとても聴いていて心苦しかったです。

それこそ、前回公演の2019年はまだコロナ禍前だったわけじゃないですか。でもコロナ禍ではたくさんの人が苦しめられ、中には命を絶ってしまった芸能人もたくさんいて…。人は追い詰められてしまうと、あんなふうにどこからか囁く声が聞こえてきて、もう逃げ場がなくなって、命を絶ってしまうのかな…と感じてしまって。ほら、人間は弱い生き物だから…。嫌なこと、苦しいこと、罪の意識、他人の言葉の暴力、誹謗中傷、色んなものが誰かを苦しめるわけですよね。強い人も、ふとした瞬間に心が折れてしまう。これまではフィクションとしてこのシーンも観られましたけど、今回ばかりはフィクションとして観ることができなくて、すっごく胸が苦しくなりました。重すぎるよぉ…。

コロナ禍を経たから感じ方が変わった部分もたくさんあって、人は年齢や経験とともに見方や考え方、価値観が変わっていって、同じ作品でも見えるもの感じるものが変わるんだなと再認識できた観劇にもなりました。

この作品、贔屓が出ているときっと私は贔屓にばかり集中しちゃうから、フラットな状態で観られるのがとても幸せなことだなと感じています。とてもつらかったし苦しかったけど、観られて嬉しかったです。そしてやっぱり浅利さんは素晴らしい才能の持ち主でしたね…。とても素敵な作品をまた一つ知ることができて幸せでした。

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